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ここからクラフト回が続きます。苦手な方は105話まで飛ばして下さい。
車を作るには耕運機を参考にして車輪とハンドルと座席を付けて、アクセルとブレーキがあれば一応動くはずだ。本来はクラッチやフライホイールやギアなどが必要だが、今回は火力を調節することで速度を変えることにした。
タイヤはどうしようかな?ゴムで形を作ってから表面にアースドラゴンの革を貼ってみた。耐久度が上がり、すり減らないタイヤになった。
最終的に、大きな三輪バギーのような形になった。前輪が1つのほうがハンドル操作がしやすいからだ。
「よし!見た目は三輪車だけど、蒸気で動く車が完成したぞ!早速乗ってみよう」
コメットは三輪車に乗り込むと蒸気機関を始動させる。すぐに蒸気が出始め、車が前に進み出す。
「おぉー!動いた!意外とスムーズに走ったなぁ」
城の庭を何周か走ってみた。
「うーん、俺は問題ないけど。他の人達は振動でお尻が痛くなるかもしれないな。ショックアブソーバーを作るべきか……悩む」
とりあえずは誰も乗せる予定はないし、そのままにすることにした。
三輪バギーの後ろには馬車をつなぐことが出来るようにしておいたので、荷物を運ぶのに役立ちそうだ。
「そうだ!この三輪バギーを自慢しに行こう!アンナとルネとマルク君は冒険者ギルドかな?」
三輪バギーで冒険者ギルドに向かう。道行く人達に王様が変な乗り物に乗っているだとか言われたが想定済みなので気にしない。
「こんにち「ワン!」」
冒険者ギルド内を見渡すと、アンナとルネとマルク君がちょうど受付に居たので近寄った。
「コメリの皆、おはようございます」
「あ、コメットさんおはようございます」
「リーダーだ」
「コメットさーん!2人が危険なダンジョンばかり行こうとするんですよ!止めてくださいぃぃ!」
「ダンジョンに行くんですか?いいですねぇ」
「コメットさんも行きますか?」
アンナが誘ってくれるが、今は色々と忙しい。
「ごめん、今色々とやりたいことが多くて忙しいんですよ。あ、そうだ!さっき出来上がった新作を見せたいので外に来てください」
全員で冒険者ギルドの外に出る。そこには三輪バギーが置いてある。ついでに野次馬も集まっている。
「ジャジャーン!蒸気機関で動く乗り物なんです。名付けて三輪バギー!かっこいいでしょう?」
「アンナには難しすぎて……」
「ハティの方が速い」
女性陣には三輪バギーの良さが分からなかったようだ。
「コメットさん!これカッコイイですね!こんなのに乗って村に帰ったらきっと驚くだろうなぁ〜」
「マルク君は分かってくれるみたいで安心しました!乗ってもいいですよ!」
「いいんですか!?やったー!」
「マルクは乗る必要ない。速いから。ボクが乗るべき」
ルネが意外にも乗りたいようだ。
「ルネもいいですよ」
最初に見本を見せて三輪バギーを運転して見せたら歓声が上がった。
マルク君は心の準備が出来ていないとかで、最初にルネが乗ることになった。
「これ楽しい。ボクに頂戴」
ルネは気に入ったようだ。
「それは試作品だからあげられないけど、今度ちゃんとした物を作ったらあげます」
ギアとかショックアブソーバーとか冒険に使うなら装甲も必要だ。
「リーダー、約束破ったらファイアアロー千本飲んでもらう」
「それは嫌だから約束は守りますよ」
ルネが散々乗り回した後、マルク君が乗った。
「うわわわわああああああああ!!」
マルク君は案の定、冒険者ギルドの壁に突っ込んで世界初の自動車事故を起こした。
「ヒール!マルク君大丈夫ですか?」
「アイテテテ、いや、痛くないです。でも、三輪バギーも冒険者ギルドの壁も壊れてしまいました」
「マルク、ドジ、マヌケ」
ルネの棘のある一言でマルク君は撃沈した。
「三輪バギーを直さないといけないので、そろそろ帰りますね。冒険者ギルドの壁はマルク君に任せます」
コメットは三輪バギーをヒョイと持ち上げると城の工房に持って帰るのだった。




