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あれから5年が経過した。
ヴァリアス王国は大きく発展を遂げた。
まずガーマ帝国とゴリンゴル獣国、パルム教皇国、ヴァリアス王国は同盟を結んだ。
今居るパンディア大陸にはあと2つの国があるが、おおむね友好的である。
農業と畜産業に力を入れたおかげで人口も爆発的に増えた。
食糧事情が良くなったことで、優秀な発明家が生まれやすくなった。
「おはよう、ヘロン博士」
「おはようございます、ヴァリアス陛下」
ヘロン博士はシルリア王国に一時避難していたが、レイナルドとヘレナと一緒に戻りヴァリアス王国に住むことを決めたのだった。
「陛下はやめてください。コメットと呼ぶようにお願いしたじゃないですか」
「そんな恐れ多いこと出来ません。ところで、陛下は5年前と変わらずお若いですね」
「ギクッ、若作りなだけですよ!アハハハ……あ、そうだ!博士は今何を研究しているんですか?」
「鉱山の排水用の魔道具を設計しているのですが、上手くいかないんです。魔力から動力への変換が上手くいかなくて……」
地球では鉱山の排水の為にトーマスさんによって蒸気機関が発明されたんだよな。この世界の文明発展の為にも後押しする事にしよう。
「博士は水を沸騰させた時に出る蒸気を知ってますよね?」
「はい」
「蒸気は鍋の蓋を持ち上げるほどの力があるんです。その力を動力として使ってみてはいかがですか?」
「蒸気を動力として……魔力を一度熱に変換して……?触媒はどうする……ハッ!出来るかもしれません!すぐに試します!」
ヘロン博士は走って行ってしまった。これで文明が発展するといいんだけど。
文明の発展に合わせて発明家の権利を守る為、特許法を制定した。特許法は大陸全ての国の同意を得て共通の法とした。
3カ月後、蒸気機関が誕生した。
「ヘロン博士、おめでとうございます」
「陛下のおかげです」
「量産は可能ですか?」
「はい、魔力を熱に変換する為に貴重な火龍の牙が必要なのですが、粉末にしてミスリルと鉄の合金に混ぜることで低コストの熱変換装置を作りました」
「さすがはヘロン博士ですね。量産に必要な資金や物があればセバスチャンに言ってください」
「ありがとうございます!」
こうして蒸気機関の量産が始まった。あとは放っておいても勝手に発展するはずだ。
「よーし、蒸気機関を使って何をしようかなー?」
作りたい物は沢山ある。例えば、旋盤だ。
旋盤とは、木や金属などを回転させながら削っていく工作機械のことである。ろくろのように回転させながら形を整えるとイメージすると良いかもしれない。
旋盤を使えば、ネジや歯車や車輪を作ることが出来る。
つまり、車や鉄道や様々な工具などを容易に作ることが出来るのである。
「まずは旋盤だな!」
鍛冶10により旋盤自体を作ることは容易だった。
「あとは蒸気機関を取り付ければ完成だ!」
ヘロン博士から蒸気機関のプロトタイプは受け取っていたのでそれを使う。
「ん〜ちょっと出力が弱い気がするなぁ」
オークの魔石では出力が弱いみたいだ。ワイバーンの魔石にしよう。
「あ、今度は熱への変換が間に合ってないな!ええい、レッドドラゴンの牙をそのまま使ってやるー!」
その結果、モンスター級の蒸気機関が出来上がった。
「いい感じになったな。これをいくつか作っておこう」
旋盤は好きなだけ使ったら一般公開して流通させよう。
「よーし、次は車でも作ろうかな!」




