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「ふんふんふ〜ん」
俺は今サソリ君2号に乗って南東を目指している。もちろんソロだ。カーラさんに一緒に行くか聞いたところ、別の任務が入ったらしい。けっこう危険な場所を通るので、ソロのほうが都合が良い。
グレータージャイアントスコーピオンは足場の悪い砂漠でも時速20kmを維持して走っている。
「サソリ君2号は砂漠でも足が速いからいいよねぇ。あと荷物の乗せやすさとか、戦闘能力の高さとか、バランスがいいよ。うんうん」
俺に褒められたサソリ君2号は速度が2割ほど上がった。褒めて伸ばすのは従魔に対しても有効なのかもしれない。2日ほど進むとオアシスが見えたので少し休憩し、更に南東に進む。
南東に進み続けて合計で4日が経過した。普通に徒歩で進んだ場合、10日はかかるんじゃないだろうか? そんな状態で今見ている光景を目の当たりにしたら、即引き返すと思う。
「これは凄い光景だなぁ」
直径30メートルはある巨大な蟻地獄が広大な砂漠にいくつも存在している。ちょうど蟻地獄の近くを歩いていたバジリスクが蟻地獄に足を滑らせて落ちていった。一番底まで滑っていったバジリスクは巨大な顎に挟まれて砂の中に引きずり込まれていった。
「バジリスクが一瞬で食われたのかぁ。落ちるなよサソリ君2号、絶対に落ちるなよ」
サソリ君2号は分かったのか分かっていないのか、いつも通り進み出した。そして蟻地獄の巣の近くまで近寄るとフラフラとし始める。
「おや? サソリ君2号? まさか?」
サソリ君2号は分かってますよと言わんばかりに蟻地獄の巣に落ちていく。
「さっきのはフリじゃないぞサソリ君2号ーーーー!!」
こうなったら、蟻地獄を倒して穴を出るしかない。まずはどれだけ強いのか鑑定だ。まだ底に着くまでは少しだけ時間がある。
「鑑定」
【大砂漠蟻地獄】
LV:200
HP:3200
MP:0
STR:1500
VIT:200
DEX:0
AGI:0
INT:0
LUK:100
スキル:蟻地獄、大顎
巣に落ちてきた獲物を巨大な顎により捕らえる。捕らえた獲物には消化液を注入し、体組織を分解したものをすする。
「蟻地獄で待ち構えているだけだからほぼSTRに極振りしてる……でも、それさえ分かればどうにでもなりそうだな」
俺は一直線に蟻地獄に向かっていき、直前で方向転換する。蟻地獄はその動きについてこられない。側面に回り込むと、蟻地獄の頭に手を触れる。
「吸収!」
《スキル:蟻地獄を吸収しました。蟻地獄1を取得しました》
《スキル:大顎を吸収しました。大顎1を取得しました》
「強撃!」
半透明のジャイアントスコーピオンの鋏が現れて強撃を行う。蟻地獄の頭は粉々になった。
《レベルアップ:レベルが257になりました》
「よっしゃー新スキルゲット! ついでにレベルアップ〜!」
蟻地獄から抜け出した俺はさっそく新スキルを試してみることにした。
「わかりやすい方から試してみよう。大顎!」
半透明の蟻地獄の大顎が現れてガッチリと前方に向かって挟み込んだ。
「うんうん、そんな感じだろうと思った。じゃあ、次。蟻地獄! おわ!?」
目の前の地面がどんどん抉れていき、蟻地獄の巣が完成した。サイズは小さいけども。
「設置式の罠、ということなのかな? これはレベルを上げれば大きなサイズも出来るようになるってことかもしれないな。よし! サソリ君2号、どんどん蟻地獄を狩っていこう!」
俺はサソリ君2号に飛び乗り、周囲の蟻地獄からスキルを吸収していった。




