141
数日後の早朝。
「ぎゃあああああああ!」
ドーンという音と共に、叫び声が聞こえてきた。
俺は地下に作った自室から全速力で現場に向かった。
「おお、神よ。我々に試練をお与えになるというのか!」
多分ミラーズらしき方々が、怪我人を手当している。どうやら風のくくり罠が発動したようだ。
周囲を見渡すと100人以上が採掘場を取り囲んでいる。
その直後、地面が盛り上がり戦闘用ゴーレムが現れた。
「な、なんだこいつは!?」
「倒せ! 神敵に罰を与えるのだ!」
カィン!
アダマンタイト合金のゴーレムに鉄の剣が勝てるはずもなく弾かれる。
「なんだ!? 剣がもうボロボロに。こいつの硬さはどうなってるんだ!?」
ピュンッ!
レーザー杖から発射されたレーザーが鉄の剣に当たると、剣はドロドロに溶けてしまった。
「熱っ!」
襲撃者達は持っていた剣の柄が熱くなり投げ捨てる。そして、次々に降参のポーズをする。
襲撃を無事に防いだと思われたその時、幹部らしき男が大声を上げる。
「神よ! 我らに力を与え給え!」
そう言うと、懐から何かを取り出した。鷹の目スキルで見えたのは、以前見たことがある【神の薬】だった。
「まずい!」
俺は瞬時に動き、薬を飲もうとした3人の意識を刈り取ったが、離れた場所に居た奴等を止める事は出来なかった。
「ウオオオオ! 全てを滅ぼセ!」
黒く変色した襲撃者達が戦闘用ゴーレムを殴りつけると、ゴーレムが大きく凹んだ。
「俺のゴーレムが! 絶対に許さないぞ!」
手のひらに火属性の魔力を圧縮させる。
「並列ヘルファイアレーザー!」
ジュンッ!
いくつもの炎のレーザーにより神の薬を飲んだ者達は一瞬にして黒焦げとなり、切断された。
神の薬で変化してしまった者達を調べれば、元に戻す方法は分かるかもしれないが、取り押さえるだけでも大きな危険が伴う。今は倒すしか手がない。
「ゴーレム隊長はまだ動けるな。残った襲撃者を全員縛り上げてくれ」
ゴーレム隊長は敬礼すると、他のゴーレム達に指示を出し、襲撃者達を縛り上げていった。
辺りを見回すと、いつの間にか採掘者やヴィンチ村の者達が集まってきていた。
「いやぁ、あんた凄ぇな!」
「本当に一人で全員やっちまったのか!?」
「コメット様、これはどういう……?」
村長が困惑気味に聞いてくる。
「秘密結社ミラーズという集団が採掘場を襲ってきたのです。でも、もう大丈夫だと思います」
「な、なるほど」
「村長にお願いがあります。ゴーレムを使って王都へ襲撃者を運ばせますので、村から付き添いを一人つけてほしいのです」
「それくらいのことであれば、分かりました」
「ゴーレム隊長、襲撃者を王都まで輸送してくれ。作業用ゴーレム達は設置した罠を解除して地下に集めておいてくれ」
後片付けや、説明を行っていると続々と大勢の人が採掘場に入ってきた。
王都からの商人や兵士だ。セバスチャンが派遣したのだろう。
「ヴァリアス陛下、お初にお目にかかります。商人のヴィケです。ご命令の通りに採掘道具や衣類、生活用品を運んでまいりました」
「いいですね。パンツがないと困っている採掘者も居ましたから、売ってあげてください」
「承知しました」
俺はそろそろ王都に戻ろう。
何故なら、数日前に送り出したハティが帰って来ないのである。
ハティはLV180であり、高速移動のスキルも持っている。王都との往復にここまで時間がかかるはずがないのだ。
そんな事を思っていると空飛ぶ箱が王都方面から飛んできた。
箱は俺の目の前の空き地に降りると、中から出てきた人物が俺のところまで走ってきた。
「ご主人様、大変でございます!」
城でたまに見かけるメイドだった。
嫌な予感がする。
「セバスチャン様が謀反を起こしました!」
謀反って何だっけ?たしか臣下が、君主にそむいて兵をおこすことだったっけ。
「ええええ!? セバスチャンが謀反!?」
そんな馬鹿な事が起こるはずがない。あれだけ忠実な男が、謀反だなんて。
「まさか、働かせすぎた……?」
「いえ、セバスチャン様は神の薬を調査に出かけて、帰ってきたら既に様子が変でした」
「とにかく城に戻ろう。俺がなんとかする!」
「承知しました」




