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 俺はネルソンゴーレム商会に戻ると主要なメンバーで会議を開き、傭兵を撃退したこと、傭兵が逃げ込んだ元気奴隷商会にシャーリンちゃんが居なかったこと、現在ゴーレムによって怪しい奴隷商会を調査中であることを伝えた。


「あの傭兵の雇い主は元気奴隷商会のマクガヴァンだったんですね。以前から悪い噂は聞いておりました」


 ネルソンが額に手を当てて納得したような表情で言った。


「マクガヴァンは捕縛し、ここに連れてきました。後はネルソンにおまかせします」


「はい! なんとしてでもソルビー様の居場所を吐かせます」


 一応、小型ゴーレムで調査を行っているが、居場所を知っていると思われるマクガヴァンから直接聞くほうが早いかもしれないな。


「コメット殿、私達は何をすればいいだろうか?」


 見るとカーラやマリアさん、ロスキタスが伺うようにこちらを見ていた。


「うーん。今は情報が少なすぎるので、もう少し待ちましょう。そろそろ小型ゴーレムが調査を終えて戻ってくるはずです。それまでは各自で出撃の準備をお願いします」


 さて、それまでどうしようかな? 最近忙しくて全然レベルアップもしていない。どうせなら自分自身のパワーアップをしたいところだ。


「うーん、短時間でパワーアップする方法かぁ。レベルアップは基本的に時間がかかるんだよねぇ」


 レベルを上げるには長時間ダンジョンに篭もってコツコツ経験値を貯めるか、強い敵を狙って倒すくらいしか思いつかない。


「レベル上げ以外に強くなる方法としては、やっぱり装備かなぁ。お金はいくらでもあるから武器防具屋で何でも買えるだろうけど。でもなぁ……」


 今は奴隷商会との戦争中とも言えるような状況だ。武器防具屋で気楽にショッピングというわけにはいかない。


「じゃあ、自分で作る? あ、材料がないな」


 こんな事になるのなら、ネルソンにアダマンタイトやオリハルコンを買い集めて貰っておけば良かった。この時代に手に入るかは分からないが。


「うーん、パワーアップか。他に俺に出来る事と言ったら……吸収?」


 吸収には、吸収する相手が必要だ。そこで俺はピンと来た!


「捕虜の傭兵が沢山居るじゃん! 傭兵の無力化も出来るし一石二鳥では!?」


 元々、お金の為に奴隷商人に雇われていたような連中だ。更に言えば、こちらの命を狙って襲撃までしている。いくら命令に従っているだけと言っても全く責任がないとは言えないだろう。



「はーい、一列に並んでくださーい! 全然痛みとかは無いですよー! 一瞬で終わりますからねー!」


 という訳で、今敵の傭兵達を並ばせて大規模ワクチン接種の如くスキルを吸収している。ちなみに念の為に太陽神の仮面を被った状態だ。


「な、何をする気だ!?」


 ゴーレムに押さえつけられた傭兵が俺の前まで来る。


「吸収!」


 《スキル:剣術1を吸収しました。剣術10に統合されました》


「はい、次の方どうぞー!」


 捕虜となった傭兵が割と多いので流れ作業にしなければ終わらない。スキルを奪われた傭兵には少し同情するが、今後は農業などに精を出して働いてもらいたいところだ。


「吸収!」


 《スキル:隠密1を吸収しました。隠密1を取得しました》


「おぉ! 新しいスキル! 名前の通りだったらかなり欲しかったスキルのはず」


 鑑定をしてみる。


【隠密】

 気配を消す。スキルレベルが上がるほど効果時間が長くなる。攻撃時、効果は消える。


「思った通りの効果だ。隠遁のローブは邪神との戦いで失くしたから困ってたんだよね~」


 今度、どれくらい気配が消せるのか試してみよう。


「良いスキルが手に入ってテンションが上がってきた! よし、次の方どうぞ!」



 ――残すは最後の一人となった。


「うああああああああ!」


 その男は突然暴れだし、逃げようとしている。


「往生際が悪いですね。ダーク!」


 俺は闇魔法で男の視界を奪った。


「目が見えない! クソッ、俺のスキルを奪われてたまるか! とにかくここから逃げるんだ!」


 男は目が見えないというのにまだ逃げるつもりのようだ。


「まだ諦めませんか。それなら、ロック!」


 俺は土魔法を放ち、男の両足を岩で固定した。


「クソが! 私を誰だと思っている! デュヴェルジェ家三男、フェルナン・デュヴェルジェだぞ! こんなことをして許されると思っているのか!」


 貴族家の三男だったのか、これは面倒なことになったかも。だが、傭兵になっているということは貴族家を追い出されてしまったのだろう。それならば面倒なことにはならないかもしれない。


「うーん、でも、この男だけ許すっていうのも違うと思うんですよねぇ。ところで、ここまで暴れるってことはどれほどのスキルなんですかね? どれどれ鑑定!」


 名前:フェルナン・デュヴェルジェ

 職業:傭兵

 年齢:21歳

 LV:32

 HP:4500

 MP:1500

 STR:70

 VIT:70

 DEX:70

 AGI:70

 INT:10

 LUK:2


 スキル

 アイテムボックス1


 称号

 元貴族 荷物持ち



「アイテムボックスって、マジですか!?」


 何度確認しても、そう書かれている。いつも荷物を持ち歩くのが面倒で、魔物を狩って素材を運ぶ時も大変だったのだ。もし、このアイテムボックスが想像通りのアイテムボックスであれば、この問題が解決するかもしれない。


「これは本人には申し訳ないけど、ありがたくいただくしかないですね。まぁ、金欲しさに他人の命を奪おうとしたんですから自業自得だと思ってください。吸収!」


 《スキル:アイテムボックス1を吸収しました。アイテムボックス1を取得しました》


「ふざけんなあああああああ! 殺してやるうううううう!」


 フェルナンは荷物持ちからグレードダウンして、ただの人になってしまった。スキルに頼らずに強く生きてほしい。そう願いながらゴーレムに引きずられていくフェルナンを見送った。


 最終的にほとんど被りスキルではあったけど、かなり良いスキルが手に入った。


 隠密3(new)、名将の鼓舞2(1→2)、体力回復上昇3(new)、アイテムボックス1(new)


 短期間にこれだけパワーアップ出来れば十分だ。更に、反乱の恐れがあった傭兵達は大人しくなった。思い付きは大成功だった。

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