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 逃げる傭兵達に向かって前進を続けていると、左右の建物の屋上から銃らしきものを撃ってきたが、俺の魔法での迎撃やゴーレムが盾になることでダメージを受けることは無かった。


 銃!? 一瞬驚いてしまったが、1000年も経過していれば銃くらい開発されていても不思議ではない。


(鑑定)


【帝国製魔導銃】

 魔石のエネルギーによって弾を射出する武器。小型~中型の動物に対して有効。


 これはいつか手に入れてみたいな。しかし、俺のウィンドで弾道が簡単に曲がってしまうのはかなりの欠点かな。


 路地裏から伏兵が出てきて襲い掛かってきたりもしたが、気配察知によって対処できるので問題はない。


「ウィンド! 銃をいくら撃っても無意味だというのに懲りない人達ですね」


 傭兵達が慌てたようにとある建物の中に逃げ込んでいく。


「あ、そろそろ目的地かな? ゴーレム! あの建物を包囲しろ! 出てきた者は捕縛するんだ」


 ゴーレム達は頷くと指示通りに動いた。建物の看板には【元気奴隷商会】と書かれていた。商会はゴーレムに囲まれて脱出は不可能に近い状態となった。


「よし、包囲は完了したな。じゃあ、どうしようかな? ゴーレムに突入させるっていう手もあるけど……決めた! 俺が突入しよう!」


 ゴーレムはある程度の命令は実行してくれるが、複雑な状況であったり、命令外の事には対応出来ない。なので、目の届かない建物内にゴーレムを向かわせることは避けたほうが良いと思う。奴隷を盾にされたら不味いしね。


 単純にシャーリンちゃんを最速で助け出すのなら自分自身が乗り込むのが最良だ。砂鋼の剣の柄を掴もうとして気づく。


「あ、装備持ってくるの忘れた……」


 武器も防具も一式全部忘れていた。工房でゴーレムを作る際は楽な恰好で作業をしていたので、そのまま出てきてしまったのだ。


「まぁ、仕方がない。スキルもあるし、太陽神の仮面はソーラー充電済みだから大丈夫だよね。それじゃ、強撃!」


 元気奴隷商会の扉を破る。俺は数体のゴーレムを連れて突入した。


「そこで止まれ!!」


 前方から声がすると思ったら、元気奴隷商会のエントランスにはズラリと傭兵達が並び、後方には店主らしき者が居る。その両隣にはガタイの良い強そうな男と暗殺が得意そうな盗賊風の女が立っている。


 俺は指示通りに止まった。


「シャーリン・ソルビーを攫ったのはお前達か?」


 俺は太陽神モードの口調で話しかけた。


「シャーリン・ソルビー? 知らねぇなぁ。それよりもお前らこそ誰だ? 店の扉を壊しやがって、弁償してもらわねぇとなぁ? まずはその奇妙な仮面を取って謝罪しやがれ!」


「俺は太陽神。東の地の神だ。この仮面を取るわけにはいかぬ」


「おいおいおい、神様だってよ! ネルソンゴーレム商会にはキチガイがいるぞ!」


「マクガヴァン様、こんな奴でも油断は禁物です」


 ナイス情報漏えい。こいつの名前はマクガヴァンか。しかも、こんな奴でも油断は禁物ということは俺もしくはゴーレムを知っている=ネルソンゴーレム商会を襲った犯人だと自白したようなものだ。ナポレオンの名言『真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である』とはこの事か。


「それで、シャーリンは今どこにいる?」


「知らねぇって言ってんだろうが!」


 武力行使までしてきて、無関係と言い張るつもりのようだ。


「そんなこと言って、ここを探してシャーリンが見つかったらどうするつもりだ?」


 マクガヴァンは一瞬驚いたような表情をしたが、ニヤニヤとした表情になる。


「どうもしねぇよ。ここには居ねぇからな。探したければ探しても構わねぇぞ。しかし、見つからなかった時は責任を取ってもらぞ? そうだなぁ。100億コインを支払ってもらおうか」


 この発言と表情……これは本当にシャーリンちゃんが居ないのだろう。というか、気配察知でこの場以外に人の気配がない事を知っている。他の場所に連れて行かれたのだろう。それならもうここは用無しだ。


「そうだ、お前が連れてきたゴーレムも渡してもら「黙れ!」」


「神に敵対した挙句に嘘を吐き金銭を要求するとはな。我が怒りを知るがいい……神の怒り!」


 視界が赤く染まる。狙いは天井、マクガヴァンの真上だ。気配察知によってエントランス以外に人が居ない事は分かっている。


 赤い光が収まった頃、そこには瓦礫の下敷きになり地面に倒れているマクガヴァンと傭兵達の姿があった。


「ゴーレム! 倒れている者達を捕縛して外に運び出せ! ただし、このマクガヴァンだけは俺が対応する」


 ゴーレム達はマクガヴァン以外の傭兵を捕縛し外へ連れ出していった。


「起きろ」


 瓦礫に挟まったマクガヴァンの頬を叩く。俺は正体を隠す為に口調や態度は変えている。


「う……何をしやがった……?」


 マクガヴァンは瓦礫の下敷きになったせいか苦しそうな口調になっている。


「ここにはもうお前しか残っていない。助けも来ない。シャーリンとここに居た奴隷達はどこに行った?」


「ふん……その質問に……答えるはずがねぇだろ」


 少し冷静さを取り戻しつつあるようだ。混乱している隙に簡単に教えてもらえるかと期待したんだが、さすがに口を割らなかったか。じゃあ、次の策を打つしかない。


「近隣の奴隷商会を頼ったのだろう?」


 秘技【カマをかける】である。だが、それなりに根拠もある。こんな街中で遠方まで奴隷を輸送する余裕はなかったはずだ。そして、木を隠すなら森の中というだけあって、奴隷を隠すなら奴隷商会だろう。まぁ、一時的に倉庫に、という事もあるかもしれないが。


「な!? ……いや、俺は……何も答えねぇよ」


 マクガヴァンの反応を見た俺はニヤリと笑った。これは確定だな。


「やはりそうか。ならば、もうお前に用はない」


「俺をどうするつもりだ!?」


「え? 瓦礫をどかして助けた後に捕縛して運ぶだけだけど?」


「え……俺を殺さねぇのか?」


「さあ? それはネルソンが決めるんじゃないか?」


 これ以上の問答は無意味なので、瓦礫に魔法をかけることにする。何の魔法かって? それは勿論


「クリエイトゴーレム!」


 並列魔法によって瓦礫を多数の小型ゴーレムにしていく。


「ゴーレムの……技術者……」


 マクガヴァンは最後にそう呟くと気絶してしまったようだ。


「小型ゴーレムは近隣の奴隷商会を探索して入り口を警備している者の人数を数えるんだ。完了したらネルソンゴーレム商会……地図のこの位置に戻ってこい」


 俺は地図を広げるとネルソンをゴーレム商会の位置を指差した。小型ゴーレム達は瓦礫から生まれただけあって石ころのように擬態している。コロコロと外に飛び出していった。


 移送先の奴隷商会はきっと警備を強化しているはずだ。警備している兵数を数えることでどの奴隷商会に移送されたのかが分かるのではないかと推測したのだ。


 一番近くにいたゴーレムにマクガヴァンを捕縛させる。


「ゴーレム達は捕虜を担いでネルソンゴーレム商会に帰還!」


 俺は一旦ネルソンゴーレム商会に戻ることにした。

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