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まずは鑑定で相手の力を見てみよう。
「鑑て……あぶな!」
ボーンドラゴンの飛ばした骨がさっきまで俺が居た場所を地面ごと抉り取っていった。鑑定をして余所見している暇はなさそうだ。そして、今の攻撃を見る限りかなりの強敵だと思われる。
ボーンドラゴンはぐるりと回転すると骨の尻尾をこちらに叩きつけてくる。
「ほっ!」
俺はそれをジャンプして避ける。尻尾はそのまま左右の壁に衝突して壁を壊した。すると壁の中には無数の骨があった。
「え!?」
よく見ると、銀色の骨だ。それらが一斉に動き出し、整列する。手にはシミターや盾を持っている。これはアンデッドのダンジョンで見たことある敵だ。
「シルバースパルトイだったっけ?」
「ソノ通リ。カカレ!」
合図と共にシルバースパルトイ達が一斉に襲ってきた。
「たしか! 良いスキルを持ってたような気がするけど! あぶな! さすがにこの状況じゃきついね!」
しばらくスキルを吸収しようと頑張ってみたけど、敵が割と強い上に数が多くて近寄れない。仕方がない、倒すしかないか。
「蟻地獄!」
硬い岩だった地面に、突如蟻地獄が生まれ、シルバースパルトイ達が飲み込まれていく。
シルバースパルトイは魔法耐性も物理耐性も高かったはずだ。以前の俺だったら力押しでどうにでもなったけど、今回はどうしようかな?
「強撃!」
試しに強撃を撃ってみたが蟻地獄の底まで届かなかった。
「ですよねー……うわっ!?」
「小賢シイ真似ヲスルナ」
ボーンドラゴンが紫色の液体を空中に発生させるとこちらに発射し、あやうく直撃するところだった。毒魔法だろうか?
それを見た俺は良い事を思いついた。蟻地獄を確認するとシルバースパルトイ達はまだ底の方に居る。俺はボーンドラゴンの攻撃を素早く避けながら蟻地獄の淵にスキルを放つ。
「猛毒!」
ドロリとした毒が大量に発生し、蟻地獄の底に流れていく。シルバースパルトイ達は猛毒の海に沈んでいった。
《レベルアップ:レベルが266になりました》
「よし! 上手くいった!」
あとはボーンドラゴンだけだ。ドラゴンコレクターとしては、こいつをテイムしたいところだけど、どうやったらテイム出来るだろうか。意識を失わせれば高確率で成功するはずだから、まずは眠針を試してみよう。
ボーンドラゴンが飛ばしてくる毒魔法を回避し、次の毒魔法を準備しているボーンドラゴンに狙いを定める。
「眠針!」
カキィンッ!
あっさりと骨に弾かれて眠針は全く効果がない事が分かった。しかし、偶然か分からないがボーンドラゴンの毒魔法の詠唱が中断された。ラッキー!
「ム! 邪魔ヲスルカ! ナラバ、コレナラドウダ!」
ボーンドラゴンの攻撃パターンが変化した。毒魔法を止め、骨の欠片をまるで散弾銃のように飛ばしてくるようになったのだ。骨を飛ばしているだけなので詠唱もない。なかなかに厄介な攻撃だ。しかも、飛ばした骨の欠片は自動で本体に戻っていく。
「土の力よ 壁となれ アースウォール!」
ガガガガガガ!!
魔法で作り出した土壁があっさりと穴だらけにされてしまった。
「うわ、アースウォールじゃ目隠し程度にしかならないね」
このままじゃ、いずれ骨に直撃して敗北する未来しか見えない。どうしたら骨を防げるのか。どうしたらテイム出来るのか。その2つを同時に行う方法は……?
「あ、良いこと思いついた」
ボーンドラゴンが次に骨を発射するタイミングを見計らう。散弾銃のように複数の骨の欠片がこちらに飛ばされる瞬間を狙う。
「水の力よ ウォーター!」
水中で発射された銃弾はたったの2メートル程度しか進まない。つまり、骨も大量の水の塊にぶつかれば、この通りだ。水中で停止した骨の欠片が浮かんでいる。
「さらに、氷の力よ アイス!」
骨の欠片が入った水の塊を氷漬けにした。これで骨の欠片がボーンドラゴンに戻ることは出来ない。
「小賢シイ! ソノ程度デ防イダツモリカ!!」
ボーンドラゴンは激昂し、大量の骨を発射するようになった。でも、そんなことをしたら終わりを早めるだけなのになぁと思いながら、後は氷漬け作業を繰り返すだけだった。
――1時間後。
「スミマセンデシタ……」
もはや首だけとなったボーンドラゴンが謝っている。
「仲間にな〜れ!」
ボーンドラゴンの額にチョップすると、無事にテイムは完了となった。




