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「セバスチャンやシリウスはきっと避難を完了しているだろう。よし、とっておきを邪神にお見舞いしてやる!」
俺は邪神に狙いを定めて、スキルを発動させる。
「コメット!!」
上空から紫色の魔力を帯びた隕石が落ちてくる。
邪神の触手が一斉に隕石に対して反応を示す。そして、大量の触手が隕石に向かって伸びていく。
「隕石を止めようとしているのか……?」
俺は爆発に備えて時空の腕輪を準備する。時空の腕輪のスイッチを押せば10秒間の無敵時間が作れるはずだ。
ついに邪神の触手と隕石がぶつかった。触手は隕石の熱や衝撃によって粉々になりながらも、隕石を包み込んでいく。
「何をしているんだ? ……まさか!!」
魔力感知で隕石の魔力を見てみると、触手に吸収されているのが見えた。
「隕石の魔力を吸収している!?」
今や隕石は完全に触手に覆われている。隕石が完全に消滅するのも時間の問題だろう。
「切り札がこんな形で防がれるなんて……どうやったら邪神を倒せるんだ」
隕石を完全に吸収した邪神は更に巨大化し、体長1キロメートルを超えたようだ。
そして、次の標的を俺に定めて触手を伸ばしてくる。
「うーむ、何も思い浮かばない! 今は時間稼ぎするしかない!」
俺は時空刀で迫りくる触手を斬りつける。すると、邪神の本体も動きが止まり10秒間の猶予が生まれた。
今は時空刀で時間を稼いで良い案がないか考えるしかない。
10秒経過し、邪神が動き出すタイミングを見計らって時空刀で斬りつける。その作業を繰り返すが、少しずつ邪神は大きくなっていく。
「*#^€¿°^##&」
邪神が何か言葉を発すると、ゾクリと背筋が寒くなった。この感覚は、よく覚えている。
「まさか邪神も使えるのか!?」
俺が空を見上げると、そこには俺めがけて落下してくる隕石があった。禍々しい紫色のオーラまで同じだ。
まさか、スキルを吸収したのか!? それとも、受けた技を学習するのだろうか?
俺はすぐに時空の腕輪のスイッチが押せるように準備した。
「思ったよりも速い!……3、2、1」
紫色の隕石を見上げながら、ジュラ紀に隕石が降ってきた時の事を思い出した。そして何か違和感を覚える。
「何だこの違和感……うわっ! 思い出している場合じゃない! 今だ!」
時空の腕輪を押して自分の時間を停止させた。
――次に意識が戻った時には、砂埃と熱気で何も見えない状態だった。
普通の人間では呼吸すら難しいだろう。
「ブラックホール!」
隕石が落ちたであろう中心部にブラックホールを生み出して砂埃を圧縮する。ブラックホールはすぐに消す。
視界が晴れると、更に巨大化が進んだ邪神と巨大なクレーターが現れた。
「コイツ、コメットを撃てる上に吸収まで出来るなんて……」
その時、隕石が落ちてきた時の違和感を思い出し、違和感の正体に気が付いた。
「そうか、コイツだったのか!」
ジュラ紀に降ってきた隕石には紫色のオーラに紛れて触手のような物が張り付いていた。
だが、先程の隕石にはそれが無かった。その違いが違和感として現れていたのだ。
「邪神はジュラ紀に隕石に乗ってやって来たってわけか。じゃあ、やる事は1つだけだ。宇宙にお帰りいただくとしよう」
宇宙に戻すことは決定だが、邪神は巨大すぎて難しい。細切れにして運ぶのも大変そうだ。
「うーん、どうしよう。こんなに巨大な相手だと、もう考えるのも面倒になってきた……全力で殴り続ければなんとかなるっしょ!」
俺は邪神に突撃した。
「全力ストレートパンチ!連打!」
邪神の巨大な壁に向かって殴りつける。邪神の肉が飛び散り、衝撃と熱によって蒸発霧散する。
「うおおおおお!」
オニヒトデのような邪神の巨大な足を1本消滅させることに成功した。
「次!」
次の足を殴り続ける。2本目もなんとか消滅させた。
「次! ……って、あれ? さっき消滅させた足が生えているような……?」
あんなに苦労して殴り続けたのに、再生されてしまった。
「こんなのどうすればいいんだ!?」
反則級の再生能力に頭を抱えてしまった。
「邪神を止める方法はないのか……」
《スキル:時空魔法ロールバックを取得しました》
「え!?」




