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 俺は店主ネルソンが調べてくれた闇技師の場所を訪れた。


「ごめんください」


 扉をノックすると、しばらくして鍵が開いた音がして少しだけ扉が開いた。


「何の用じゃ?」


 隙間から薄汚れた白衣の幼女が見えた。お留守番だろうか?


「魔導アーマーについて相談があるんですけど、お父さんかお母さんは居るかな?」


「魔導アーマーじゃと!? すぐに入れ! 飲み物は紅茶か? 紅茶でいいな! すぐ入れるから待っておれ!」


 幼女はいきなりテンションMAXとなり、俺を置いて奥に走っていった。幼女のテンションの高さに呆然としながら待っているとすぐに幼女は戻ってきた。


「ほれ、紅茶じゃ! それで、魔導アーマーはどこにあるんじゃ?」


「待って下さい。魔導アーマーはここにはありませんし、俺は魔導アーマー技師に用があるんです。君のお父さんかお母さん、もしくはおじいちゃんかもしれないですが、呼んできてくれませんか?」


「何を言っているのじゃ!? ワシがその魔導アーマー技師なのじゃ」


 え? どこからどうみてもただの幼女ですけど?


「えー? 何か証拠はあるんですか?」


「これを見るがいい!」


 幼女が懐から取り出したカードは魔導アーマー技師のライセンスカードだった。ただし、写真にはお婆ちゃんの顔写真が写っている。


「これお婆ちゃんでしょ?」


「いいや、ワシじゃ! 実験の失敗でこんな年齢になってしまったんじゃ! そのせいで魔導アーマー技師も続けられなくなって困っていたのじゃ!」


 実験の失敗で若返る? そんなことあるのだろうか? むしろ若返りを商売にしたら大儲け出来そうですけど?


 しかし、作り話にしてはライセンスカードまで用意して手が込んでいる。一旦信じたフリをして様子見することにしよう。万が一、この話が本当だったら凄い魔導アーマー技師かもしれない。


「分かりました。まずは相談を聞いて下さい。俺の知り合いが帝国兵に攫われまして、救い出したのはいいのですが魔導アーマーと一体化していて降りることができないんです。助けられますか?」


「どういう状態なのか直接見なければなんとも言えんのう。そうじゃ! 魔導アーマーの場所まで連れて行け。ワシはその魔導アーマーが見たい!」


 うーん、どうしようかな? 仮にただの幼女だとして、魔導アーマーを見せたところで何も問題はないか。


「いいですよ。魔導アーマーは帝都の外で待機しているので、一緒に行きましょう」


 すぐに見たいと言う事だったので、すぐにカーラ達の所に向かった。



 カーラ達は俺が幼女を連れて突然現れたので驚いていた様子だったが、とりあえず事情を説明することびした。


「こちら、闇技師の……えっと」


「そういえば名乗っとらんかったな。ワシはシャーリン・ソルビーじゃ。シャーリンちゃんと呼んでくれてもええぞ」


 本人は冗談のつもりで言ったのかもしれないが見た目は幼女なのでシャーリンちゃんと呼ぶべきとも言える。


「コメット殿、本気なのか? このシャーリンちゃんが闇技師なのか?」


 カーラが俺に耳打ちしてきた。期待していた闇技師が幼女だったことが不安なようだ。もちろん、俺もめちゃくちゃ不安だ。


「それも含めて様子見です。まずは魔導アーマーを見たいということだったので連れてきました」


 シャーリンちゃんに聞こえないように俺も小声で返事をした。


「おお! これが例の魔導アーマーか! どれどれ。おお! 最新技術が使われた試作機ではないか!」


 シャーリンちゃんのテンションが上がった。


「私ならばもっと高性能に出来るのに降りたいだなんて勿体ない。じゃが、どうしても降りたいというのであれば回復術士か最高級ポーションが必要じゃ」


 たしかに手足が一体化してしまっているから切り離す場合、外科手術が必要だよね。


 今の俺ならヒールが使えるので問題はない。


「俺がヒールします」


「分かった。ならば、すぐに始めようかのう!」


「分かりました!」


 他人にヒールをかけるのは久々だ。俺も気合を入れた。



 ――手術を開始してから3時間。やっと手術が終わった。とても難しい手術だった。


「ヒール!」


 念の為、最後にもう一度ヒールをかけておいた。カーラは眠針によって眠っている。


「ふぅ、これで手術は完了じゃ! この試作機はダークエルフの魔力との親和性が高くて実に面白いのぅ。報酬としてもらってもよいか?」


「よくありません! 報酬は払いますから、乗り降り可能なように改造してください」


 そう、俺はこの魔導アーマーに乗ってみたいのだ。


「おぬしはダークエルフじゃないのだろ? ダークエルフでなければ操作は不可能じゃが?」


「もしかしたら奇跡的に乗れるかもしれないじゃないですか! お願いします!」


「仕方がないのぅ。追加料金はいただくよ」


 シャーリンちゃんは約束通り魔導アーマーを乗り降り可能なようにしてくれたが、俺は乗っても操作が出来ず枕を涙で濡らした。


 ちなみに料金は合計で5000万コインだった。



 3日後、カーラは完全に回復した。


 カーラ達が隠れている列車は住居としては決して良い環境とは言えない為、帝都のネルソンの店に移動することにした。さすがに従魔達は連れていけないので引き続き待機してもらい、カーラの魔導アーマーは置いていく。


 帝都の門を通る際は、カーラ達は俺の奴隷ということにして通ることが出来た。


 ネルソンが経営するゴーレム販売店に到着するとゴーレムを買い求める長蛇の列が出来上がっていた。


「この列に並ぶのはさすがに嫌ですね。裏口に回りましょう」


 俺達は行列を避けて従業員用の裏口から入った。


「ネルソンさん、帰ってきましたよ〜」


「おお、コメット様。おかえりなさい。そちらの方々は?」


 ネルソンは酒に溺れていた頃とは違い、今ではピシッとした紳士服を着て貴族相手にゴーレムを売りまくっている。そして、いつのまにか俺のことを様付けで呼ぶようになってしまった。何度か断ったんだけど、一向に直らないのでもう諦めている。


「こちらからカーラ、マリア、ルートです。東で奴隷になっていたところを助けたんですよ」


「ネルソンと申します。一応、鍛冶屋をやっていますが、今は主にゴーレム販売をしております」


「ネルソン、久しぶりじゃのう! 酔っぱらい鍛冶屋がここまで変わるとは驚きじゃ!」


「ソルビー様、この度はご協力ありがとうございました」


 ソルビー? シャーリンのことか。


「久しぶりに魔導アーマーに触ることが出来て満足じゃ! ところでゴーレムとは何じゃ?」


「見てみますか? 展示室へどうぞ」


 ネルソンはシャーリンを連れて展示室へ行った。


「マリアさんとルート君はどうします? せっかくの帝都なので買い物でもしてきてはどうですか?」


「いいんですか!? 是非行きたいです!」


「僕も行きたい!」


 マリアさんやルート君は、買い物を希望したのでコインを渡しておく。


「こんなにいいんですか!?」


「いいですよ。好きに使って下さい。お金はいくらでもありますので。ルート君も好きな物買っていいですよ」


「ありがとうございます!」


「わーい! ありがとう!」


「私が護衛としてついていこう」


 カーラさんが護衛についてくれることになった。帝都は割と治安は良いけど、護衛は居たほうがいいかもしれない。


「じゃあ、お願いします。カーラさんも買いたい物があれば買っていいですよ」


 カーラにもコインを渡しておいた。ずっとアジトで待機していたから気晴らしが必要だろうと思う。ちなみに、俺は一人ぼっちになってしまったので大人しくゴーレム作りを再開した。

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