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神像はシャルロットが持っている。俺はスティーヴンが動き出しても止められるように弱体化の装備を外して構える。
「セバスチャン! シリウス! 悪いけどそっちは任せたよ!」
「何も問題はございません。ブラッドインフィニティソード!」
「余も進化後の力を試すのに丁度よいわ!」
俺はスティーヴンと対峙する。スティーヴンは防御力が高い上に吹き飛ばすと前回のように逃げられてしまう。
そうだ、この前思いついた新技を試してみよう。
「新技をくらえ!ジェットウィンド右ストレートパンチ!」
スティーヴンの背後から強烈な追い風を発生させる。自分の背後にも同じように追い風を発生させる。
スティーヴンの逃げ道を塞ぎこちらに引き寄せつつ、俺は更に加速して右ストレートパンチを放つ。
「グハッ!」
スティーヴンは顔面を殴られ吹き飛びそうになる。しかし、ジェットウィンドを制御して更に引き戻す。
「もういっちょ!左アッパー!」
「グアアア」
左アッパーをお見舞いする。上空に打ち上がりそうになるところをジェットウィンドで地面に落とす。
「最後に踵落としだ!」
スティーヴンは最後の踵落としで地面に激突した。礼拝堂の床には一応土魔法で強度を上げておいたが、穴が空いてしまった。
しばらく待つが、スティーヴンは穴から出てこない。
「おーい、その程度で死ぬ訳がないことは分かってるんだぞ」
俺が穴に向かって声をかけると、ガラガラと瓦礫をどかしながらスティーヴンが出てきた。
「小僧……コメットだったか、やはりなかなか手強い相手だ。だが、邪神から力を譲り受けた私には通じないな」
「耐久力がいくら高くても、意味がないぞ」
「では、次はこちらから攻撃するとしよう。デス・エンチャント」
スティーヴンの手足が黒く染まった。
「この手に触れた者は一定の確率で死ぬ。今までの最高記録は10発だ。お前は何発まで耐えられるかな?」
「即死攻撃は反則だろ!?」
俺は不老不死ではあるが、即死無効のスキルを持っている訳ではない。即死すればどの程度で復活出来るのか未知数だ。石化の時のように何ヶ月、いや数年かかる可能性だってある。
スティーヴンが一気に間合いを詰めて来る。攻撃を回避することは容易だが、後ろにはシャルロット達が居る。避ける訳にはいかない。
「うおおおおお!」
スティーヴンの拳をギリギリで回避しつつカウンターパンチを合わせて相手の顔を狙う。
「かかったな!デス・エンチャントォ!」
スティーヴンの全身が黒く染まり、カウンターパンチを一瞬止めてしまった。デス・エンチャントで黒くなった顔を殴った場合、即死効果が発動する可能性があると判断したのだ。
「死ねえええええええええええええええ!!」
スティーヴンはその隙を見逃さず、数百発の連打を浴びせてきた。俺はなんとか回避しようと身体を捻ったが、ほとんどの打撃を受けてしまった。
(あ、終わった……)




