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街を蒸気バイクや蒸気車が走り回っている。そこは特に問題ではない。問題は街の上空である。
街の上空には謎の箱が大量に浮かび行き来していたのだ。
「え?何がどうなってるの?近未来なの?」
急いでセバスチャンから説明を聞かなければならない。
「俺はセバスチャンに話があるから先に行きます!ジュエルゴーレム達は城に運んでおいて下さい!」
全力で走り、城に着いた。
「セバスチャーン!」
「はい、お呼びでしょうか」
さすがセバスチャン。帰ることすら伝えていないのに、この反応の速さ。
「旅から帰ったら、箱が空を飛んでるんだけど!?」
「ああ、アレですか。アレはヘロン博士と魔法大学学長のザングドア様が共同で開発した乗り物だそうです」
犯人はザングドア学長だったのか!
「ザングドア学長は今どこに?」
「城の上を飛んでおりますよ」
城の上を見ると、大きな四角い箱が飛んでいる。これは、たしか魔法大学のザングドア学長の部屋……?
「ありがとうセバスチャン。ちょっと行っってくるよ。ウィンド!」
空を飛んで学長の部屋をノックする。
「誰じゃー?ヘロン博士かのう?」
「違います。コメットですよ」
「おお、コメット君か。そう言えば君は空も飛べるんじゃったかのう。いつまでも飛んでないで部屋に入りなさい」
「ザングドア学長、街の空を飛んでいる箱を開発したと聞いたのですが」
「そうじゃよ。ヘロン博士が蒸気機関というものを開発したと聞いて見てみたら、魔力を熱に変換して、更に動力に変換しておったんじゃ。効率悪いじゃろうが」
なるほど、良かれと思って蒸気機関を教えたつもりだったけど、この世界にはこの世界の発展の仕方というものがあるんだな。
「それで、魔力から風魔法に変換して空を飛んでいる訳ですか」
「ふぉっふぉっふぉ、そういうことじゃ!」
「変換効率はたしかに良いかもしれませんが、消費する魔石の量はかなり多くなるのでは?」
「ぬぐっ……よくそれに気づいたのう。単純に魔石さえ大量に手に入れば解決するのじゃが」
「魔石は魔物を倒すしかないですからね」
「そういうことじゃ。今は冒険者に依頼して魔石を集めさせたらどうかと思っておる」
「元々魔石は買取してましたから、どれだけ増えるか微妙ですね。こちらでも、考えてみますね」
「そうしてくれると助かるわい」
俺の用事は済んだのでザングドア学長の部屋を去った。
自室に戻り、どうするか考える。
「大量の魔力だったら俺が持ってるんだけどな〜。魔石として取り出せればいいんだけど」
考えながら部屋の中をぐるぐると歩き回る。歩きながら考えると良いアイデアが湧いたりするものだ。
「無限のエネルギーを取り出せるクリスタルコアがあれば解決したかもしれないのにな……」
クリスタルコアか……コア……?
そういえば昔、コアを手に入れたことがあるような……。
「あっ!ダンジョンコア!もしかして、ダンジョンを作れば魔石取り放題なのでは!?」
良いアイデアを思いついた俺は早速取り掛かることにした。
あ、その前にクリスタルドラゴンの神殿作りとジュエルゴーレムの配置を決めなきゃいけないのか〜。
クリスタルドラゴンが城に到着する前に作っておいたほうがいいだろうな。というわけで、久々の神殿作りを行った。広さを今までのドラゴンの神殿よりも広くして、ジュエルゴーレムを配置できるようにした。
ジュエルゴーレムの光魔法を有効に使えるように、鏡やレンズを配置してみた。もし敵の侵略があっても、光魔法を鏡で反射させて柱の影も狙い撃ちできてしまうという寸法だ。
ついでに遊び心でミラーボールも設置して、パーティーも開催出来てしまう素晴らしい神殿が出来上がった。
「ついついやりすぎてしまった。クリスタルドラゴンに怒られる前に逃げよう。セバスチャーン!クリスタルドラゴンに神殿を案内しておいてね!」
「畏まりましたー!」
遠くからセバスチャンの返事があった。これでよし。
次はダンジョンを作ってみよう。




