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 新しい派遣先に来てから2か月が経っていた。

 

 部署の皆さんもとても良くしてくださり、色々と教えていただいた。

 足手纏いな私ですが、皆さんは嫌な顔せず教えてくださる方ばかりです。


 陣内さんと内川さんからも「これで一任前よ」とお墨付きをいただいたけど、私なんて社員の皆さんのお仕事に比べたらできることは限られているのに…。

 社員の皆さんのサポートができるように、日々書類と格闘している。


 私手作りのドーナツは好評だったため、月曜日だけ作ってくるようになった。

 私のドーナツなんてどこにでもあるものなのに…と思いながら、皆さんが食べたいということで作ってきている。

 材料費も固辞したんだけど、受け取ってということで、多めの材料費を皆さんからいただいている。

 そのおかげでバリエーションが増えたのはよかった。


 飲み会も週1で誘われており、いつも兵藤さんと三船さんが出してくれる。

 出させてください!と言うと、渋々1000円だけ受け取っていた。

 三船さんは都合の付いたときだけだったけど、空いているときは飲み会に参加してくれた。

 兵藤さんと三船さんの漫才は鉄板ネタのようだった。


 初めての派遣先変更だったけど、なんとか頑張っています。

 年末まで後少しだし、仕事納めまでミスなく頑張ろう。


 あんなことになると思ってなかったけど…。












 「待たせた」


 「いえ、数分ですので」


 私は三船さんに呼び出されて、会社近くの公園にいた。

 12月で寒かったけど、仙台の冬に比べたら大したことないと思う。


 「お話とは?」


 「…ああ」


 三船さんが私の座っているベンチの一番端に座った。

 資料室での出来事以降、三船さんは私との距離を空けるようになった。

 近すぎると前みたいになると心配してくれているみたい。


 「…その」


 「?」


 三船さんが言葉を発することを迷っている。

 いつもの三船さんからは想像できない。

 告白なんて期待してません。

 私より綺麗な方はたくさんいます。

 自分の容姿を理解しているんです。


 「…これから言うことは、小田桐さんにとってかなりツラいものだ」


 「はぁ…?」


 「それでも…いいか?」


 なんだろう。

 

 「俺の旧姓は最上。最上 悠里だ。三船は母型の性だ」


 「え…」


 最上ってあの…?

 嘘…。


 「10年前…。小田桐さんを襲った男だ」


 「………」


 ナニヲイッテイルノ?


 ぶっきらぼうだけど、優しい三船さんが…。

 そんな…。


 「俺はキミを騙していた。罵ってくれていい。卑怯者だと言ってもらっていい」


 「…そんな」


 「気づいたのはたまたまだった。昔の面影がある。資料室で近づいた時に確信したよ…」


 「………」


 小田桐さんが10年前の…?

 あの時の…?


 「一言謝りたかった。あの時は酷いことをした。本当に申し訳ない」


 三船さんが私に深々と頭を下げる。

 私の脳が理解に追いついて行かない。



 「許してもらえると思っていない。訴えてくれてもいい。それくらいのことを俺はキミにした」


 「………」


 「軽蔑しただろ。これが俺だ」


 三船さんは項垂れている。

 あの三船さんが…?


 「あ…あの時の…」


 「…そうだ」


 「いや…」


 「くっ!?陣内さんっ!」


 「や、やめて…。痛いことしないで…っ」


 私は恐怖で体が震え出す。

 あの時の光景を嫌でも思い出してしまう。



 「楓ちゃん!?」


 「スミマセン…」


 「いや…いや…痛いことしないで…」


 「楓ちゃん落ち着いて?大丈夫よ?」


 「…俺が居たら逆効果なので俺は離れます。落ち着きましたら詳細を話します」


 「わかったわ」



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