146
「おお! コメット君、どうじゃった?」
ザングドア学長が尋ねてくる。
「バッチリです! 作る方法が分かりました!」
「さすがはコメット君じゃな。次回の論文が楽しみじゃ」
「うーん。論文にしてもいいですけど、一般公開出来ない情報かもしれません。判断はザングドア学長にお任せしますね!」
「儂に!?」
論文にしろだなんて言うから、少し反撃しておいた。これくらいは許されるだろう。
「ここで合金を作ってしまおうと思うのですが、鍛冶窯を設置しても大丈夫ですか?」
ここは緑あふれるエルフの里だ、火を使ってもいいか一応確認しておく。
「指定の場所であれば構いません。ご案内しましょう」
リンドールさんに案内されて、里を出る。1時間程、森を歩いた。
「思ったより遠いんですね」
「もう少しです。ほら、見えましたよ」
綺麗な川と石で出来た遺跡が見える。
「あの遺跡で【大賢者の永遠】は発見されました。そこで作られた物なのでしょう。せっかくなので同じ場所で作ってみてはいかがでしょうか?」
どこで作っても同じかもしれないが、雰囲気が良く落ち着いて作業できそうだったのでここに決めた。
「ありがとうございます。ここで作ってみます」
「では、私は里に戻ってザングドア様を見張らなければいけませんので、失礼します」
案内してくれたリンドールさんは急いで戻っていった。ザングドア学長はトラブルメーカーだからなぁ。
「さてと、まずは遺跡を少し探索してみよう。何か手がかりがあるかもしれない」
遺跡は風化が進んでいて、かつて鍛冶窯があったであろう痕跡はあるものの、今では使い物にならない物ばかりだ。
「ハティ、お前の鼻で何か見つけられるか?」
肩に乗っているハティに聞くと、肩から飛び降りて勢いよく走っていった。ハティについていくと遺跡の一番奥、多分、祭壇らしきものの前で立ち止まった。
「ワオン!」
ひと鳴きすると、地面を掘り始める。
「ここに何かあるのか? よし、ちょっとどいてくれ。俺がやるから。ディグ!」
ハティを肩に乗せて、土魔法で掘る。すると、ハンマーらしきものが出てきた。
「ハンマーと金床? 鑑定」
【テムパスハンマー】
品質:B
絶対に壊れないハンマー。品質により一定時間が経過すると壊れる。
【テムパス製金床】
品質:B
絶対に壊れない金床。品質により一定時間が経過すると壊れる。
「おお、これはもしかして鍛冶用の道具じゃないか? これを使わせてもらおう。よくやったぞハティ!」
「わん!」
ハティは嬉しそうにしっぽを振った。これ以上は何も見つからなかったので俺は遺跡の入り口へと戻った。
「遺跡のすぐ近くに鍛冶用の小屋を作ろうかな。先のことも考えると広めのほうがいいか。圧縮ロックウォール4連!」
ズズーン!
俺を囲むように堅牢な岩の壁が出現した。
「ちょっと広すぎたかな? 学校の大きさくらいになってしまった。まぁ、いいや。屋根の圧縮ロックウォール!」
巨大な四角い箱が出来上がった。
「暗! しまった。明かりが必要だな」
とりあえず、入り口と窓をつける為の穴を魔法剣でサクッと開けていく。
「これで、少しは明るくなった。今度、ガラスを作って窓にしよう」
携帯用鍛冶窯を設置して煙突を外に出す。必要な道具一式を設置して、準備は完了した。
「オッケー。これで準備は整った! あとはテムパスメタルを作って時空魔法を付与するだけだな!」
この時、俺は大事な物を1つ忘れていることに気づいていなかった。




