102
工房に壊れた三輪バギーを置いて、どうしようか考える。
「一度完成したものに追加するのって結構大変だし、イチから作り直そうかな」
蒸気機関は壊れていなかったので取り外して再利用する。
出来る限り改良を施して、乗り心地も良くなるように作る。
「あ、自動運転機能も欲しいな。クリエイトアンデッド!」
小さなスケルトンをエンジンルーム内に配置して、ハンドル操作出来るようにした。
「自動運転のスイッチがONになったら障害物を避けて走ってくれ。前方に車が居たら後ろをついていくように!」
ミニスケルトンは元気よく頷いた。
少し城の庭を走ってみると今朝作った物より操作性、乗り心地共に良くなっている。
「よし、次は装甲かな」
アダマンタイトで装甲を作り、車体に組み付けた。ついでに馬車にも装甲を付けておいた。
「いいねぇ。あまりやり過ぎるとルネが暴走しそうだから、このくらいでいいか。本当は武器を搭載したかったけどね」
ルネは魔法が使えるので、武器は不要である。ついでにコメットにも武器は不要だが、車載武器にはロマンが詰まっているのだ。
強力な魔物が出没するこの異世界では街から街に移動するだけでも武器が必要なのである。特に商人などの一般人にとっては。
工房で武器について悩んでいるとヘロン博士が現れた。
「陛下、探しましたよ!」
「どうかしましたか?」
「陛下にお渡しした試作の蒸気機関を見せてほしいんです。確認したい事があって……」
「あ、あの蒸気機関は……えーっと……原形を留めないほど改造してしまいました」
作ったばかりの三輪バギーを指差す。
「ええ!?これは何ですか?」
「三輪バギーと言って、乗り物です。こんな感じに運転するんですよ」
三輪バギーに乗って動かして見せる。
「なんて素敵な物を作ってるんですか!私に分解させてください!」
「分解!?いいですけど、元に戻してくださいよ」
三輪バギーの分解を始めたヘロン博士を放置して、コメットは自分専用の乗り物を用意することにした。
蒸気機関のエネルギー源は魔石だ。魔石は使い捨てなので勿体ない。
コメットには大量の魔力があるので、それを使うように改造する。
蒸気機関には水の補給が必要だ。魔法剣プロテウスにリヴァイアサンの牙を装着すると水が発生することは知っていたので、ミニチュア魔法剣を作って水のタンクに取り付けた。
これで、魔力を流し続ける限り動き続ける蒸気機関が出来上がった。その結果、蒸気機関の小型化に成功した。
蒸気機関の小型化に成功したので、次は蒸気バイクを作ってみることにした。蒸気バイクを作っているとヘロン博士がこちらを見に来た。
「陛下、こちらでは何を作っているのですか?」
「蒸気バイクです。三輪バギーを二輪にしたものです」
「二輪で大丈夫なんですか?転倒するのではないですか?」
「走っている間は大丈夫ですよ。止まると転ぶけど」
「そちらも面白そうですね!興味があります」
ヘロン博士が興味津々に蒸気バイクを見ている。
「博士には別のものを作って欲しいんですよ。蒸気で動く船、蒸気船をね」
「蒸気で動く……船?今の所、どうやって船を動かすのか分かりませんがやってみます!」
「開発費の請求はセバスチャンに言ってください。あと、ヒントが欲しくなったら言ってください」
「自力で作ってみせます!」
博士は鼻息荒く立ち去っていった。
「さて、蒸気バイクを組み立てよう。バイクで旅なんかしたいね」




