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「ツイてない…」
今日の私の運勢は最悪だろう。
朝起きて、眼鏡を付けようとするも、フレームが取れてしまった。
仕方なくコンタクトを付けている。
今日は仕事終わりに眼鏡屋さんで修理してもらわないといけない。
出社中に髪の毛を纏めているシュシュが千切れました。
おかげで纏めていた髪の毛がフワフワしています。
今日は厄日です。
きっと一日良くないことばかりだと思います。
気が滅入りますが、それでも仕事をしなくちゃ。
「おはようございます」
「え…っ!?楓ちゃん!?」
「はい…?小田桐 楓です」
出社し、いつも通り陣内さんに挨拶をしました。
なぜ驚かれるのでしょう?
「ええ…、これは三船くんの気持ちが分かるわ」
「?」
「おはようございまー…す?」
陣内さんが驚いているようですが、そんなに私は変なのでしょうか?
これはお昼に眼鏡屋さんとシュシュを買いに行った方がよさそうでう。
「え?小田桐さん?」
「そうなのよ。驚いたでしょ?」
「まじびっくりっす」
兵藤さんも何をおっしゃっているんですか。
そんなに私が変なのですか!?
うう…、やっぱり今日は厄日です。
その後、出社されてきた広瀬さんや内川さんにも驚かれました。
私はそんなに珍しい女じゃないのですが…。
どこにでもいる田舎娘です。
「楓!」
「三船さん。お疲れ様です」
お昼に眼鏡屋さんとシュシュを買いに行こうとしたら悠里くんに声をかけられました。
また楓に戻ってます。
小田桐って呼んでください。
「眼鏡とかはどうしたんだ?」
「眼鏡はフレームが壊れたので今から修理に行く途中です。髪の毛はシュシュが千切れました」
悠里くんは、片手で顔を抑えて溜息を吐いています。
溜息が出る程私の容姿は変なのですか!?
そこまで否定されると心に来るものがあります。
「大輔から、「小田桐さんが美少女の変身した」ってきたからどういうことかと思ったけど…。こういうことか」
「むぅ…」
兵藤さんも悠里くんに変なこと言わないでください。
私が美少女なわけないです。
「午後もその恰好なのか?」
「そうですよ?」
「うーん…」
悩む程のことなのでしょうか。
さすがの私も凹みますよ。
悠里くんでも許さないですよ?
「…わかった。今日はあまり歩き回るなよ」
「はぁ…?」
「わかったな!頼むぞ」
むぅ…。
今日は資料を取りに行く予定もないので、自席で黙々と処理するだけですが。
出歩いちゃダメって言われましても、お使いなどがあれば社内を歩きますから無理です。
「ねぇ、楓ちゃん」
「なんでしょうか?」
「この娘どう思う?」
陣内さんが雑誌に載った女性を見せてくれました。
どうしたのでしょう?
「可愛いと思います」
「楓ちゃんと比べると?」
「私なんかより、雑誌の女性のが可愛いと思います。私みたいな田舎娘と比べるなんて雑誌の女性が可哀相です」
陣内さんと内川さんがあちゃーと天を仰いでいます。
どうしたのでしょうか?
雑誌の綺麗で可愛い女性とは比べようがありません。
「部長ー!課長ー!」
「………」
陣内さんは雑誌を持って、山野さんと広瀬さんに確認に行きました。
山野さんも広瀬さんも私を見て可哀相な視線を送ってくださいました。
部内虐めですか?凹みます…。
「楓ちゃん楓ちゃん」
「なんでしょうか?」
「ちょっと笑うっていうか微笑んでもらっていい?」
「はい…?」
「ぐふっ…」
「恵ちゃーん!」
内川さんにお願いされたので、なんとなく微笑んでみましたが…。
内川さんが吐血しそうな勢いです。
口元を抑えて蹲ってしまいました。
そんなに私の笑顔は凶悪なのでしょうか…。
「あの…」
「はい?」
帰宅しようと、会社の入口を出ようとすると、後ろから声をかけられました。
振り向くと、知らない男性です。
どこの部署の方でしょうか?
「よかったら連絡先を教えてくれないかな?」
「はぁ…」
私の連絡先を聞いてどうするのでしょう。
ネット社会に流出させられるのでしょうか。
「俺の連絡先―――」
「俺の女なんで」
「―――失礼しましたー!」
男性がスマホを取り出したところ、息を切らした悠里くんが現れました。
社内で運動していたのですか?
運動不足解消なら他で運動した方がいいですよ。
「私は三船さんの女じゃないと思いますが」
「はぁ?」
「三船さんのようなイケメンに私なんて差し出がましいです」
「ちょっと!」
私は悠里くんに引っ張られて会社の裏手に。
「楓は俺の彼女だろ?」
「はい…?悠里くんには彼女がいるんじゃないんですか?」
「いねーよ」
「はぁ…」
若干不機嫌な悠里くんです。
何に怒っているのでしょうか…。
お腹が空いてイライラしてるんでしょうか?
「楓が…。責任取れって言っただろ」
「ええ…?」
責任?
なんの責任でしょう…?
「あの夜に責任取ってくださいって」
「…あ」
そんなこと言ったかもしれません。
泣いていましたし、色々なことが分かったので混乱していたのもあると思います。
「だから俺が責任取る」
「私に?」
「そうだ」
むむむ…。
どういうことでしょうか。
私は悠里くんの彼女なのでしょうか。
「悠里くんは私への罪悪感で私を彼女にしようとしているのですか?」
「そうじゃねーよ」
「そう聞こえます」
罪悪感で私を彼女にして遊ばないでください。
私に悠里くんの彼女なんてできません。
第一、お似合いじゃないです。
「俺は楓のこと好きだぞ」
「へー…私のことをですか…。え?」
「え?」
「ええええええ!?」
耳を抑える悠里くん。
こんな時間に大声出してごめんなさい。




