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捕虜が収容されていた牢屋区画を抜けて、来た道を戻る。もう少しでボーンドラゴンが待つ出口だというところで後ろから何かが壁を削り瓦礫を吹き飛ばしながら追ってくるのが見えた。
「あれは……?」
「こちらのモニターには攻城用魔導戦車って書いてあるぞ!」
俺達を追いかける為に攻城兵器を出したのか!? そんなことをしたら基地の被害が広がることも分からないのだろうか。それとも、そこまでして取り返したい物があるのか?
俺はカーラが乗っている魔導アーマーを見た。これが帝国の取り返したい物なのだろうか。俺がカーラの魔導アーマーを見ていると、カーラがなにやら頷いている。
「そうかそうか。早速、私の出番というわけだな?」
「何か勘違いをしていませんか?」
「大丈夫。ちゃんと分かっている。あの戦車を倒せと言いたいのだろう! 任せろ!」
カーラは反転すると巨大な戦車に飛びかかった。グレータージャイアントスコーピオンに怯えていた頃の姿が懐かしい。今ではもうすっかり変わってしまった。
俺はそのまま真っ直ぐ出口を目指すことにした。多分戦車はすぐに止まれずに外まで飛び出すはずだ。そこまで行けばボーンドラゴンも居るから加勢してもらえる。
「カーラさん! もうすぐ外に出ます! ボーンドラゴンは俺の従魔ですから攻撃しないで下さい!」
「承知した!」
ダダダダダダ!!
巨大戦車から魔法で創られた岩、ロックアローが連射される。熟練の魔術師でもほぼ不可能な連射だ。だが、標的であるカーラは戦車の上で素早く動き回っている為、命中しない。
「すごいな! 帝国の科学力は! 是非帝都も見学してみたいなぁ!」
帝国とは対立しているが、太陽神が対立しているだけで、コメット個人は対立していないのだ。もしかしたら安全に帝都を見学出来るかもしれない。
そんなことを考えていると、外に到着した。
「ボーンドラゴン! この戦車を攻撃しろ!」
「承知シマシタ」
ガギン! と砂鋼製の爪で戦車を攻撃するボーンドラゴン。さすがの戦車も装甲が少し削られたようだ。ボーンドラゴンの攻撃のタイミングに合せてカーラも攻撃をしている。
「俺も何か加勢しようかなぁ〜。あ、いい事を思いついた!」
戦車がボーンドラゴンとカーラに気を取られている間に俺は戦車に接近する。砲身に手を当ててスキルを発動する。
「石化!」
砲身が石化した。つまり、簡単に折れてしまうということだ。
「強撃!」
砲身が砕け散った。すると、戦車のハッチが開き、帝国兵が手を上げて出てきた。降参するということだろう。もう少し抵抗してくれてもいいのにとも思ったが、石化&強撃を見て負けると確信したんだろう。
その帝国兵達を縛り上げて目の前で座らせる。帝国に対しての連絡役になってもらう為だ。
「俺……いや、我は太陽神! 東の砂漠を守護する神だ! お前達は神聖なる砂漠に侵入し、聖地を汚した! よって我は罰を与えたのだ! 二度と砂漠に近づくでないぞ!」
俺はそう言うと、ボーンドラゴンの背中に乗り、カーラとガルズーガの民達を連れて東に去る演出を行った。
帝国から見えない位置まで歩いた後、ガルズーガの民達にはこのままガルズーガまで帰ってもらうことにした。
「というわけで、ここから俺は別行動です。皆さんはガルズーガに帰ってください」
「太陽神様! 我々だけでは地雷原を越えられません!」
「あー、たしかにそうですね。じゃあ、ボーンドラゴンを貸します。ボーンドラゴンなら地雷原を突破出来ますから」
「わ、分かりました。太陽神様が言うなら本当の事なんでしょう。ありがとうございます」
「じゃあ、お元気で!」
俺はガルズーガの民達を見送った。
「よし! 俺はこのまま帝都まで観光旅行だ!」
そう言って隣を見ると何故かカーラが立っていた。
「あれ? 何故カーラさんがここに?」
「あれ? じゃないだろう。私の体は魔導アーマーと一体化してしまっているんだぞ。体を元に戻せるのは帝国だけだ。私もお前と共に行く」
「いやいや、本気ですか? というか、カーラさんの魔導アーマーって赤くて目立つからついてこないで欲しいんですけど」
「なんだと!? お前は私がガルズーガまで連れて行った恩を忘れたというのか!?」
「うぐっ! それを言われると何も言い返せないですね。仕方がありません。一緒についてきてもいいですよ」
こうして、カーラと2人で帝都を目指す事になった。




