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 領主の家かと思うほど立派な建物がそこにあった。


「ごめんくださーい」


 敷地の門は固く閉ざされている。


 メキッ


 少し力を入れると門はひしゃげて通れるようになった。


「入りますよー」


 玄関に向かって歩いていると、マフィア達が慌てて出て来て、俺達を取り囲んだ。


「お前達、ここが【チェアーズ】ファミリーの敷地だと分かって入って来たのか?」


 後からやって来た幹部らしき男がこちらに尋ねる。


「いいえ、知りませんでした。あんた達が【チェアーズ】だなんてダサい名前だったなんてね」


「なんだと!?」


「やっちまえ!」


 下っ端達が襲いかかってくる。上司が何も合図していないのに動き出すなんて教育がなってないな。


「ダーク」


 下っ端達の頭に闇が(まと)わりつく。


「何も見えない!何が起こったんだ!?」


「痛っ!敵か、この野郎!」


「あいたたた」


 同士討ちを始めた下っ端を放っておいて、幹部に歩み寄る。


「さて、お前には家の中を案内してもらおうかな」


 幹部は一瞬ブルっと震えた後、大人しく頷いた。


「こちらです」


 本部建物に入ると、武装した10人の者達が並んでいた。案内した男は本部の奥へ逃げて行った。


「ようこそ、我らが【チェアーズ】本部へ」


 武装した連中の真ん中に居る男がお辞儀をした。


「どのような用件でしょうか?」


「蒸気バイクの設計図を取り返すついでに悪党を壊滅させようと思っただけなんだけど」


「ここには設計図とやらも悪党も居ませんのでお帰りいただけますか?」


 言葉は丁寧だが、その男の殺気が膨らみ圧力をかけてきているのが分かった。


「じゃあ、神の薬はここにあるよな?」


 武装した集団の空気が変わった。


「神の薬についてどこで知った?正直に話せばお前達を無事に返してやる……」


 この雰囲気は、きっと正直に話したところで解放されることはないだろう。


「質問に質問で返すのはどうかと思うよ」


「ならば、答えてやろう。神の薬ならばここにある」


 男は内ポケットから神の薬らしき物を取り出すと大きな口を開けて放り込んだ。武装集団も同様に薬を飲んでいく。


 男は始めに眼が全て黒く変色し、次第に全身が黒く変色していった。そして、全身の筋肉が盛り上がり、まるで人型の魔物のようにも見えるような姿になった。


「コれが神の薬だ。オ前達は終わりダ」


「セバさん、シリさん、手加減したらこちらがやられるかもしれません。全力でやってしまいなさい」


「承知しました」


「良かろう」


 シリウスはクリスタルドラゴンの姿に戻り、光魔法ヘブンズレイを放つ。黒い武装集団の内、1人に当たり蒸発した。だが、それ以降は狙いを読まれ当てることが出来ない。


「シリウス、彼らは光を避けているわけじゃないですよ。撃つ瞬間の視線で方向を読んでいるのです」


 セバスチャンがシリウスに助言をする。


「それくらい余にも分かっている。今対策してやろうと思っていたところだ」


 シリウスが言い繕って明後日の方向を向く。そしてそのままヘブンズレイを撃った。


「ナ、ナに!?」


 今度はヘブンズレイが直撃し、武装集団の一人が蒸発した。


「では、私もコメット様の役に立つとしましょう。ブラッドサウザンドスピア!」


 セバスチャンの手から血が流れ出したと思った瞬間、無数の槍となって敵を貫いた。武装集団は完全に鎮圧された。


「さすがセバスチャン、シリウスもよくやった」


「余の力を持ってすれば造作もない」


「コメット様、マフィアのボスの部屋はこちらです」


 セバスチャンが案内を始める。


「ボスの場所まで調査済みとはやるねぇ」


「恐縮です」


 2階に上がり、豪華な廊下が伸びた先に大きな両開きの扉があった。扉の両脇には見張りらしき男達が立っている。


 一瞬で距離を詰めて首トンで気絶させる。ついでに神の薬とやらも回収する。


「この扉か」


「左様でございます」


 扉を開けると、マフィアのボスは食事中だったようだ。


「誰だお前達は、見張りはどうした?」


「俺達はただの国王と側近です。見張りはそこで寝てますよ」


 マフィアボスは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑い出した。


「ハッハッハ!面白い冗談だな。腕自慢なのは分かった、俺の部下にしてもらいに来たのか?」


 何かを勘違いしているようだ。


「いや、本当に国王なんだけど……蒸気バイクの設計図を取り返しに来た、と言えば分かるかな?」


 マフィアボスは真剣な顔になり、近くに置いてあった剣を手に取った。


「その事を知っているということは本当に国王なのか……もしくは王に雇われた暗殺者か。どちらにせよ、生かしては返さん」


 マフィアボスは薬を取り出すと口に放り込もうとする。しかし、俺は瞬時に接近し薬を奪った。


「お、おいこら!返せ!……ぐぁっ!」


 うるさいので首トンで気絶させておいた。


「セバスチャン、シリウス、設計図の回収とマフィアの後始末は頼んだよ」


「承知しました」


「うむ、任せておけ」


「設計図の場所はこいつに聞けばいいだろう」


 セバスチャンにマフィアボスを引き渡す。こうして、マフィアとの戦いは幕を閉じた。


 だが、謎が残る。俺は神の薬を手に取る。


「鑑定」


【神の薬】

 €℃“¥¿℃‡:±°¢‡°‥№……


 訳が分からない文字が並んでいるだけだった。言語理解のスキルを以ってしても解読不明な文字とは一体……。

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