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死闘満ち溢れるこの愛すべき異世界よ  作者: えむ
唐突に転移したんでとりあえず馴染む。
4/7

終わりの運命(2)

「ふふっ…ねぇ?遊んでくれない?いいじゃぁ〜ん!遊ぼうよ!」


丸で駄々をこねる子供。

実際に身体的特徴としては、子供。

だが異様な威圧感や恐怖を身体中から吐き出している。

ビリビリと揺れるような空気。

立つこともままならない程の圧に「ぐらり」と視界を持揺らすが、ハッと息を飲み意識を保つ。

ただただ、意識を保つのに全力を注ぐのみ。


「うぷっ…遊べるほど余力が残っているように見える…うっ…」


目から涙を滲ませ、口からは涎を垂らしている。

血眼で子供の方を少女は睨む。

口は動かせるが、先ほどまでとさほど状況は変わらない。

敷いて言えば、詠唱ぐらいならできるか。

頭の中でそう考える。

けれど戦闘態勢に入るには、あまりにも不十分。

先程の化け物との戦闘。

そして召喚。

そこで使った力はあまりにも強大である。

10代の少女には確実に重労働。

そんなことは頭の中で考えると、子供から返事が返ってくる。


「うーん。だめかぁ。そりゃ初対面だしねぇ…はっ!閃いたよお姉ちゃん!これならどう!?二人で自己紹介し合おうよ!」


そう言った流れになった瞬間、威圧感、恐怖が彼から全て消える。

先ほどまで何もなかったかのように。

そして少女はこう答える。


「そういう問題じゃ…」


言葉を遮り子供はこう言う。


「僕の名は…うーん。そうだ!カッコいい名前思いついた!聖なる暗黒騎士!だーくねすほーりー!こういう名前だよ!略して…略して?うーん…リーネスって呼んでよ!」


「聖なるって…対義語じゃない…しかも思いついたって言ってるし…けどいいわ…リーネス…名乗ったのだからこちらも名乗らないとね…じゃあ名乗ってあげるぅ〜わっ!!」


   ーーシュッ!


少女は瞬間的にリーネスの後ろに移動する。

まさに刹那。

瞬きする間もない速さで移動し、0.2~3秒も立たないうちにリーネスの首目掛け少女は魔法を放つ。


「爆散しろっ!焔ノ劍•爆ッ!(レッドブレイク)」


先程とは微妙に違う複数の焔の剣がリーネスの首を切り裂く。

そして爆散する。

爆発した焔の剣は杭のような形になり、リーネスの周りを囲う。

少女は後ろに仰け反り、囲いの外に出る。


「じゃあ私の名前を教えてあげるわッ!私の名前は!バートリ!モニカ•バートリよ!術式展開ッ!」


そして彼女が焔の杭を使い、またもや結界を張り、指で印を結ぶ。


「術式展開完了!詠唱開始ッ!なんてね!私程度になると詠唱なんていらないのよッ!」


「全てを飲み込め。終焉•零。」


この技も同様に、化け物の時と同じような黒い炎が結界内をリーネスと共に埋め尽される。

そして重力により周りが歪む。


「ぐっ…モニカさんっ…いいねっ!けどまだまだだよっ!」


重力に抗っているのか、重力による振動などが少し収まる。

だがそんなことも束の間。


「これだけだと思うっ!?ならもっと上げてあげるわ!


そういった瞬間、振動が強くなる。

恐らくどんな強靭な男も立っていられない程に。

周りの地面もビキビキとひび割れ、砕け始めたころだった。

振動が止んだのだ。

先程までの結界が消えている。

代わりに空間にヒビが入っている。


「成功…したのね…流石に時空の外に追い出せば…あんな化け物でも…最初から殺しに行って正解だわ…」


        ーーー数分後ーーー


「…きて…お…て…」


外から声が聞こえる。

先程まで意識の外側にいても感じていた痛みも消えている。

(まさか死んだのか。)

(こんな異世界に転移してすぐに?)

(まぁいいや…今はもう…休もう…)


「起きてッ!」


   ーーパチンッ!


「イッテェ!なんだ!」


「やっと起きたのね。死んだかと思ったわ。」


「え?あ、あぁ…」


「大変だったのよ。化け物殺して。あんた治して…」


「治してくれたのか…」


「そうだ。アイツで思い出したわ。名前…言ってなかったわね。」


「そうだな。で?お前の名前は?」


「あんたが先に言いなさいよ。まぁいいわ。私の名前はモニカ•バートリよ。言ったわ。あんたの名前言いなさいよ。」


「シノミヤ•ユウだ。お前?バートリ?その名前どっかで聞いたことあるような気がするけど…」


「どこでもいいでしょ…それよりあんた、あいつがくるわ。全身の魔力を右手に込めなさい。少しだけ時間稼ぎをしてちょうだい。」


先ほどまで時空の割れ目がさらに広がる。

複数の巨大な手が割れ目を広げている。


「お姉さん…まだまだ遊び足りないなぁぁぁぁぁあああああっっっぅ!!」


「しつこいわねぇ!シノミヤっ!行くわよ!」


「あぁ!いいとこ見せなきゃな!」


「君も遊んでくれるのぉぉぉぉ!!?」 


「うげ…こういうタイプのやつか…」


「そうよ。無駄話はいいわ。魔力を放出して!シノミヤっ!」


「やり方知らないんだがっ!?弾け飛べっ!!クソガキッ!」


波動のようなものがリーネス目掛け飛ぶ。

リーナスの周りにいる大きな手がリーネスを囲い、波動から本体を守る。


「その程度かぁ…ならいいよ…厄介な方から潰してやるからさぁ!ねっ!モニカ!」


「その程度読めてるわ。結界発動。薄汚く食い散らかせ…暴食の(グラトニー)


モニカの周りに薄い影のようなものが出現する。

そして結界内のリーネスが操る腕を全て食い尽くす。


「なにそれかっこいい!」

「なにそれかっこいいな。」


「シノミヤとリーネスって仲良いのかしら。同意見じゃない。」


「こんな奴となんて嫌だね。死んでも嫌だ。ということで!イメージ的にはぁ!?魔力で腕を囲う感じで!殴る!」


「まさに脳筋ね。魔力も使えていないし、何も考えていない攻撃。やっぱりリーネスと似てるじゃない。まぁ手伝ってあげるわ。腕力超強化(パワードブレイク)


「ひゃっはぁぁぁぁ!!!俺の時代だぁぁぁぁぁ!!」


バキッ!ドン!メシャァ!

潰れるような音が鳴り響く。

その音と共に、リーネスの周りを囲う腕もぐしゃぐしゃと潰れていく。


「ひどいなぁぁぁ!!!仲良くしなきゃだめだよぉぉ!!!」


「ぐふっ!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「押し合いなら負けないよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「へっ!こっちだってぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」


「ぐっ。うはぁ!」


「あれれ?負けちゃったねシノミヤくん!」


「次は負けない!殺す!」


「準備は終わったわ。そんなお遊びもうやめて頂戴。」


そういうと、リーネスの周りに何か異常なものが見えた気がした。


「短期解決が目標なのよ。ということでおしまい。」


「あ」


   ーーグシャァ。


その場に響いたあまりに気持ち悪い音。

肉が潰れる。そして骨が折れ、剥き出しになる。

先ほどまで大きな腕を操っていた子供は一瞬で肉塊となっている。

先程までの原型は全くもって無い。

人の形すら留めておらず、かつて人だったものが残っているだけ。

そしてシノミヤは返り血を浴びる。

吐き気がする。

気持ち悪いとかじゃない。

そんなものじゃない。

人の死。

自分を殺そうとしていたが、明らかな人の死。

何も感じない?

そんなわけがない。

目の前で人が死んだのだ。

シノミヤは真っ赤に染まっている。

そう。真っ赤に。


「え?」


「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁ!!!」


「うぷっ…おごっ…おえぇぇぇぇぇぇ!!!」


吐き出す。

そう。

吐き出している。

人の死のあっけなさ。

目の前の肉塊の哀れさ。

血溜まりの生臭さ。

意味もわからず死んだ。

何もかも分からない。

だがその中で一つわかったことがある。




ここは『地獄』だと。



長い。

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