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採掘場所は混沌としていた。
「ここは俺が掘ってんだ!お前はあっちに行きやがれ!」
「少し便所行ってただけだ!俺が先に掘ってたんだぞ!」
「ツルハシが折れたーーー!」
「パンツが破れたああああ!」
「オリハルコンが出たあああ!うわ!何をする!泥棒ーーー!」
「……ハティ、欲に目が眩むとこうなってしまうんだ。気をつけような」
「ワフン!」
俺は適当な場所を決めて、手をかざす。
「ディグ」
人が1人通れる程度、下り坂の穴を地面に開けた。そして、穴の中に入る。
「アースウォール」
空気穴だけを残して、穴を塞ぐ。
「ライト」
新しく習得した光魔法で周りを照らす。
「光魔法っていいなぁ。火を使わないから酸欠にならないし、昔の鉱夫は明かりの為に火を使って煙だらけになってたらしいからね」
健康にも悪そうだ。適当に鑑定しながら歩く。
「鑑定」
【鉄鉱石】
鉄の原料となる鉱石である。
【黄鉄鉱】
鉄と硫黄からなる硫化鉱物の一種。立方体が集まったような形。火打ち石として利用可能。
【自然銀】
銀の鉱石鉱物として、ひげ状、樹枝状などの形態で産出する。表面は空気に触れると黒く変化する。
「へぇ〜銀って自然界にあるものは黒いんだ」
そんな発見をしながらも進んでいく。
「鑑定」
【オリハルコン】
伝説の金属。別の金属と合金化することで様々な効果を発揮する。
俺は持ってきた袋からアダマンタイト製のハンマーとタガネを取り出す。オリハルコンの周りの岩を丁寧に削るとボコッとオリハルコンを採掘することが出来た。
「おおー、これが夢にまで見たオリハルコンか。もっと探してみよう」
久しぶりのブランチマイニングで見つけた金属を片っ端から採掘していった。
「ふぅー、割と採れたな。ハティもご苦労さま」
「わん!」
ハティには大型犬のサイズになってもらい、金属を運んでもらっている。
「ほとんど鉄だけど、金や銀、ミスリル、少量のオリハルコンも採れたな」
宝石類もいくつかゲット出来た。
あ、そういえば呪牙島に採掘部隊を派遣する事を忘れていた。帰ったらセバスチャンに依頼しておこう。
「そろそろ帰ろう。ハティ行くよ」
「わん!」
「ディグ」
埋めてあった入り口を掘って外に出ると、夜になっていた。他の冒険者や鉱夫達はまだ頑張って掘っているらしく、松明や焚き火がチラホラと見えた。
夜の暗さで多分見られていないはずなので転移の指輪でイノセントダンジョンのマスタールームに転移した。
「こんばんは、イノセント」
「おかえりなさいませ、コメット様」
相変わらずの美少年が出迎えてくれた。
「ここのベッドを使わせてもらうついでに、ダンジョンへの魔力供給をしに来たよ」
「ありがとうございます。ベッドはご自由にお使い下さい」
俺はイノセントに8割程の魔力を提供した。今から寝れば翌日には全回復するからだ。
「ダンジョン運営の調子はどう?」
「現在、10階層までたどり着いた冒険者が確認されています」
「10階層というと、ボスが居る階層だな?」
「はい、その通りです。まだボスであるオークキングは討伐されておりませんが、直に討伐されるものと推測します」
「そっか〜、討伐報酬として何か宝箱とか用意した方がいいかな?」
「宝箱の中身さえ用意していただければ、宝箱に入れて配置致します」
宝箱の中身か、どうしようかな?11階層以降に役立つ物がいいよな。
魔法剣はオーバースペック過ぎるし、回復薬は地味だよな。バランスが難しい。
ミスリルの剣とかでいいか。
「鍛冶窯とか用意出来る?」
「いただいた魔力を少し消費しますが、可能です」
「じゃあ、お願い」
マスタールームに新しい扉が現れる。
「こちらです」
新しい扉の中に入ると鍛冶に必要な道具、設備一式が揃っていた。
「どうやったの?」
「私には答えられません」
まぁ、いいか。今日採れたミスリルで最高品質のミスリル剣を10本ほど作った。
「この剣を宝箱に入れておいて」
「承知しました」
イノセントは剣を受け取ると、部屋の外へ出て行った。
そろそろ寝るとしよう。ベッドに腰を下ろす。
「ハティ、明日は何をしようか?もう一度オリハルコンを採掘してみようかな?」
「わんわん!」
ハティが尻尾を振っているのでオリハルコン掘りに決定した。




