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 ドドドドと低い振動が続いている。窓の外を見ても暗く薄っすらと土か岩の壁が見えるだけだ。


 かれこれ1週間、ドリル型魔導アーマー改めドリル型魔導列車は地中を進み続けているがまだ目的地であるロディニア魔法国にはつかないらしい。


「暇で死ぬ……」


 誰かが無意識に呟くと、辺りからは溜息が漏れてきた。皆も同じ意見なのだろう。


 思わず本音が出てしまう程に何もやる事が無かった。通常の旅行であれば気晴らしに外の景色を見る事が出来るが、地中ではほとんど代わり映えのしない景色が続くだけだ。


「たしかに同じ景色ばかりで困りますね」


 マリアさんが困った顔をして視線を向けた先にはルート君が居たが、彼も暇すぎて不貞寝してしまっているようだ。


「ルート君は不貞寝ですか……」


「はい、そのようです」


 さっきまで駄々をこねていたルート君は気力と体力を消耗して眠ってしまったらしい。


「ロスキタスは……」


 別の車両を覗き込む。


「セイッ! セイッ!」


 ロスキタスはいつも通り槍の修行中のようだ。


「セイッ!!(バキッ) しまった!!」


 あ、力みすぎて車両の壁に穴を開けたようだ。車両の壁にはいくつもの修復の跡がある。


「ロスキタスさん!!」


 怒ったマリアさんはロスキタスの所に向かった。俺は我関せずという空気を作り逃げる事にした。


 こんな時は何か考え事をしていた方がいい。何かに集中すると意外と時間は早く過ぎていくものである。


 俺は帝国での事を思い出し、情報を整理することにした。


 まず、帝国での成果や良かった点を考えてみる。


 個人的に一番嬉しい成果は俺専用の魔導アーマーの素材を手に入れた事だ。元スネーキー子爵の魔導アーマーは特注品らしく性能も桁違いに良いらしい。


 その魔導アーマーはシャーリンちゃんに預けて修理可能か見てもらっているところだ。そろそろ状況を確認してみたほうがいいかもしれない。


 次の成果はレアスキルであるアイテムボックスを手に入れた事か。まだスキルレベルは2なのでそれほど大量には収納出来ないが便利である事に違いはない。


 今は魔導アーマーの素材が詰まっているので他の物はほとんど入れることが出来ない。今後アイテムボックスのスキルをどこかで吸収出来たらいいんだけど、善人から吸収したくはない。


 そもそもがレアスキルな上に悪人な奴なんて居るんだろうか?


 ……意外と居そうだと思ってしまうのは異世界に慣れてしまったからだろうか。


 帝国での成果として大きなものはやはり奴隷解放と奴隷商人の撲滅だろう。奴隷商人が0になったわけではないけど、かなり弱体化出来たと思う。


 救った奴隷達の大半は砂漠のオアシス都市に送ったが、今頃どうなっているだろうか?


 オアシス都市は帝国の攻撃によってほとんど全壊したような状態だったはずだ。一応、新たなオアシスとなった世界樹の街の場所を教えておいたがそこに移り住んだのだろうか。ある程度世界を見て回ったら一度戻りたいと思う。


 あとは、カーラの体が魔導アーマーから分離出来た事は良かった事だが俺自身に何か良い事があったかと問われると微妙なところだ。なんとなくカーラからの好感度が上がったような気もするが気のせいだろう。



 次は反省点を挙げてみることにしよう。


 1点目は帝国の戦争を止められなかった事だ。


 その原因は単純に自分の力が足りなかったせいだろう。レベルが最大の頃であれば力任せに解決することは容易だったはずだ。(帝国が戦争をしようとした根本原因の解決にはならないだろうけど)


 2点目は解放できなかった奴隷たちが存在する事だ。


 帝都の周辺都市では奴隷達が集められていたが助けることが出来たのはいくつかの都市だけだった。これも自分の力不足のせいだろう。


「もっとレベルを上げないといけないな」


 思わず自分自身に言い聞かせるように呟いてしまったが周りには聞こえていなかったようで助かった。


 最後に今後の目標について考える事にする。


「やっぱりまずは魔導アーマーの修理、それからレベル上げかな〜。あ、そうだ。シャーリンちゃんに魔導アーマーの修理状況について聞きに行かなきゃな!」


 俺が突然立ち上がると周りに座り込んでいた人達を驚かせてしまったが、すぐに謝り逃げるようにシャーリンちゃんの居る車両に向かった。


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