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 ――数時間が経過し、夕日が沈む。


「さて、出発しようか」


 俺がサソリの背に乗ると、ちょうど目の前にバジリスクが岩陰から出てきた。しかも、俺を狙っているようだ。鑑定するとバジリスクはLV40で猛毒と石化のスキルを持っている。ちょうどいい、【吸収】の実験台になってもらおう。サソリの背から降りた俺はスキルを使用してみる。


「吸収!」


 俺が吸収を発動させると両手がぼやっと光っている。この状態で敵に触れればいいのだろうか? そういえば、邪神も接触していない時には吸収してこなかったな。


「行け! サソリ君! 強撃だ!」


 俺の指示に従って、強撃を繰り出すサソリ。バジリスクは動き始めたばかりでまだ動きが鈍い。サソリの大きな(はさみ)がバジリスクの横っ腹にドスッと突き刺さる。


「グルルガアアアアア!!」


 痛みで覚醒したバジリスクはこちらに向かって大きく口を開けて威嚇している。


「今だ!」


 俺はバジリスクの死角に潜り込むとバジリスクの腹に手を当てた。


 《スキル:石化を吸収しました。石化1を取得しました》

 《スキル:猛毒1を吸収しました。猛毒1を取得しました》


「よし! やっぱり敵のスキルを吸収できるんだなぁ。石化さえ防げばサソリ君でも楽勝だろう。倒せ! サソリ君!」


 サソリ君が毒尾をバジリスクに打ち込む。そして、毒で麻痺したバジリスクの首を強撃でへし折った。


 《レベルアップ:レベルが15になりました》


「おお! 一気にレベル15まで上がった。レベル最大だった頃には気づかなかったけど、従魔が敵を倒しても経験値が得られるんだなぁ」


 多分、サソリ君にも経験値が入っていると思うが、レベルに変化は無かった。俺はサソリ君の背中に飛び乗る。


「もう完全に太陽も沈んでしまった。気を取り直して、北に向かって出発だ!」


 サソリ君は指示どおりに走り出した。


 少し進むと前方にサボテンらしき影が見えた。サボテンの実は甘いらしいけど実はあるだろうかと考えていると、サソリ君が立ち止まり尾を持ち上げて威嚇し始める。


「サソリ君、どうしたんだ? まさかあのサボテンに何かあるのか? 鑑定してみよう」


【サボテンキング】

 LV:30

 HP:4900

 MP:3000

 STR:30

 VIT:30

 DEX:50

 AGI:0

 INT:150

 LUK:10

 スキル:眠針

 世界最大のサボテン。 寿命は200年で最大で15mまで成長する。催眠作用のある針を飛ばし眠った獲物を捕食する。赤い実は食べると甘い。



「けっこう危ない奴だった!? 眠針を飛ばしてくるのか。そのスキルを奪ったらちょっと面白そうではあるなぁ。よっし、やってみるか。レッツゴー! サソリ君!」


 サソリ君がサボテンキングに近づいていく。するとサボテンの一部が大きく膨らんだ。


 バシュッ!


「!?」


 サボテンの大きく膨らんだ部分から無数の針が発射され、全方向に飛ぶ。サソリ君の外骨格は鉄並に硬いため針を全て弾いている。しかし、俺の今の防御力では絶対に弾くことは不可能だ。


 プスッ


「しまった! 刺さ……れた……」


 俺の意識は遠のいていった。



 《スキル:眠り耐性1を取得しました》


「真実はいつもひとつ!! ……ハッ、夢か。そういえば俺はサボテンキングの眠針に刺されたんだった」


 すぐ側にはサソリ君が居て、心配そうにこちらを見ている。少し離れたところにはサボテンが見える。


「サソリ君が助けてくれたのか。ありがとう。次は確実に勝つ方法を考えるよ」


 眠り耐性1は手に入れたが眠針に耐えられるとは限らないし、複数の針が刺さればさすがに眠ってしまうだろう。


 サボテンは最初に見た位置から全く動いていない。魔物ではあるが植物だから地面の下に根を張っているんだ。動けない敵を倒す方法は、眠針が届かない遠距離から攻撃すればいい。


 だが、単純に倒してしまえばいいというわけじゃない。吸収スキルで相手に触れなければいけない。


「うーん、どうするかな。弾が切れたら銃は撃てない、か。サソリ君、全速前進!」


 俺はサソリ君に乗ると指示を出した。サソリ君がサボテンに向かって全速前進する。それに気づいたサボテンがまたしても針を飛ばしてくる。


「サソリ君ストップ! 防御態勢!」


 サソリ君をストップさせて、俺はサソリ君の影に隠れる。物凄い数の針がサソリ君に当たる音が聞こえる。まるでマシンガンを撃たれているかのようだ。


 しばらく待機すると音が止んだ。こっそり覗き見すると、サボテンは最後の針を残してこちらを伺っているようだ。意外と用心深い奴だ。


「サソリ君、地面に強撃だ!」


 サソリ君が指示通りに地面に強撃すると、大量の砂が舞い上がり視界が砂で覆われた。


「今だ!」


 俺はサソリ君の影から飛び出し、全速力でサボテンに接近する。サボテンは異変に気づいて最後の針を飛ばそうとしている。


「させるか! 石化!」


 かざした右手から石化ブレスが発射され、最後の針を飛ばそうとしていた部分が石化する。これでもう針は撃てなくなった。俺はサボテンに手を触れてスキルを使う。


「吸収!」


 《スキル:眠針を吸収しました。眠針1を取得しました》


「よし! サソリ君、後は任せた!」


 サソリ君の容赦ない攻撃でサボテンは細切れとなった。


 《レベルアップ:レベルが20になりました》


「いいねいいね。レベルが上がるこの感じ。久しぶりに楽しくなってきた!」


 確認するとサソリ君のレベルも51に上がっているようだ。


「この赤い実は食べられるんだったな。どれどれ……ん!? 甘い! ほら、サソリ君も食べてみな」


 サソリ君は昆虫のほうが好きなようで赤い実は拒否されてしまった。まぁ、要らないなら俺が食べるから問題ない。俺は上機嫌でサソリ君に乗り、北を目指すのだった。

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