151 vsマルコリウス<セバスチャン視点>
魔王マルコリウスの攻撃を私は真っ向から受け止めた。礼拝堂ではコメット様の邪魔になると考え、礼拝堂の外へ誘導する。
「あなたが私の相手ですか。たしか魔王マルコリウスでしたね。では私も名乗りましょう。偉大なるコメット様の忠実なる配下、セバスチャンと申します」
「そいつはご丁寧にありがとよ。だが、殺した相手の事はすぐに忘れることにしてんだ。悪いな!」
マルコリウスの黒斧が横薙ぎに一閃するが、セバスチャンに軽々と避けられる。
「ご心配には及びません。私が勝ちますので」
私は手に持った血剣でマルコリウスを袈裟懸けに斬った。肩から腰にかけて斜めに斬られ、普通の人間であれば致命傷だ。
「言うじゃねぇか」
マルコリウスは何事も無かったかのように返事をする。その証拠に袈裟懸けに斬った傷は既に消えている。
「あなたの身体はどうなっているのですか?」
「俺の身体がどうなっているかなんて考えたこともねぇ! とにかく突っ込んで斬れば終わりだ!」
有言実行。マルコリウスはただ突進し、私の血剣によって切り刻まれる。しかし、超回復によってすぐに傷は治りまた突進を繰り返す。
「オラオラ! どうした! もう俺の間合いだぜ!?」
マルコリウスが黒斧を振り上げる。そして、斧を持つ腕の筋肉は盛り上がり3倍ほどの大きさに膨れ上がる。
「超怪力アックスバースト!」
遅い。進化した私の運動能力であれば問題なく避けられる。紙一重で避け、血剣でマルコリウスの首を斬った。
「グハッ!」
だが、ダメージを受けたのは私の方だった。黒斧が地面を砕き、瓦礫と衝撃波に襲われたのだ。
そして、マルコリウスは自分の首を拾い上げ胴体に接合する。
「やるじゃねぇか! なかなか楽しめそうだ」
マルコリウスは獰猛な笑みを浮かべて黒斧の連撃を繰り出してくる。私は全てカウンターで相手の急所と思われる箇所を攻撃した。しかし、マルコリウスは超回復で元に戻る。私は衝撃波で少しずつ体力が削られていく。
(このままだと不味いですね……これは賭けに出るしかないかもしれません)
私は血剣を捨てて、無手となる。そして両手を大きく広げて相手を誘った。
「ほう、超怪力のスキルを持つ俺と力比べをしようってのか! おもしれぇ! やってやろうじゃねぇか!」
マルコリウスも同じ構えで突進して来る。そしてガシッと両手をつかみ合い、力比べの体勢となった。しかし、マルコリウスの超怪力に敵うはずもなく徐々に押し込まれていく。
「ふっふっふ……あなたならきっと誘いに乗ってくると思いましたよ。アルティメットドレイン!」
ヴァンパイアの得意技、吸血を極めた者にしか扱えないスキルである。私の両手からマルコリウスの血が吸収されていく。
「それがお前の秘策か! 俺の力がお前を砕くのが先か、お前の吸血が俺の血を吸い尽くすのが先か勝負ってわけだな!」
マルコリウスは険しい表情をしながらも力で勝つつもりのようだ。
アルティメットドレインは吸った血を自身の体力に変換し、回復することが出来る。バキボキと両手の骨が握り潰されるが、すぐに回復する。相手も超回復で血を作り出しているようだが、私の吸血量のほうが多い。
徐々にマルコリウスの力が弱まっていく。
「く、くそがああああぁぁぁぁ……ぁぁ……」
マルコリウスは全身の血を吸い尽くされ、ミイラのようになってしまった。私が掴んでいた両手を離すとゆっくりと倒れ、粉々に砕け散った。
「吸血量と超回復のどちらが強いか賭けでしたが、私の賭けが勝ったようですね」
私はコメット様に加勢するべく急いで礼拝堂に向かうのだった。




