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ノースリンゴルの衛兵や住民が武器を手に取り、迎えてくれた。
「歓迎するって空気じゃないですね」
コメットの感想を聞いたサイゾウは1歩前に出る。
「皆の衆!この方達は人族だが問題ない!俺が保証するから武器を降ろしてくれい!」
それを聞いた獣人たちは武器を降ろした。
「警備隊長が言う事なら信じるが、何かあった時どうするんじゃ?」
老獣人が前に出て尋ねた。
「その時は俺様の命を賭けて止める。止められるか分からんがな」
そう言いながらサイゾウがこちらを見て苦笑した。
「皆さん、俺はコメットと申します。ノースリンゴルに少し滞在したら南に向かう予定です。それまで宜しくお願いします」
「最低限の礼儀は持っているようじゃな。わしは町長のジンジャーじゃ。落ち着いたら、わしの家に来なさい」
先程の老獣人はそう言って住民達と戻って行った。
「俺様は警備の仕事があるから、後は自由にするがいいさ。ただし、住民を刺激するような事はするなよ?絶対にするなよ?」
それはやれって事なのだろうか?いいや、ここは素直に聞いておいた方が良さそうだ
「分かりました。案内ありがとうございました」
そう答えてサイゾウとは別れた。
「まずは宿屋を探しておこうか!」
「そうですね。さっきの騒動で少し疲れました」
「僕はもう疲労困憊で一歩も動けませんよ〜」
「マルク、嘘だったらファイアアロー千本……」
「あ!まだまだ元気です!宿屋を探してきます!」
マルク君は全力ダッシュで走り去った。迷子にならなければいいが……。
「コメットさん!こっちに宿屋がありますよ!」
アンナが宿屋を見つけた。宿屋は素朴だけど温かみを感じる良い雰囲気の宿だった。
「ここにする」
ルネはさっさと入ってしまった。アンナに背中を押されてコメットも入った。マルク君の迷子が確定した瞬間である。
「いらっしゃいませ〜宿泊ですか?食事ですか?」
狸獣人の女将さんが聞いてきた。
「宿泊です。後で食事も頂くかもしれません」
「1部屋ですか?」
「3人で1部屋はどう考えてもおかしいですよね!?後でもう1人来ますので4部屋でお願いします」
「それは失礼しました。4部屋で16銀貨になります」
小銭が面倒くさいので1金貨を渡した。
「3泊食事付きでお願いします。お釣りは要りません」
一度言ってみたかった『お釣りは要らない』を言う事が出来た!
「変なお客さんですね。鍵をどうぞ」
「リーダーはいつも変」
変な客だと思われてしまった上にルネの追い打ちを受けて精神力が削られた。
鍵を受け取って部屋へ入る。
「ふぅ、ところでマルク君はどこに行ったんだろう?」
気配察知全開で探ると意外とすぐ近くをうろうろしていた。窓を開けて呼びかける。
「おーい!マルク君こっちですよー!」
「コメットさん!ひどいじゃないですか!置いてけぼりだなんて!」
「ゴメンゴメン、宿代は払ってあるから鍵を受け取って入っておいで!」
マルク君が無事に合流出来て良かった。まぁ、マルク君のレベルは人間の中では最強クラスだから攫われたりはしないのだろうけどね。
全員集合したので、町長の家に行くことにした。




