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「リーダー、この島大丈夫?」


 ルネは多分、呪牙島に上陸しても問題ないかを尋ねているのだろう。


「硫黄の匂いがしますね。二酸化硫黄や硫化水素が発生しているのでしょう」


「にさんかいおー?この匂いがそれなのかニャ?」


「そうですよ。有毒ガスですから気をつけてください」


 船は島から少し離れた場所に錨を降ろして固定する。島には小舟で行く必要がある。座礁船の下には挫傷した原因となった岩があるはずだからだ。大きな船で進めば同じ様に座礁するだろう。


 皆で小舟に乗り、少し進むと見えない壁にぶつかった。


「見えない壁?」


「もしかして、これが獣王の言っていた封印ですか?」


 アンナが壁に手を当てている。


「アンナ、この見えない壁を【獣王の大剣】で斬ってみてください」


「やってみます」


 アンナが【獣王の大剣】を構える。


「えいっ!」


 大剣を縦に振る。すると、先程までの見えない壁に当たること無く振り切った。その後、手を当てても見えない壁は無くなっており、小舟は進むことが出来るようになった。


 見えない壁があった場所から500メートルほど進むと無事海岸にたどり着いた。


「有毒ガスの対策をしておきましょう。ウィンド!」


 俺は島全体を覆っているガスを風魔法で吹き飛ばした。


「コメットさん、力技ですね」


「急いでいる時は仕方がないのです」


「リーダーはいつでも力技……」


「ぐっ……何も言い返せない……」


 有毒ガスを吹き飛ばすついでに、風魔法で空気を圧縮する。それを多数作っておく。即席の酸素ボンベとして使えないかと思ったのだ。


「さぁ、進みますよ!」


 進んでいると、牙のように生えている岩の近くを通ったので試しに鑑定してみた。


「鑑定」


【魔隕鉄の塊】

 魔力を多量に含む隕石の塊。周囲の魔力を集める能力がある。どんな属性とも親和性が高い。非常に希少。


 な、なんだってー!これめっちゃお宝じゃん!魔隕鉄で武器とか作り放題じゃないか!


 ……はっ!いかんいかん、よだれが出てしまっていた。


「この周囲にある牙のような岩はとても希少な魔隕鉄です」


「とても希少!?高く売れるのかニャ!?」


「希少すぎて売ろうとしても価値が分からないんじゃないですかね?」


「残念ニャ」


 島の中心、火山の方向に進むと、火山の中腹に大きな口を開けたドラゴンを模した石門があった。


「あの門が入り口のようですね」


「嫌な予感がします!一旦引き返しませんか!?」


「マルクはいつもそう言う」


「そんなこと……ありますけど!今回はいつもと違うんです」


「マルク君、覚悟を決めて行くしかないですよ」


「……はい」


 なんとかマルク君をなだめて入り口にたどり着く。入り口の近くには溶岩の川が流れていて、肌が焼かれるような熱さを感じる。


 俺は念の為に魔法で圧縮してあった空気を入り口に流し込む。火山の洞窟に毒ガスが溜まっている可能性があるからだ。


「よし、入りましょう」


 洞窟に入るとすぐに下りの螺旋階段となった。長い階段を下り続ける。


「この階段、まだ続くんですか?僕もう精神的に限界です」


 マルク君が弱音を吐くほど下り階段は続いていた。


「そろそろ終わりのようですよ」


 螺旋階段の先から明かりが漏れている。


「本当だ!僕達助かったんだ!」


「マルク君、俺達は遭難してたわけじゃないですし、この先ももっと酷い場所かもしれませんよ」


 階段の終わりには通路があり、通路を進むとかなり広い空間に出た。


「うっわー!何ですかこれ!?凄いです!」


 アンナがオーバーリアクションで驚いているが、今回はオーバーとは言えないかもしれない。


 眼前には虹色に輝く巨大な宝石類が無数に在った。サファイアやルビー、エメラルドなどありとあらゆる種類の宝石があるのではなかろうか?


「これは……凄いですね。しかし、全く荒らされた形跡がない。ここまで辿り着く者が居なかったのでしょうか?」


「あの階段が嫌になって引き返したに違いないですよ」


 マルク君はそう言うが、果たしてそうだろうか?ここまで来て階段ごときで引き返すとは思えない。


「リーダー、あれを見て」


 ルネが指差した方角を見た。


「……何か動いている?」


 宝石がゴトゴトと動いている。宝石の山が更に高くなったかと思うと、中から虹色のゴーレムが現れた。と同時に、俺達が入ってきた入り口が岩で塞がった。


 更に、他の場所でも次々とジュエルゴーレムが発生している。


 俺は震えて一歩も動けない。1体のジュエルゴーレムがこちらに突進してくる。


「コメットさん!何してるんですか!?ゴーレムが来てます!」


 俺は思わず呟いてしまった。


「か、かっこいい……」


 その後の事はあまり覚えていない。気づいたら、全てのジュエルゴーレムをテイムしてしまっていた。


「リーダー、やりすぎ」


「すみません、反省してます。ほら、お前達も謝ってください」


 ジュエルゴーレム達が土下座する。


「いや〜、このゴーレムだけでもここに来て正解でした!とりあえず、お前達はここで待機してください」


 ジュエルゴーレムはここで待機させておく。大事なコレクションが壊れたら大変だからね。


「コメットさん、あちらに下に続く道があるようです」


「私が見つけたのニャ!」


 ナビが先に続く道を見つけたようだ。


「じゃあ、その場所に行ってみましょう。マルク君そっちは入り口ですよ」


 皆で下に続く道に向かうと、険しい洞窟だった。


 溶岩によって出来上がった洞窟、溶岩洞である。溶岩石は鋭く尖っており、転んだら一般人は間違いなく怪我をするだろう。俺はVITが高いので心配はないが、ルネやマルク君は怪我をするかもしれない。


 洞窟はどこまで行っても終わらないので、その日はそこでキャンプとなった。


「ゴリマグロとゴリホタテの刺し身盛合せです。塩とわさびでいただきましょう」


「これを待ってたのニャ!」


 ナビは大好物だったようだ。


「リーダー、これも料理して」


 ルネに渡されたのは……


「これはゴリナラタケの一部……?」


「そう」


「じゃあ、火で炙ってみますか。ファイア」


 良い感じに焼けたゴリナラタケをルネに渡した。ルネは焼いたゴリナラタケを一口で食べるとプルプルと震えた後、感想を述べた。


「これ最高」


「予想外でした。ゴリナラタケって美味しいんですね」


 てっきりマズイのかと思った。巨大なキノコだったし、見た目も微妙だったからね。こんなに美味しいのなら帰りは必ず持って帰らなければいけないな。


 美味しい夕食も取ったし、魔法で作った風呂にも入った。明日は目的のクリスタルドラゴンに会えるといいんだけど、と思いながら眠りについた。

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