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「採ってきましたよ。最高級マタタビ」
「おおおおお!これじゃ!これを待ってたんじゃ!」
老いた猫獣人とは思えない速度で飛びついてくる町長。このままでは会話にならない為、最高級マタタビを隠す。
「おおおお、何故隠すんじゃ!わしの最高級マタタビがー!」
「落ち着きなさい!そんな状態では話になりません。帰りますよ?」
ちょっと脅かすくらいの勢いで言ってみた。すると町長は土下座し、涙を流し、引くほど懇願してきた。
「一生のお願いですじゃ。そのマタタビをくだされ!あなた様の下僕となりますからー!」
あまりに不憫なので最高級マタタビを渡してあげた。
「〜〜〜〜〜!!」
町長は声にならない叫びをあげ別世界にトリップしてしまったようなので、何も見なかったことにしてそっと町長の家を出た。
「さ、銭湯も作ったし、買い物してのんびりとしましょうか!」
「そ、そうですね」
「町長の依頼なんてなかったんだ……」
マルク君……?何か思うところであったのだろうか。
「ボクはきのこを買いに行きたい」
「分かりました。では、市場に行きましょう」
コメットは何十億年と食べずに過ごしたせいで食に対する関心が無かった。だが、人と接するようになり、少しずつ意識が変わりつつあった。
「一応、料理スキル10だし、銭湯の客寄せに何か料理でも作ろうかな?」
「それいいですね!」
「きのこ料理……イイ」
アンナ、ルネは賛成のようだ。
「……」
マルク君は黙秘権というスキルを身に着けたようだ。
「じゃあ、マルク君は大量に肉を買って来てください。アンナは野菜、ルネはきのこをお願いします!」
「「了解!」」
「何も言わなかったのに仕事が増えたー!」
マルク君は社会の厳しさを味わったようだ。
俺は銭湯に行き、お食事処とキッチンを作成する。ついでに魔石で動作する冷蔵庫も完備。
「料理は何がいいかな?獣人が好むのは肉だよな。そうだ!シシカバブにしよう!ハティもそれでいいかい?」
「ワン!」
シシカバブ屋を銭湯の中に開いた。エールとシシカバブをお風呂の後に飲んで食べる。良いかもしれない。未成年には勿論、コーヒー牛乳を用意してある。
「コメットさん〜!お肉買って来ました!」
「なかなか良い肉を買ってきましたね!これの3倍の量を追加で買ってきてください。荷物持ちにハティも連れて行っていいですよ」
「ええええぇぇぇぇ!」
ハティに咥えられてマルク君は市場に戻っていった。その間に串を用意する。
「「ただいま〜」」
アンナとルネが戻ってきたので、本格的にシシカバブを用意して焼く。アンナとルネは銭湯の外で看板娘として宣伝してもらう。
「今日のシシカバブは無料にしますから、お客さんを沢山連れてきてください」
「「了解!」」
肉を焼いていると大勢の獣人が銭湯に入ってきた。
「へぇ〜銭湯も初めてだけど、この料理も食べたことないな。美味しそうだ」
「人族の料理なんてたかが知れてるだろ」
色んな感想が飛び交っている。
「皆さん!今日だけ無料ですよ!どんどん食べてってくださーい!」
シシカバブを食べた獣人達は美味しさに驚き、おかわりを欲しがった。
「シシカバブってのは香辛料が美味いんだな!エールに合う!」
「このエールはキンキンに冷えてやがる!」
「コーヒー牛乳って美味しいねぇ」
大盛況でマルク君の追加の肉が無ければ暴動が起こるところだった。ありがとうマルク君。ハティに引き摺られてボロボロだけど、良い顔で倒れているからヒールはしないでおくよ……。
アンナやルネは途中から銭湯に入ったりシシカバブを食べたり楽しんでいたみたい。ナビは宿屋でマタタビを堪能している。
その日は夜遅くまで銭湯は営業し続けた。




