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「ドーベルマン風の犬獣人いいなぁ。ヴァリアスの警備兵として欲しい……」
いくら欲しくとも他国の衛兵は貰えないので諦めた。
「よくついて来られましたね。ここが獣王様の城です」
大きな城だ。美術的な装飾は少なく、豪快さと堅牢さが際立っているように思った。
ヴァリアス城より大きい為、万が一セバスチャンに見せてしまったらヴァリアス城の増築が始まりそうだ。
城に入り、謁見の間に入った。王の前で片膝をつき頭を下げる。今回は冒険者として来ているので、礼儀正しくするべきだろう。
「コメット殿、いや、ヴァリアス王よ。立ってくれ。我らは同盟国同士ではないか」
「今回は冒険者として来たのですが、さすがにバレましたか。俺のことはコメットと呼んでください」
「では、俺の事はゴリラスと呼んでくれ。この国では強き者が正義だ。俺もこの腕力で王になったのだ」
ゴリラスはゴリラ獣人だ。見た目からして強そうである。
「ここセンターリンゴルには円形闘技場があるんだが、今度ゴリンゴル獣国のナンバーワンを決める武闘大会があるのだ。是非見学していってくれ。自信があるのなら参加してくれても構わないぞ」
「優勝すると何か貰えたりするのですか?」
「さすがオリハルコン級冒険者。優勝する気でいるようだな!気に入ったぞ!もしも優勝したら、国宝【獣王の大剣】をくれてやろう」
「獣王様!【獣王の大剣】は代々獣国に受け継がれてきた剣ですぞ!」
大臣らしき家来が獣王に進言するが、獣王の気持ちは変わらないようだ。なにやら凄そうな剣がもらえることになってしまった。
「今のアンナの得意武器は両手剣でしたよね?」
「そうですけど……まさかあの剣をアンナが使うんですか?」
「うん、アンナに似合うと思うから大会頑張ってください」
アンナは元々片手剣を得意としていたが、STRが高くなり、両手剣を好むようになったらしい。
「に、似合いますか?……じゃあ、頑張ります!」
どうやらやる気になったようだ。
「どうだ?コメット殿、やる気になったか?」
「はい、うちのパーティーメンバーのアンナ、ルネ、マルクが挑戦します」
「コメット殿が挑戦するのではないのか?」
「はい、俺が出ても(簡単に勝てそうだし)面白くないですからね」
「そうか、謙遜しなくとも良いと思うのだが……パーティーの者達もなかなかやるようだな!期待しているぞ!」
そんなこんなでゴリンゴル獣国の武闘大会にパーティーメンバーが出ることになった。どんな戦いになるのか楽しみだ。
夜はゴリラスの提案で歓迎の宴となった。獣国の料理はやはり野性味あふれる味だった。
その日は城にある来客用の部屋に泊まらせて貰った。貴族用に用意した部屋なのか、そこそこ豪華な造りの部屋だった。
明日はセンターリンゴルを観光しつつ、武闘大会に出そうな獣人を探してみようかな。




