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 「小田桐 楓です。よろしくお願いします」


 パチパチパチ。


 10月から新しい派遣先にやってきた私。

 朝礼で挨拶をし、自席に戻る。


 緊張した。

 久しぶりにこんな大勢の前で喋るんだから…。


 私の新しい派遣先は、大手と呼ばれる会社。

 CMでも目にしたことのある、誰もが知る大企業。


 前の会社よりも人数が多く、私の配属されたフロアだけでもかなりの大きさだ。

 出勤時に巨大なビルに足が竦んでしまうしまったのは内緒。


 「みんな、今日から一緒に仕事をする小田桐さんだ」


 「よ、よろしくお願いします」


 配属された部署の課長さんに、改めて紹介される。

 何度挨拶しても慣れない…。


 「小田桐さん。業務は陣内さんから教わってくれ。初日はPCの設定とかで業務を覚える時間はないと思うが」


 「は、はい」


 「初めまして。陣内です。よろしくね」


 「よろしくお願いします」


 課長さんに紹介された女性は陣内さんという方だ。

 この方に業務を教わるらしい。

 綺麗な女性で、私みたいな小娘とは月とスッポンの差だ。

 陣内さんみたいな女性をキャリアウーマンっていうんだろうな。


 「それじゃ、PCの設定しましょうか。10時からは新しい人に説明会があるから忘れないでね。場所は…私も一緒に行くわ」


 「ありがとうございます」


 陣内さんと簡単な挨拶をし、色々な説明を受けた。

 10時から新規入場者向けの説明がある?

 なにそれ。

 大きい会社だとしっかりしてるんね。











 「ただいま戻りました」


 「おかえりなさい。どうだった?」


 「さすが大手ですね。私みたいな派遣にもあんな教育してくれるなんて」


 説明会では、勤務しているこのビルに関することや取り扱う情報の取り扱いなどの教育を受けた。

 前の派遣先ではそのような教育は受けたことがなかったため、新鮮で思わずメモ帳の1ページを使用してしまった。


 「それじゃ…」


 「陣内さん。小田桐さん戻ったんでしたら業務説明します」


 「あら、そうだったわね。小田桐さん、兵藤くんがうちの部署の業務を説明してくれるから」


 「はい」


 私は自席を離れ、兵藤さんが待っているスペースに行く。


 「兵藤です。よろしくお願いします」


 「小田桐です。よろしくお願いします」


 「会社の概要は説明会で聞いたと思うので、僕からは部署の業務説明をしますね」


 「はい。お願いします」


 兵藤さんは20代後半に見えるが、少しお腹が出て、眠そうな目が印象の男性社員さん。

 多分30代じゃないと思うけど…。


 「業務の詳細は陣内さんが教えてくれると思いますので、僕からはざっくりとした説明だけしますね」


 「はい」


 「うちの部署は―――」





 「あら、お昼ね。午前中はここまでにしましょ」


 「はい。ありがとうございます」


 兵藤さんから部署の説明を受け、自席に戻りPCの設定をしていた。

 さすが大企業。

 ちゃんとマニュアルが完備されている。

 

 「小田桐さん、お昼は?」


 「お弁当を持参しています」


 「あら、しっかり者なのね。地下一階に食堂もあるから、お弁当なくても大丈夫よ」


 「お弁当で節約です」


 お昼となり、多くの人が外へと出て行く。

 事務所に残ったのはお弁当を持参した人だけだ。


 いつ何があるかわからないから、できるだけ外食しないように心掛けている。

 派遣の給料なんてたかが知れてし、できるだけ節約したい。


 「それだけで足りるの?」


 「大丈夫です。小食でして…」


 「最近の若い娘は食べなさ過ぎなのよ」


 陣内さんもお弁当だったようで、机の上にお弁当を広げていた。

 私のお弁当箱は小さく、逆に陣内さんのお弁当箱は私の2倍はあるのでは?と思ってしまう。

 そこまで食欲もないんですよね…。


 「食べないと育たないわよ」


 「もう成長期は終わってます」


 「そうかしら?まだまだ成長できるわよ」


 陣内さんと取り留めない話をしながらの昼食。

 陣内さんは2人のお子さんを持つママみたい。

 私の年を言ったら驚かれた。

 すみません…。21なんです…。










 「今日はこれで終わりにしましょ。楓ちゃん、PC落として帰っていいわよ」


 「はい、お疲れ様でした」


 陣内さんから業務を教わっていると、終礼のチャイムが鳴った。


 お昼の会話で少し打解けた陣内さんからは「楓ちゃん」と呼ばれるようになった。

 陣内さんみたいな素敵な女性に下の名前で呼ばれるとくすぐったい感じがする。


 「あ、小田桐さん。今週の金曜日の定時後って空いてます?」

 

 「はい、空いてますよ?」


 帰ろうとしたら兵藤さんに声をかけられた。

 金曜日どころか毎日なんの予定もありません。

 自宅に帰るだけの毎日です。


 「よかった。金曜日に小田桐さんの歓迎するので、お店はメールで投げておきますので明日見てください。あ、ダメな物あります?」


 「いえ、苦手な物は何もないです。」


 え…歓迎会?

 派遣の私に歓迎会なんてしてくれるんですか?

 

 「了解です。明日メール見てください。わからなかったら陣内さんに聞いてくださいね」


 「ありがとうございます。お疲れ様です」


 初日は無事に終わった。

 前の派遣先とは違い過ぎて疲れた…。

 今日は帰ってすぐに寝よう…。


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