134
ダンジョンを作った次の日、セバスチャンに相談することにした。
「セバスチャン、王都の西にダンジョンを作ったんだ」
「ほう、それは宜しいですな」
「そのダンジョンでは魔石が大量に取れるようにしたから、冒険者に対して宣伝をお願いしてもいい?」
「承知しました。お任せ下さい」
これで、ダンジョンは賑わって、国が潤うことだろう。
「ところで、以前コメット様の設計図が盗まれたことを覚えておいででしょうか?」
「……あ!そういえば、そんなこともあったな」
「はい、その盗んだ犯人が見つかりました」
「犯人は?」
「犯人はシャトラインのマフィアでした。2年程前に結成された比較的新しい組織ですが、急速に成長しているようです」
「そいつらは何故設計図を盗んだんだろう?それにあの異常な身体能力も気になる」
設計図を盗んだ男はコメットから逃げ切るほどの身体能力を持っていた。
「理由は金を手に入れる為だと推測出来ます。マフィアは蒸気バイクを販売し巨額の利益を得ています」
他人のアイデアで儲けようだなんて許せないな。
「また、神の薬と呼ばれる怪しい薬も販売しているようです。神の薬を飲んだ人間は身体能力が劇的に上がる、もしくは魔物に変異すると噂されています」
「オカルト集団みたいな側面もあるのか。だけど、もし薬の効果が本当だったら恐ろしい事だね。マフィアの居場所と薬について調べてくれ」
「承知しました」
マフィアと神の薬については気になるけど、場所が特定されるまでは何も出来ない。
俺は転移の指輪を使ってイノセントダンジョンへ飛んだ。
「こんにち「わん!」」
今回はハティも一緒だ。
「イノセントは居るかい?」
「はい、ここに居ます」
奥の部屋から美少年が現れた。
「もうダンジョンは出来上がった?」
「はい、今は微調整をしておりますが、ほぼ出来上がりです」
「そうか、じゃあ俺がテストしてみてもいいかな?」
「ええ、いいですよ。転移の指輪の転移先にダンジョン入り口を追加しておきましょう」
お許しが出た。自分のダンジョンを試してみたかったんだよね。
ダンジョン入り口に転移する。ダンジョン入り口は塔の扉だ。
サンプソンの指輪と弱化のネックレスは装備済みだ。塔の扉を開けると、地平線まで草原が広がっている。
後ろを振り返ると塔があり、扉が見える。塔に入ったはずなのに塔の外に居るような不思議な気分になる。草原は広いから迷子になりがちだが、塔のおかげで帰る場所は分かりやすい。
塔には扉が2つあり、扉には『出口』『2階』と書かれている。
「そうか、2階に行きたければここを登ればいいのか。これは楽でいいな!」
扉の確認を終え、草原を適当に走る。すると、スライムが現れた。試しに蹴って倒すと小さな魔石をドロップした。
「いいね〜、ちゃんと魔石がドロップされるぞ」
周囲を探索すると、ゴブリンやホブゴブリン、オークなど初級の冒険者にうってつけの魔物が現れた。
しかも、通常ゴブリンは群れで現れるが、1匹ずつ出てくるので初心者にはちょうどいいだろう。
塔から離れると敵が強くなってくる。ゴブリンマジシャンやオークアーチャーなどの遠距離攻撃を得意とする魔物が現れるようになった。しかし、それも1匹ずつの親切設計だ。
「2階に行ってみるか」
塔に戻り、2階への扉を開けると螺旋階段があった。螺旋階段を上ると行き止まりに扉がある。扉を開けると森だった。
「2階は森のステージか」
2階は1階に居た魔物達が群れで居るようだ。3階に上がってみた。
「3階は洞窟か」
どんどんと上っていくと、48階まで来た。
「48階は地獄か」
針山や燃える山、氷の山などが点在している。それぞれの場所に強力な魔物が潜んでいるようだ。遠くから見て分かる範囲でも身長10メートルもありそうな巨人が歩いている。
倒すことは出来るけど、せっかく生み出した魔物が勿体ないのでそのままにしておく。
「49階に行こうかな〜。ん?何か書いてあるぞ」
『これより先に入るべからず。命を捨てる覚悟のある者だけ進め』
ここから先は未知の領域のようだ。
「ハティ、行ってみるか?」
「わん!」
ハティが行きたがっているので、行ってみることにした。49階の扉を開ける。
「ここは……」
そこはまさにコメットがかつて住んでいた時代、ジュラ紀の恐竜たちの世界だった。
「懐かしいなぁ!」
恐竜達が我が物顔で闊歩している。そして苛烈な生存競争が繰り広げられている。
「俺の魔力を使ったせいで、記憶の中のジュラ紀が再現されたのだろうか?」
「くぅん?」
ハティが動こうとしないコメットを見て不思議そうな顔をしている。
「ごめん、ハティ。久しぶりのジュラ紀を散歩しようか!」
冒険者達がこの風景や恐竜を見たらどう思うだろうか?
まぁ、大型の恐竜は高レベル過ぎて一般の冒険者じゃ手も足も出ないだろう。
「テイムしたら連れ帰ることは出来るのかな?さすがに無理か」
少し散歩してジュラ紀を堪能してから転移の指輪で帰還した。




