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「な、な、な、何が起こったのだ! 何故、私の屋敷が跡形もなく消えたのだ!?」


 周りの傭兵達も何が起きたのか理解出来なかったのか、それとも現実を直視したくないのか誰も答える者は居なかった。


「こ、この小僧がやったというのか!? 馬鹿な! 到底信じられん! 信じる訳にはいかんのだ! そうだ、これは幻術ではないのか!? きっとそうに決まっている! おい、お前! ちょっとこっちに来い!」


「へ? 俺ですか?」


 アランデルに呼ばれた傭兵がアランデルに近寄る。


「ふん!」


「ぎゃああああああ!」


 突然、アランデルが持っている長剣で傭兵を斬りつけた。斬られた傭兵は鎖骨から脇腹までを大きく斬られ大量の血が流れている。


「どうだ? 痛みはあるか?」


「ぐ……い、痛ぇ」


 斬られた傭兵は既に瀕死の状態だ。痛みを感じるか試すのなら自分自身で確かめればいいものを他人を斬りつけるとは酷い男だ。


「ふむ、痛みは感じているということは現実なのか……? いや、この痛みすらも幻術で与えている可能性がある! おい! お前もこっちに来い!」


 アランデルが意味不明な事を言い始めた。傭兵達は雇い主が狂ったと思い逃げ出す者まで出ている。


「見るに耐えん。太陽神様、斬り捨てても良いか?」


 ロスキタスが一歩前に出る。


「はい、お願いします。ただし、殺さないでください。事情聴取をしなければいけませんから」


「承知!」


 ロスキタスは一瞬で間合いを詰めると、狼狽える傭兵達を蹴散らし呆然とするアランデルに襲いかかる。アランデルはもはや夢と現実の区別がつかないかのように目の焦点が合っておらず唾を飛ばしながら何か聞き取れない悲鳴を上げた。


「ふんっ!!」


 ロスキタスは槍の刃を当てないようにアランデルの両脚を薙ぎ払った。アランデルはブンブンと縦に回転した後ズサーッと元屋敷があった地面を滑っていった。


「ナイスショット! さすがはロスキタスさんですね。絶妙な力加減でした」


 よく見るとアランデルはピクピクと動いており、ちゃんと生きている。


「恐悦至極」


 ロスキタスは片膝を地面に着いてこちらに頭を下げる。


 まるで侍のような人だなぁ。でも、見た目は全然違うし脚は魔導義足で近未来感が凄いんだけどね。


「ゴーレム! この人達を全員捕縛! 連行してくれ」


 俺の指示でゴーレム達が動き出し捕縛&連行をしてくれた。こういう時は本当にゴーレムが便利だと思うね。ソロだったら数百人の敵を連行することなんて不可能に近いもんね。


「じゃあ、地下に向かいましょう。そこにシャーリンちゃんが居るはずです」


「承知した」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 俺とロスキタスが歩き出そうとすると何やら地面が振動し始めた。


「これは太陽神様のスキルか?」


「いえ、これは……」


 俺が答えようとした瞬間、目の前の土が大きく盛り上がり勢いよく何かが地面から飛び出した。


「ひゃっはーー!! ワシの頭脳にかかれば脱出くらい容易いのじゃーー!! ……って、屋敷がない!? どうなっておるのじゃ?」


 ドリル型魔導アーマーに乗ったシャーリンだった。


「「……」」


 俺とロスキタスは無言でシャーリンを見つめるしかない。ツッコミどころが多すぎるのだ。乗っているドリル型魔導アーマーはどこから手に入れたのかといった事や、思ったより全然元気というか元気すぎる事、脱出するなら黙って逃げるべきところを大声を出した事などだ。


「シャーリンちゃん、地上は全て片付きましたよ」


「コメットか! それにロスキタスも! どうじゃ!? この魔導アーマーは! ワシが作ったんじゃぞ?」


「いいですねぇ。地中を移動する乗り物って便利だなぁ……じゃなくて、助けに来たんですよ」


「そうじゃったか! じゃあ、帰るとしようかのう!」


 シャーリンちゃんが魔導アーマーのエンジン(?)を吹かす。


「ちょっと待ってください! 地下には複数の気配がします。他の奴隷達ではないのですか?」


「そうじゃ。アランデルの奴隷達じゃよ。酷い扱いを受けておったようでな、ワシの力になりたいと魔導アーマーのパーツになりそうなものを集めてきてくれたんじゃ」


 なるほど、そういうことだったのか。それなら連れて帰って奴隷から解放してあげたほうが良さそうだ。


「じゃあ、その方達も保護してゴーレム商会で奴隷から解放しましょうか」


「そうじゃな。そのほうがいいじゃろう! じゃ、ワシが呼んで来よう!」


 そう言うとシャーリンちゃんは再び地面の下に潜っていった。


「そこの階段から降りればいいのに……」


 俺のツッコミはシャーリンちゃんが作り出した大穴に虚しく響いたのだった。

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