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俺達は列車に戻ったが、大量の従魔達は村の外で待機してもらった。
列車には元奴隷の何名かもついて来た。そのうちの1人は奴隷のまとめ役だったバッハマンという男だ。あとは元奴隷のマリアとルートも居る。今後、具体的にどうするかと話し合う為だ。
ちなみに列車の運転をしていた帝国兵はカーラが捕虜として捕まえてくれていた。俺もこの列車の運転方法は知らないので助かった。
「さて、解放された人々の今後について話し合いましょう。選択肢はまず2つあると思います。1つ目はここに留まるという選択肢、2つ目はここから逃げるという選択肢です。これについてはどう思いますか?」
「多くの奴隷は別の土地から連れてこられた者ばかりですし、この土地に対して良い思い出もありません。きっとここから逃げるという選択肢を希望していると思います。ただ、希望と現実は違います。実際にここから逃げたとしても多くの者は故郷にたどり着く前に力尽きると思います」
バッハマンは悔しそうな表情をしている。
「私とこの子も母国に帰りたいとは思いますが、国境は帝国の警備が厳しいので……」
マリアはたしかロディニア魔法国から来たと言っていた気がする。たしかに国境を越えるのは誰かの助けが必要だと思う。しかし、ロディニア魔法国か。帝都の見学が終わったら行ってみようかな?
さすがに全ての人の希望を叶えることは出来ない。従魔を貸し出すにしても行き先の分からない場所に連れていかれるのは少し困る。
「じゃあ、こんな案はどうでしょうか? 東の砂漠を更に進んだ場所に世界樹の都市があります。希望する人達をそこに連れて行くという案です。もちろん、道中の安全は保証します」
「世界樹ですと!? しかし、太陽神様のおっしゃる事ですので、間違いないのでしょう。分かりました。私バッハマンが皆を説得しましょう」
「はい、お願いします。マリアさんとルート君はどうします? 俺とカーラさんはこれから帝都に行く予定だけど、帝都を見た後はロディニア魔法国に行こうと思うんですけど、一緒に行きますか?」
カーラはついてくるのか不明だが、魔導アーマーから降りることが出来たらその時に決めればいいだろう。個人的には魔導アーマーに乗ってたほうが強いしかっこいいと思うのだが。
「もし、ご迷惑でなければ私達も連れて行ってください。よろしくお願いします」
「分かりました」
「いや〜太陽神様のおかげで第三奴隷村の奴隷達は救われました。改めてお礼を言わせてください。ありがとうございました」
バッハマンは深々と頭を下げた。お礼を言われるほどの事はしていないのにと思いつつも、それより一つ気になる言葉があった。
「第三奴隷村ですか? 第一奴隷村や第二奴隷村もあるのですか?」
「ええ、はい。帝都の周辺には第一から第七奴隷村まであると聞いたことがあります」
なんということだ。帝国はどれだけの奴隷を集めてきたのだろうか? こうなったら全て解放してやろうじゃないか。
「そうですか。ちなみに隣の奴隷村に行くにはどうすればいいですか?」
「列車で行くことが出来ます。奴隷村同士が線路で繋がっているのです。ここから北に向かえば第二奴隷村が、南に向かえば第四奴隷村があります」
「ありがとうございます。カーラさん、マリアさん、すみませんが帝都に行く前にやることが出来たようです」
「ああ、分かっている」
「私も構いません」
「バッハマンさんには十分な数の従魔を貸しますので東の砂漠を目指してください。俺達はすぐに南に向かいます」
「わ、分かりました。私にお任せください」
従魔には地雷原を越えられるだけの装備を用意してバッハマンに貸し出した。そして、俺達は列車で南に向かった。貨物車両には従魔達も乗せている。第二のスタンピードを起こす予定だ。




