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時空魔法ロールバック? 突然のスキル獲得に驚いたが、エルフの里でのことを思い出した。
『時空魔法を真に必要とした時、思い出すことでしょう』
世界樹の精霊はそんなことを言っていた気がする。
「時空魔法ロールバック……これはもしや、『時を戻そう』ってやつじゃないか!?」
効果範囲やどれだけの時間が戻るのかリスクが高いけどやるしかない。
「吸収する暇を与えずにロールバックを使うには……体内に直接叩き込む!」
邪神に全力疾走で近づき全力ストレートパンチで触手を吹き飛ばす。
邪神の内部が見えたところに右手を突き出して構える。さて、どうなるかな?
「ロールバック!」
世界樹の精霊から貰った知識のおかげで無詠唱で発動出来る。
邪神の動きが止まった。そして、少しずつ小さくなっていく。ついでに吹き飛ばした触手も時が戻ると同時に治っていく。
「これは凄いな。この時空魔法ならいけそうだ!」
少し小さくなった邪神は再び動きが止まり、巨大化を始める。
「1回使っただけじゃ足りないか。だったら、何度でもやるしかない! ロールバック!」
再度殴りつけては体内にロールバックを繰り返す。
邪神がどんどん小さくなっていく。邪神の記憶も戻っているのか特に大きな抵抗もしてこない。
「よし! あと1発で多分元に戻るんじゃないか? シャルロットも助け出せるかもしれないぞ!」
最初の礼拝堂に収まる程度まで小さくなった邪神に最後のロールバックを撃つ。
「ロールバック!!」
紫色の肉塊は小さな心臓に戻り、スティーヴンとシャルロットが現れた。
俺は、すぐにシャルロットをスティーヴンから引き離し、ヒールをかける。
「な、何が起こったのだ!? 邪神は何故召喚されない!?」
スティーヴンはかなり混乱しているようだ。奴にとってみれば、邪神召喚を行った直後、俺とシャルロットが離れた場所に瞬間移動したように見えたはずだ。
「邪神はなかなか手強かったよ。でも、時空魔法で時を戻せば何も問題はない」
「時空魔法で戻しただと!? 非常識にも程があるだろう!! もう少しだったのに! クソがああああああ!」
スティーヴンは地面を叩き悔しがっている。俺は今の内に保険をかけておく。
「シャルロット、これは時空の腕輪です。危険だと感じたらボタンを押してください」
シャルロットに時空の腕輪を装備させる。
「わ、分かりました。ですが、コメット様は?」
「俺はスティーヴンを始末したら、邪神を元の場所に返します」
未だに地面にうずくまるスティーヴンの近くまで行く。もちろん油断はしない。
「スティーヴン、お前の物語はこれで終わりだ!」
時空刀を振り下ろした時、スティーヴンの体は黒い液体となって地面に広がった。
時空刀にこのような効果はない。スティーヴンの仕業だろう。
そして、背後に気配が生まれる。以前見せたシャルロットの背後に移動した技か。だが、俺はその行動を想定済みだ。
「そう来ると思ったよ!」
振り向きざまにスティーヴンの首を切り落とした。だが、そいつも黒い影となって消えた。
「こいつも!?」
「馬鹿め! かかったな!」
急に背中が重くなる。顔に邪神の心臓が張り付いたスティーヴンが俺の背中にしがみついていた。
「コメットオォォ! お前を生贄にすれば最強の邪神が産まれるはずだ!」
「させるかああああ!」
俺は時空刀でなんとかスティーヴンを攻撃しようとするが、直前で黒い霧となり斬る事が出来ない。
「邪神オルバース召喚!!」
邪神召喚が始まってしまった。紫色の肉塊が膨れ上がる。
「全力跳躍! ヘルファイアブースト!」
こうなったら邪神の侵食が進む前に宇宙に運ぶことにした。
「何をしても無駄だ! 邪神は復活するのだ!」
「俺には秘策があるから問題ないんだよ!」
宇宙でロールバックを発動させれば邪神を分離出来るはずだ。
宇宙目指して上昇を続けていると
《スキル:時空魔法ロールバックを奪われました》
無情な天の声が聞こえてきた。
「……ええええええええ!? まさか邪神に奪われた!?」
「ハッハッハ! 邪神に全てのスキルを捧げるがいい!」
「スティーヴンお前はしばらく黙っとけ!」
裏拳で殴り気絶させた。
《スキル:時空魔法付与を奪われました》
「かなりまずいぞ! どうするどうする!?」
《スキル:光魔法を奪われました》
「俺の光魔法があああああ! とにかく早く宇宙まで行くしかないか!」
《スキル:闇魔法を奪われました》
・
・
・
スキルを奪われながらも、なんとか宇宙まで上がってきた。
(ここまで来たら、どんな攻撃をしても星に影響は出ないだろう)
俺にはまだ奪われていない切り札がある。
邪神の身体は増殖を始めており、もう時間の余裕はない。
(よし、始めよう)
意識を集中し、全ての魔力を右手に集める。
(このスキルを使ったら、もう俺の国には戻れないかもしれないな……でも、やるしかない!)
そして右手の魔力を極限まで圧縮する。
(これで終わりだ! 粉々に吹き飛べ! 全力圧縮コメットオオオオオ!)
自分に向けて全力圧縮コメットを放った。
目の前が真っ白になる。超新星爆発だ。一瞬にして俺の防御力を突き破り、邪神もろとも全てを粉々にしていく。
(きっともう生きて会う事はないだろう。さようなら、コメリのみんな。さようなら、セバスチャン、シリウス、ドラゴン達、出会ってきた人達……)
《称号:邪神を討伐せし者を取得しました》
《スキル:吸収を取得しました》
(邪神を倒せたようで良かった……)
白い光の中、俺の意識はそこで途絶えた。
――――――――
「食べないでください! そのマルゲリータには俺の名前が……! ハッ! 夢か……」
目を覚ますと砂漠の真ん中で真っ裸になっていた。
「今回はちゃんと記憶がある! そしてちゃんと生きてる!」
周りを見回しても、砂漠が広がっているだけで人の姿は見えない。
「ここはどこなんだろう? そして何年後なのかが問題だ」
前回、隕石によって粉々になった時は多分数千万年経過していたはずだ。
「考えていても仕方がない。また人里探しから始めるかな! いや、その前に服が必要か!?」
次の旅の始まりだ。
これにて異世界産業革命の章は完結となります!
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