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「シャーリンちゃんはどこだろうか……?」


 俺が今見ている景色を一言で表すなら鉄クズのジャングルだ。ジャングルであれば猿や鳥の鳴き吠えが聞こえてくるだろうけど、ここでは低いエンジン音と掘り進む音しか聞こえない。


「おーい! シャーリンちゃんは居ますか〜?」


 返事がないただの(しかばね)のようだ。って、そんなこと言ってる場合じゃないな。


 俺は鉄クズを退かしながらなんとか道を作り慎重に前に進む。


「少しでも退かす鉄クズを見誤ったら絶対に崩れてくるだろうな。俺、この鉄クズを全部退かしたら故郷に帰って結婚するんだ……。なんて無駄にフラグを立ててみたけど、よっと!」


 故郷もないし彼女も居ない身としては全くフラグが立つはずもなく、くだらない独り言を言いながら作業を進めていく。


 ある程度、道が出来上がり元々作業台があったエリアまでたどり着くと鉄クズの下敷きになり床に倒れた状態のシャーリンちゃんを発見した。


「シャーリンちゃん! ヒール!」


 俺は急いで鉄クズを撤去し、シャーリンちゃんを抱き起こすとすぐに回復魔法ヒールをかけた。


「……お、お主か。ワシは……」


「大丈夫ですか? まだどこか痛む場所はありますか?」


 意識を取り戻したシャーリンちゃんは何かを言いたそうに口を開く。


「は……」


 肺か? それとも鼻か? 呼吸が出来なくて苦しいとかだろうか? 次の言葉を待つ。


「腹が減ったのじゃーー!!」


 俺は突然の大声に驚き、内容に安堵するとともに気が抜けてしまった。


「無事みたいで安心しました。食料ならこれをどうぞ」


 帝国で大量に購入した食料という名の錠剤(帝国フルコース味)をシャーリンちゃんの口に放り込んだ。


「おおおお! このとろけるような食感と芳醇な香り! そして弾ける豆と柔らかい羊肉が口の中で無限のハーモニーを奏でているのじゃーーー!」


 食感? 弾ける豆? 錠剤なのだから間違いなく幻覚である。


「シャーリンちゃん! それは幻覚です! 現実に戻ってきて下さい!」


 俺はアイテムボックスから魔導水筒を取り出してシャーリンちゃんに飲ませると正気を取り戻した。


「ふぅ、死ぬかと思ったわい」


「俺が会いに来なかったら死んでましたよ」


「それは困るのじゃ! たしかに十分すぎるほどに長く生きた身ではあるが、魔導技術の深淵を知るまでワシはまだまだ死ねんのじゃ」


 幼女の姿で長く生きたとか言われると微妙な気持ちになってしまうが、俺は顔に出さずに事故の経緯を聞くことにした。


「それで、どうして生き埋めになっていたんですか?」


「お主の魔導アーマーをなんとか修理しようと思ってのぅ。どうしてもアレが足りないんじゃ。それでアレを探している内にあの有り様じゃ」


 どうやら俺の魔導アーマーの修理が原因の一つらしい。なんとも申し訳ないと思いつつも、シャーリンちゃんに聞きたかった用件だった為に思わず質問してしまう。


「アレとは何ですか?」


「アレと言ったら決まっておるじゃろ。魔導アーマーの最重要パーツと言っても過言ではない。魔石じゃ。要するに動力源じゃな」


「魔石ですか」


 たしかにスネーキー子爵との戦闘では魔導アーマーからかなりのエネルギーが放出されていたように思う。魔石もかなりの上物を使っていたのかもしれない。


「そうじゃ。元々この魔導アーマーは上級魔石を動力源としていたのじゃが、ワシが更なるパワーアップを(ほどこ)した結果、最上級魔石でしか動かなくなってしもうたのじゃ!」


「自業自得じゃないですか! すぐに戻して下さい!」


「無理じゃ! もう改造してしまって元には戻せんのじゃ!」


「ぐぬぬ……」


 何ということだ。魔導アーマーに乗るという夢はまた遠のいてしまったというのか。いや、まだだ! まだ終わらんよ!


「最上級魔石は何処に行けば手に入るんですか!?」


「魔石の主要な原産地はロディニア魔法国じゃ。そこになら恐らくあるじゃろう」


「シャーリンちゃん! 速度最大で向かって下さい!」


「うむ、その言葉を待っておったんじゃ! 今までは乗客の安全を優先して速度を抑えておったんじゃが、艦長の命令ならば仕方がない。魔導炉の出力を最大まで上げるんじゃ!」


 まんまと乗せられたような気がしたが、もう遅かった。シャーリンちゃんは魔導炉がある部屋に通じている伝声管に指示を出した。


「まぁ、早く魔法国に行けるならいいか……」


 この判断によってとんだ災難に見舞われるとはこの時思ってもみなかった。

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