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「おま……いや、コメット殿はどこか見たい場所はあるか?」


 呼び方が『お前』から『コメット殿』にランクアップしたようだ。正式にお客として認められたからかな?


「そうですねぇ。まずは宿をと言いたいところですが、無一文なのでお金を得る方法から教えていただきたいですね」


 バジリスクやジャイアントスコーピオンの魔石は大量に持っていたのだが、慌てて出発したのでオアシスの拠点に置きっぱなしだ。多分、サソリ君が守ってくれるだろう。


「そういうことであれば、狩猟ギルドに入るのが良いだろう」


「狩猟ギルドですか? 名前の響き的に動物を狩ってくる仕事でしょうか?」


「ああ、そうだ。そうすれば身分証も手に入って一石二鳥だぞ」


 冒険者ギルドのようなもののようだ。砂漠では冒険よりも生きる為の食料などを狩るほうが優先されたと考えれば納得できる。


「では、狩猟ギルドへの案内をお願いします」


「分かった。ついてこい」


 俺がカーラの後ろをついていくと街の造りがなんとなく分かってきた。街の真ん中には大きな湖があり、漁業を行っている船がいくつも浮かんでいる。湖の近くには広大な小麦畑が広がっている。


 入ってきた入り口とは逆方向に歩いていくと、水壁の近くに狩猟ギルドらしき建物が見えてきた。


「ここだ」


 カーラはそう言いながら狩猟ギルドに入っていったので、俺も急いで中に入る。


「おう! カーラじゃねぇか! しばらく見ないと思ったが無事に帰ってきたようだな!」


 髭面のおっさんダークエルフがカーラに話しかけてきた。同じテーブルにパーティメンバーらしき仲間も居る。


「ああ、フェルディか。枯れたオアシスの調査からちょうど帰ってきたところだ」


「ところで、後ろについてる小僧は誰だ? まさか隠し子か?」


 フェルディがニヤニヤしながら聞いてくる。これだから酔っぱらいは。


「な!? そんなわけないだろう! 私はまだ22だ! こいつはオアシスで見つけた遭難者で、長が滞在を認めたので連れてきただけだ!」


「おいおい、冗談だって。そんなに怒るなよ。ふーん、見た目は弱そうだが、カーラが連れてくるくらいの実力はあるってことか」


「そういうことだ。こちらも忙しいのだ、もう行くぞ」


「ああ、呼び止めて悪かったな」


 自己紹介をするタイミングが無かったな。まぁ、どこかのパーティーに入るつもりはないから問題はない。受付に行くとカーラが俺の登録をしたいと伝えて、登録作業を行った。


「狩猟ギルドにはルールが3つあります。1、他の狩猟者の獲物を奪わないこと。2、ガルズーガの不利益となる行為を行わないこと。3、生きて帰ることです。何か質問はございますか?」


 なんか凄く大雑把なルールだな。でも、なんとなく砂漠で生き抜く為に必要なことが詰め込まれているような気がする。


「2のガルズーガの不利益となる行為とは具体的にはどんなことですか?」


「例えば、犯罪ですね。あとは都市や水壁の破壊などです。その場合、狩猟ギルドの登録破棄はもちろんですが、極刑となりますのでお気をつけください」


「なるほど! 分かりました。他に気をつけたほうがいいことはありますか?」


「そうですね。狩猟を行うのなら北側がオススメです。比較的魔物が弱いですから。東側は魔物が強く危険なので近づかないでくださいね。あと西側もアランド帝国の国境なので近づくと襲われて奴隷にされますよ」


 なにそれ恐い。アランド帝国って近づいただけで奴隷にされるのか。行かないほうがいいな。行くなら北で決定かな。


「ありがとうございます。しっかりと稼いできます!」


 俺は入ってきた入り口から狩猟ギルドを出ていこうとすると、受付嬢から声がかけられた。


「あ、狩猟者証を忘れてますよ!」


 狩猟者証? 冒険者証みたいなものかな?


「あ、すみません。この首飾りがそうですか」


 青い水滴型の結晶に【F】と刻印されている首飾りだ。魔力が感じられるので、何かのマジックアイテムなのかもしれない。受付嬢から受け取って首からさげた。


「狩りに行くなら狩猟ギルドの裏から街の外に出られます。狩った獲物もそこから直接運び込んでください」


 あの狭い入り口からでは人1人分くらいしか通れない。狩猟ギルドは大型の魔物も通れるくらいの搬入口があるということだろう。建物が壁際に建てられていたのはそれが理由らしい。


「分かりました。裏口はこちらですか?」


 受付嬢が指差す通路を通り抜けると、そこはかなり広い場所だった。屋根はあるが壁はない。大きな作業台で男たちが魔物の解体を行っている。


「おい! こっちのバジリスクの解体は誰の仕事だー!? 遅すぎて腐っちまうぞ!!」


「すんません!!」


「こら新人! 解体中に余所見すんじゃねぇよ!」


 かなり慌ただしく魔物の解体を行っている。街全体の魔物由来の食料はここで行っているのだろうか。それならこの忙しさも納得だ。しかし、絶対にここでは働きたくないと思ってしまう。


「おい、コメット殿。行かないのか?」


「あ、迫力が凄くて呆気にとられてました。行きましょう」


 走り回る魔物解体屋の横を通り過ぎて外に出た。


 さて、どこに行こうかな? 北側がオススメと言っていたから北に行ってみよう。つまらなかったら東側だな。と思ったが、俺達は東側から来たことを思い出した。というわけで北側が駄目ならその時考えることにしよう。

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