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24時間ぶっ通しで作業を続けた結果、蒸気バイクは完成した。
「完成だ!いや〜思ったより大変だった」
完成した蒸気バイクを城の庭で走らせて、問題なく動くことを確認した。その後、装甲や魔力を流すと氷の弾が飛ぶ魔法杖や火炎放射器を装着した。
「氷弾魔法杖や火炎放射器は、やりすぎたかもしれない……でも、自分専用だしいっか!」
とりあえず特許用の資料を作っておこうかな。資料の作成は面倒だな。ここは工房だが、セバスチャンは呼べば来そうな気がする。
「セバスチャン!」
「はい、コメット様」
音もなく現れるセバスチャン。空間転移のスキルでも持っているのだろうか?
「三輪バギーと蒸気バイクを作ってみたんだけど、特許申請してくれる?設計図は俺の部屋にあるからさ」
「畏まりました」
「さすがセバスチャン、俺はちょっと試運転があるから出かけてくるよ」
「いってらっしゃいませ」
工房を出ると城の壁に黒い人影が動いているのが見える。
一瞬呆然としてしまったが、よく見ると俺の部屋から出て来たようだ。黒い影は城から飛び降りると東へ走り去った。
俺は蒸気バイクにまたがると黒い影を追って走った。
蒸気バイクでしばらく走ると森に入った。黒い影は消えてしまった。見失ったのではない、消えたのだ。
「何だったんだろう?もう少し周辺を調べたら帰ろう」
周辺をしばらく走り続けると大きな繭が樹上にあることに気づいた。
「鑑定」
【ジャイアントシルクワームの繭】
蚕が魔物化した動物。魔力の多い土地に生息する。通常の蚕は絹を算出するが、ジャイアントシルクワームはマジックシルクと呼ばれる魔力を含んだ絹を算出する。性格は大人しい。
「おお、これはテイムしたらマジックシルク作り放題じゃないか!」
「仲間にな〜れ!」
繭の外側を叩いてみた。繭はブルリと震えてテイムが成功したような感触はあったのだが、特に変化は無かった。
魔力を注いで成長を促してみる。
《従魔がヒュージシルクワームに進化しました》
繭が光ったと思ったら中から先程よりも巨大な蚕蛾が出てきた。
「大きいなぁ。さすがにこれを連れて帰ったら怒られるかな?ここに家を作ってあげようかな」
その場にある材料で巨大な蚕用の家を作った。10軒ほど建てた。もっとテイムしよう。
ついでに絹糸を作る工場も作ってしまうことにした。材料が木材しかないので、耐久年数が微妙だが、木材の表面を焼くことで腐りにくくした。
絹糸作成用の機械はヘロン博士に発注すればいいかな。
というわけで、更に数匹のジャイアントシルクワームをテイムし、進化させた。
そして一旦城の自室に戻った。
「セバスチャーン」
「はい、おかえりなさいませ」
「ジャイアントシルクワームをテイムしたから絹糸の工場を運営して欲しいんだよ。地図のこの辺りに工場も建てておいたからさ」
「畏まりました」
「絹糸を作る機械はヘロン博士に発注しておいて」
「承知しました」
これで、衣服大量生産も出来るようになるかな?
「あ、そうだ。ルネに三輪バギーを渡しておいてくれる?」
「はい、こちらで手配しておきます」
ふと机を見ると三輪バギーの設計図がなくなっていた。セバスチャンが持って行ったのだと思った。
「セバスチャンがここにあった蒸気バイクの設計図を持ってった?」
「いいえ、私が持って行ったのはコピーだけです」
「じゃあ、誰が……?あ、そういえば城の壁に黒い人影を見たんだった!」
「それが犯人に違いありません。しかし、コメット様の気配察知から逃げおおせるとは敵もなかなかやりますな」
「嫌な予感がする」
この予感は後に的中するのだった。




