152 vsサタナブル<シリウス視点>
「余の名はシリウス。お主の攻撃は余には通じぬぞ」
「貴様の戯言など無意味。私のスキル【超速度】をもって反証としよう」
サタナブルとか言う魔王が突然視界から消えた。余の動体視力を超えるとはなかなかやるようだ。
「クリスタルシールド」
余の得意な防御魔法を展開する。
キキキキキキンッ
敵の姿は見えないままクリスタルシールドに衝撃とひび割れが生じる。
「余のクリスタルシールドに傷を付けるとは……だが、魔力を込めれば元通りだ。サタナブルとやら、次はどうする?」
「こうするつもりだ」
余が挑発の言葉を投げかけると、背後から声が聞こえてきた。
パリィン!ドドォン!
同時にクリスタルシールドが破られ、背後で爆発が生じる。
「余のシールドを破るか……余の身体に傷をつけるほどではないが、礼拝堂は崩れる可能性があるな。ならば戦場を移そう。ついて参れ」
礼拝堂を出て、人の居ない草原まで移動した。草原を選んだのは、サタナブルが隠れる場所を無くすという意味もあるが、余の高火力スキルを放つのに適した場所でもある。
「大人しくついてきたようだな」
「ふん、場所を移動したのは他からの邪魔を無くす為だ。貴様は仲間から離れた事を後悔することになるだろう!」
再度、サタナブルの姿が消える。
「多重クリスタルシールド!」
スピードでは圧倒的に余のほうが不利だ。相手が攻撃する一瞬を狙って反撃するしかない。
パリィン!
多重展開したクリスタルシールドが破られる。
「そこだ! ヘブンズレイ!」
余の放った光線が壊されたクリスタルシールドの方向を薙ぎ払うが、手応えが無い。
「その程度か。遅すぎてかすりもしないな。マグレでも当たるなどと思うなよ」
逆方向からサタナブルの声が聞こえる。
「やるではないか。しかし、お主の攻撃も余には通じていないのだぞ」
「ならば見せてやる。魔剣アガレス解放! 超速度制限解放! 超命中制限解放!」
禍々しいオーラがサタナブル自身と手に持つレイピアから放たれる。
「これは人化した姿では不味い! 人化解除! 多重クリスタルシールド!」
余が人化解除し竜化すると同時に、サタナブルの姿が消える。そして同時に脇腹に連続した衝撃と痛みが走る。
「グアアアアア!」
余のダイアモンドの鱗が一点集中で削られ、内部まで破壊されていた。かなりの速度と技巧と集中力が無ければ出来ない技だろう。
「ぐ……ヘブンズレイ!」
周囲をヘブンズレイで薙ぎ払うが、やはり回避されたようだ。
「まさかドラゴンだったとはな……少し驚いたが結果は変わらない」
そして、サタナブルから次の攻撃が来る。
「グガアアアア!」
これでは一方的にやられてしまう。
「ここまでやるとは……」
余の奥義レーザーブレスバーストを放つことも考えたが、ヘブンズレイが避けられるということは、奥義も避けられる可能性が高い。
余が対抗策を考えている間にも、次々と余の身体が破壊されていく。
「ウグ……ここまでか……」
余が万策尽きて諦めかけたその時、脳裏にコメットの姿が思い浮かぶ。
(フ……走馬灯にコメットが出てくるとはな)
そして、コメットが用意してくれた神殿の映像が流れる。
(あの家の寝心地は悪くなかった。む? あのキラキラと輝く球は……たしかセバスチャンの説明ではミラーボールという武器だったな)
そしてハッと現実に戻ってきた。
「余にもまだ勝機は残されていたか! クリエイトマテリアル!」
クリエイトマテリアルは鉱物を生成する土魔法だ。見様見真似でミラーボールを作り出し、上空に放り投げる。
「余の奥義を食らうがいい! レーザーブレスバースト!」
狙うのはサタナブルではなく、ミラーボールだ。
回転するミラーボールに反射したレーザーは拡散し、周囲全てを焼き切る。サタナブルの逃げ場はない。
ジュンッ!
身体を上下に分断されたサタナブルが地面に転がる。
「ば、馬鹿な! 私が負けるとは……」
「余にこれだけの傷を負わせたお主の事は覚えておいてやろう。レーザーブレスバースト!」
今度はサタナブルを狙って発射された巨大なレーザーはサタナブルの全身を貫き地面に染みを作った。
「思ったよりも苦戦してしまった。コメットも同様に苦戦しているかもしれぬ。コメットのもとに急ぐとしよう」




