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 外に出ると、エルフ達が集まってきた。


「あ! ザングドアおじいちゃんだ!」


 子供達が指差す。


里長(さとおさ)、来るのならば5年ほど前から連絡をしていただかなければ困ります。歓迎の準備も出来ないではないですか」


 ちょっとダンディーなエルフのイケメンが話しかけてきた。


 5年も前に連絡しなきゃいけないのか!? エルフとは時間の感覚が違うようだ。


()里長じゃよ。すまんのう、こちらにも事情があってな。かなり急いで来たんじゃ」


「事情とは、そこの人間に関係があるのですか?」


「そうじゃ。彼はコメット。魔法大学の特別顧問であり、ヴァリアス国王でもある」


「ヴァリアス国王!? これはとんだ失礼を致しました。私はエルフの里の里長をしております。リンドールと申します」


 リンドールは頭を下げた。


「コメットです。構いませんよ。知らない人間を警戒するのが普通でしょうから」


「お許しいただきありがとうございます。ところで、ここに来た用件をお聞きしても?」


「【大賢者の永遠】を見たいんじゃ」


 ザングドア学長が代わりに用件を伝えてくれた。


「本来は限られたエルフにしか見せられない物ですが。ザングドア様が言うのであれば信用しましょう。こちらへどうぞ」


 エルフの里は木々に囲まれており、人工物がほとんどない。しかし、隠蔽(いんぺい)の秘法などの高度な文明を持っているようだ。


 リンドールは木の根で出来た階段を登っていく。その先には巨大な木が見える。


「あの木が気になりますか? あれは世界樹ですよ」


「おおー! かの有名な世界樹!」


 思わず俺はテンションが上がってしまった。


「世界樹は有名なのですか?」


 リンドールは怪訝(けげん)な顔でこちらを見てくる。


「コメット君以外の人間にはほとんど知られておらぬはずじゃよ。コメット君がおかしいんじゃ」


 世界樹の根の階段を登りきると、世界樹の巨大な幹が目の前にあった。


「世界樹の精霊よ。エルフの長たる我が声に耳を傾けたまえ」


 すると、1つの光の玉が俺達の目の前に出現した。


「我が前に道を開きたまえ」


 リンドールが唱えると、光の玉が世界樹の幹に吸い込まれ、その部分に人が通れるくらいの横穴が出現した。


「この中に【大賢者の永遠】があります。どうぞ入ってください。ここには1人きりで入る()()()()となっておりますので、私達はここで待ちます」


 俺は真っ暗な穴の中に入っていく。


「暗くてよく見えないな」


 思わずつぶやくと周りの壁面がうっすらと明るくなった。


「音声認識……? 精霊がやったのか?」


 進んでいくと、それに合わせて周囲が明るくなる。そして、正面に縦横2メートルの巨大な金属製のプレートが現れた。


「これが……【大賢者の永遠】」


 そこには大賢者からのメッセージが書かれていた。


「『永遠とは何か? ここに永遠の謎を解く鍵を残す。謎を解き明かす者が現れることを望む』か」


「この金属は何だろう? 気になるな。鑑定!」


【テムパスメタル】

 品質:B。

 オリハルコンと魔隕鉄の合金。触媒(しょくばい)として長い時間変化のなかった物を添加(てんか)することで品質が変わる。

 時空魔法を付与することが可能。


「オリハルコンと魔隕鉄の合金だったのか。っていうか、時空魔法!?」


 時空魔法と言ったら最強の代名詞的なところがあるじゃないか。でも、誰が時空魔法なんて知ってるのだろうか。このプレートを作った大賢者は知っていそうだけど。


 そんなことを考えていると目の前に光が集まり、人の形になった。


「うおっまぶしっ!」


 光が収まると、そこには神秘的に光るホワイトブロンドの長髪、翡翠(ひすい)色をした目の美女が立っていた。


「始まりの子よ。私は世界樹の精霊です。あなたが来るのを待っていました」


 待っていた? 始まりの子とか言われたけど、今は無難に返事しておいたほうが良さそうだ。


「あ、はい」


「あなたの望みを叶えましょう。あなたの望みは何ですか?」


 これは大事な質問だぞ。池に落とした斧が金なのか銀なのかを答えるようなアレに違いない。


「えーっと、じゃあ、時空魔法です。このプレートに付与されている時空魔法を習得したいです」


 一番無難な普通の回答をしてしまったけど、大丈夫かな?


「……分かりました。あなたの願いを叶えましょう」


 世界樹の精霊が右手を開くと、その上の空間に光が集る。


「うおっ」


 光の玉は俺の脳天めがけて飛んできて衝突した。全く痛みはない。頭がスッキリと冴え渡り、時空魔法の付与方法を理解した。


「すごいな。こんな情報の共有方法があったなんて! むしろこっちを望んだ方が良かったか!? いや、ここは時空魔法が正解だな」


「時空魔法の全てを伝授しました。ただし、今は付与魔法以外にはロックがかかっています」


「たしかに付与魔法しか思い出せませんね。どうしてですか?」


「一度に全てを伝授すると、あなたの心身が耐えられないからです」


 なるほど、よく分からないが危ないところだったらしい。


「ですが、時空魔法を真に必要とした時、思い出すことでしょう。それではまた会えることを願っています」


 世界樹の精霊はすぐに姿が消えてしまった。


「すごい唐突に消えたな。もっと色々聞きたかったのに……」


 だが、時空魔法を覚えることが出来た。後はテムパスメタルという合金を作って時空魔法を付与するだけだ。


「携帯用鍛冶窯は持ってきたから、エルフの里で作ってしまおう」


 俺は来た道を引き返した。

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