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185 緊急集会<奴隷商人視点>

「ううむ、何故だ」


 この時期であればもっと奴隷が売れていてもいいはずなのに全く売れていない。


 更に言えば、今は戦争の準備中。奴隷の需要はかなり高いはずなのだ。


「おい! 奴隷が売れない原因を今すぐ調べて来い!」


「はっ、はい!」


 店の手伝いをさせている奴隷に調査を命じたが、嫌な予感がする。



 翌日、調査を命じた奴隷が帰って来た。


「何か分かったか?」


「はい、まずは同業の奴隷商人の中で抜け駆けした者が居ないか調べましたが、同様に奴隷が売れていない状況のようでした」


「そうだろうな。だが、それならば何が原因だ?」


「次に得意先であるゲイル侯爵様を訪ねてみたところ、原因が判明致しました。それが……」


「何だ? 勿体ぶらずに早く言え!」


「ゴーレムです」


「は?」


 この奴隷は頭がおかしくなったのか? ゴーレムがこの帝都に居る訳がないし、居たら駆除されるだろ。いや、そもそも奴隷とゴーレムには何の関係性もないではないか。


「ゴーレムと奴隷が売れなくなった事とどう関係するというのだ! 適当な事を言って誤魔化そうなどと思っているならこの場で首を刎ねるぞ!」


「い、いえ! そのようなつもりはありません! ゲイル侯爵様の家では奴隷ではなく、ゴーレムが働いておりました! 奴隷の代わりに働くゴーレムが最近売られているというのです!」


 奴隷の代わりに働くゴーレムだと!? 奴隷の代わりに働くゴーレム!?


 理解が追いつかず何度も頭の中で反芻(はんすう)してしまった。


「ネルソンという冴えない鍛冶屋がゴーレムを販売しているようです」


 これは危険な匂いがする。奴隷商などという半ば裏稼業のような事をしていると危険を察知する嗅覚が磨かれるのだ。


「明日、緊急会合を開く! 全奴隷商人を集めろ!」


「は、はい! すぐに案内を出します!」



 次の日、帝都中の奴隷商人が集まった。まずは、主催者である私がまず話をする。


「私はアランデル奴隷商会のアランデルだ。今日、緊急で集まってもらったのは全ての奴隷商人にとっての敵が現れたからだ。最近、奴隷が売れなくなったことに気付いた者も居ることだろう。その原因は奴隷の代わりに働くゴーレムのせいだ!」


 会場がどよめく。


「ネルソンという鍛冶屋がゴーレムを作り出し販売しているのだ! このままでは奴隷商人は終わりだ! 誰か良い案がある者は居ないか?」


 日に焼けた男が挙手し、発言が許可された。


「元気奴隷商会のマクガヴァンだ。俺達に逆らったらどうなるか知らしめる必要がある。鍛冶屋など消すのは容易いことだ」


「そうだそうだ!」 「殺せ!」 と複数の場所から声が上がる。


 別の男が手を挙げる。


「フィッツ商会のフィッツジェラルドです。殺すよりも飼いならして我々の利益にしたほうがよいでしょう。反抗的な態度を取るのであれば、拷問するなり人質を取るなりすればいい」


 たしかに、俺達は商人だ。利益を追求すべきだろう。


「それは良い案だな。何か反論がある者は居るか? ……居ないようだな。では、今後は鍛冶屋ネルソンを確保する方針で決定する!」


「それで、作戦はどうなるのでしょうか?」


 フィッツジェラルドが質問する。


「奴隷商人ってのはな、方針は決めるが協力はしねぇ! お前、そんなことも知らねぇのか! 俺達は同じ商品を売る上で同盟を組んではいるが、商売敵でもあるんだぞ。要は早い者勝ちだ」


「ですが、何事も備えは必要です。個々で勝てないとなった場合のプランBも用意すべきです」


「ハッ! 俺の商会はそんな軟弱な考えはしねぇんだよ! 言いたい事は言った。俺は先に帰らせてもらうぜ」


 武力に自信を持っているマクガヴァンはそう言って帰ってしまった。


「さて、それではマクガヴァンが負けた場合のプランを考えようじゃないか」


 ――緊急集会は遅くまで続いた。この日から奴隷商会とコメット達との戦争が始まった。

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