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俺はいくつかのゴーレムを作った後、一旦カーラ達のところに報告しに行くことにした。
目標がカーラの治療費であった場合、すぐに達成できるだろう。でも、ゴーレム事業の目標を奴隷解放とした場合、そこそこ時間がかかるはずだ。
長く待たせる事になるので、事前に説明しておいたほうがいい。
「と言う訳で帰って来ましたー!」
「おかえりなさい」
「おかえりー!」
マリアさんとルート君が挨拶を返した。ルート君は奴隷だった頃、痩せてほとんど言葉も発さない子供だったが、最近元気を取り戻しつつあるみたいだ。
「訳が分からないぞ! ちゃんと説明しろ!」
カーラは相変わらずだった。
「帝都でゴーレム事業を始める事にしたんです。あと、奴隷制度も潰します!」
「コメット殿!? 騒ぎを起こさないようにあれほど言ったはずなんだが!?」
「え? あれはやれって意味じゃなかったんですか? それならそうと言って下さいよーもう手遅れですけど」
「なんてことだ……どうすれば……」
カーラは頭を抱えてしまった。
「まぁ、なんとかなりますって!」
俺は適当に励ましておいた。多分なんとかなるだろうしね。
「マリアさん、食料はどれくらい持ちそうですか?」
「食料はあと1ヶ月は大丈夫です。従魔達は自分で獲物を狩ってきてくれますし」
「それなら安心しました。また今度食料を持ってきますね」
ネルソンに頼めばきっと食料を集められるだろう。クズ鉄も大量に集めてくれたし。
「よろしくお願いします」
俺がマリアと話していると、カーラがやっと持ち直してやって来た。
「私はいつになったら魔導アーマーを降りられるのだ?」
「お金を作って、魔導アーマー技師を探してからですね。出来るだけ早く探しますよ。あ、もうこんな時間ですね。門が閉まる前に戻ります! じゃ!」
「ま、待て! 逃げるなー!」
俺はもう用はないとばかりに急いで帝都に戻り、ゴーレム作りに精を出すのだった。
――俺がネルソンと出会ってから一週間、俺はずっとゴーレムを作り続けた。
店主ネルソンはゴーレムを売り続けた。元々機械や魔導アーマーに慣れ親しんだ帝国ではゴーレムに対して全く忌避感がなく、ゴーレムは爆発的に売れた。
店主ネルソンは報酬で店を拡張した。俺は莫大な利益で更に金属を買い集め、ゴーレムを量産した。
その結果、俺はいくら使っても使い切れない程の資金を手に入れた。お土産代とカーラの魔導アーマーの費用くらい余裕であろう。
それに、そろそろカーラやマリア達が心配だ。食料や水の備蓄はまだあるはずだが、不測の事態が起こる事もある。すぐに魔導アーマー技師を探して一旦戻ろう。
「本当に行ってしまうのですか?」
「ええ、そろそろ本来の目的の為に動かないと遅くなってしまいますから。それにゴーレムの在庫はまだまだあるでしょ?」
「はい、1万体ほど在庫はあります。利益はこの店で預かっておきますので、いつでも取りにいらしてください」
「うん、それよりもゴーレム販売を頼みますよ。多少強引に進めてくれてもいいですから」
「はい、分かりました。必ず成功させてみせます!」
「じゃあ、紹介してもらった闇技師のところに行ってくるよ」
闇技師とは、帝国に管理されておらず、非正規に魔導アーマーを整備している技師のことだ。
「はい、助けてもらった御恩は一生忘れません! ありがとうございました!」
店主ネルソンは地面に額をこすりつけてコメットを見送った。




