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 フィッツジェラルドに案内されたショールームにはガラスの仕切りがあり、その向こう側には着飾った奴隷らしき人々が居た。こちら側には商談用の椅子とテーブル、ソファなどが置かれている。


「さて、こちらが当店自慢の奴隷でございます。より詳細な条件を仰っていただければ、条件に当てはまる奴隷をご用意致します」


「そうですねぇ。個人的な興味になってしまうのですが、価格が一番安い奴隷と一番高い奴隷を見せて欲しいです」


「承知しました」


 フィッツジェラルドが奥の部屋に姿を消してから数分後、ショールームの奴隷達が一旦引き下がり、次に2人の奴隷が現れた。1人は両脚がなく、座り込んでいる片目眼帯の男。もう1人はどこかの国のお姫様のような女性だ。


 そしてフィッツジェラルドが戻ってきた。


「この男が一番安い奴隷となります。元々他国の傭兵だったのですが、地雷で両脚が吹き飛んでしまったようです。当店には欠陥品は相応しくないので、本来であれば販売しないのですがね」


 なるほど、両脚がないので安いというわけか。


「それよりもこちらの奴隷のほうがオススメです。亡国の姫だという鑑定書付きで、更に神聖魔法の使い手でもあります。このような奴隷を所有している貴族はまだおりませんよ」


「ふむ、ちなみにそれぞれいくらですか?」


「こちらが100万コイン、こちらが2億コインですが、今ご購入していただけるのであればお客様限定で1億コインでお売り致します!」


 半額になるのか。これがいつものやり口なのか、切羽詰まって安売りに走っているのか分からないな。


 どちらかと言えば、最安値の奴隷が実情を表しているのかもしれない。俺が作った砂鋼の爪よりも安いのだから。


「うーん、どうしようかな?」


 俺は奴隷を売るのも買うのも大嫌いだが、今回は怪しまれない為にも買う事に決めた。どちらを買うべきか、あまり人に対して行いたくないが、鑑定をしてみよう。


(一番高いお姫様、鑑定!)


 名前:ジュリエッタ

 職業:奴隷

 年齢:15歳

 LV:10

 HP:1200

 MP:1500

 STR:3

 VIT:3

 DEX:28

 AGI:5

 INT:50

 LUK:1


 スキル

 神聖魔法1


 称号

 亡国の姫


 うーん、ステータス的には微妙かな。成長したら良くなる可能性はあるけど。このお姫様の価値は希少性という部分なのだろう。


 ついでにLUK1だ。不幸な運命を背負っているのだろうか? 俺はLUKを上げることを決意した。


 もう1人も鑑定してみるか。


(最安値の人、鑑定!)


 名前:ロスキタス

 職業:奴隷

 年齢:37歳

 LV:188

 HP:30600

 MP:100

 STR:500

 VIT:500

 DEX:220

 AGI:1(500)

 INT:1

 LUK:1


 スキル

 格闘術6 剣術6 槍術7 斧術7 投擲術7 戦術予測 物理耐性5 体力回復上昇5


 称号

 傭兵王


 凄いステータスだ。1000年前でもLV100を越える人間はほとんど居なかった。スキルや称号も気になる。両脚がないからAGIが1なのだろう。


 どちらの奴隷を買うか決まった。元傭兵にしよう。お姫様はもっと奴隷商会を弱らせてから助けてあげよう。


 実は奴隷を買う理由がもう一つある。しかし、そっちは上手くいくか分からない。隷属契約のときにチャレンジしてみようと思う。


「じゃあ、最安値の彼を買います」


「はぁ、欠陥品ですが良いのですか?」


 急にやる気を失った様子のフィッツジェラルドが確認してくる。


「あまりにも使えないようでしたら、また買いに来ますよ」


 俺がそう言うと、フィッツジェラルドはやる気を若干取り戻し営業スマイルを向けてきたが、目は笑っておらず最安値の奴隷を購入する俺に対して怪しんでいるといった様子だ。


「そうですか。まずはお支払いをお願いします」


 俺は100万コインを支払った。


「では、契約書へのサインと隷属魔法をかけさせていただきます」


「分かりました」


 俺はサインをどうするか迷ったが、適当に貴族っぽい偽名を書いた。


「ふむ、『コメット・ド・ハラペーコ男爵』様でございますか? 帝都では聞いた事がありませんな」


「ああ、帝国の東のほうに住んでいまして、戦争準備で帝都に来ているのです。男爵になったのも最近でして、ご存知ないのも無理はありません」


「……そうでしたか。では、奴隷と隷属化スキルが使える者を連れて来ますのでここでお待ち下さい」


 少しの間、探るような視線を向けられたがなんとか乗り切れたようだ。それにしても隷属化なんていうスキルがあるんだなぁ。


「分かりました」


 しばし待つと、黒いローブ黒いフードで顔も見えない人物と、台車でまるで荷物かのように奴隷が運ばれてきた。


「では、コメット様。この者と手を繋いで下さい。隷属化のスキルを使う時は主人となる者と奴隷に触れる必要があるのです」


 俺は指示通りに黒ローブの人物と手を繋いだ。黒ローブは奴隷に手を当てている。


「隷属化」


 黒ローブが手を当てていた奴隷の肩に隷属の紋様が浮かび上がった。


「は、は……はっ吸収!(はっくしょん!)」


 くしゃみをするように見せかけてスキル吸収を行う。


 《スキル:隷属化を吸収しました。隷属化を取得しました》


 《スキル:隷属解除を吸収しました。隷属解除を取得しました》


 よし! 欲しいスキルが手に入った!


【隷属解除】これが欲しかったんだよね。奴隷の売買を生業にしている奴隷商会ならきっと持っているだろうと思っていたんだ。これから奴隷を解放しまくる予定だから、必須のスキルだ。


「大丈夫ですか?」


「あ、すみません。少し風邪気味でして……」


「そうでしたか。隷属化は完了しました。その奴隷はもうコメット様の物です」


「この台車をお借りしてもいいですか?」


「たしかに台車が必要でしょう。今回は特別にプレゼント致します」


「ありがとうございます。では、妻も子供も待たせておりますのでそろそろ帰ります」


「はい、またのご来店をお待ちしております」


 俺はマリアさんとルート君、買った奴隷を連れて店を出た。そして出来るだけ回り道をしつつ尾行がないか確認しながらネルソンゴーレム商会に戻ったのだった。

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