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「明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします」
「おめでとー。よろしくね。…あれ、楓ちゃん髪染めたの?」
「…気分転換です」
「似合ってるわよ」
仕事始め。
陣内さんたちに新年の挨拶をし、仙台のお土産を渡す。
「さ、今年も頑張るわよー」
「頑張ります」
「と言っても、初日は仕事なんてないけどね」
ないんですか…。
仕事始め初日だし、ゆっくりと元に戻ればいいかな。
仕事始め初日は、午前中に社長さんの挨拶があり、午後は職場で新年会みたいのがあるみたい。
仕事始めに仕事する人はほとんどいなく、今日は体を慣らすためのようなものだと教えてもらった。
それでも何かしら仕事しなきゃ。
「小田桐さん」
「三船さん。お疲れ様です」
午後に陣内さんからお願いされたお使いのため、社内を歩いていると悠里くんに声をかけられた。
今日はちゃんと小田桐さんって呼んでくれてるんだ。
「コンタクトは?」
「眼鏡のが楽ですので」
「化粧は?」
「私には難易度が高過ぎます」
今日の私は髪の色以外はいつも通り。
髪の毛はいつもの後ろで纏めているし、コンタクトじゃなくて眼鏡だ。
「せっかく…いや。こっちのがいいのか…」
悠里くんがブツブツとひとり言で悩んでいる。
どうしたの?
「あのときの姿は俺と遊ぶとき以外するなよ?」
「はぁ…」
「絶対だぞ」
「………」
「絶対だからな」
悠里くんは一人で納得したようで、前回遊んだときの恰好は悠里くんの前だけと言われてしまった。
会社には私服でこないし、コンタクトも化粧も慣れてないから無理だよ。
変な悠里くん…。
「明けましておめでとう。今年も頑張るぞ!」
「「「「「かんぱーい」」」」」
山野部長の挨拶で、新年会が始まった。
準備されたテーブルには、お酒などの飲み物や、ケータリングの食べ物が置いてある。
これ全部会社持ちらしい。
大企業は違うなぁ…。
「それってゆーりたんの趣味?」
「ですです。正月明けに連れまわされました…」
兵藤さんが、紙皿一杯に料理を乗せてやってきた。
そんなに食べると太っちゃいますよ?
「うーん…。ゆーりたんの愛を感じる」
「愛なんてないと思いますよ。私を着せ替え人形にして楽しんでいるだけだと思います」
「ゆーりたんご愁傷様…」
「?」
悠里くんの愛なんてないですよ。
私を着せ替え人形にして楽しんでいるだけです!
悠里くんは意地悪です。
「ねぇねぇ、兵藤くん。楓ちゃん髪の毛染めてから明るくなったと思わない?」
「激しく同意」
「前髪も切って、表情が見やすくなったわねぇ。三船くんもやるわね」
「当の本人は何も思ってないみたいですよ」
「?」
陣内さんと兵藤さんは何を言っているんだろ?
たしかに前髪を切ったので、視界は明るくなりました。
それだけで明るくなるなんてありえないです。
田舎娘に変わりないです。
「ゆーりたんは束縛マンに変わってしまったのです」
「人って変わるものねぇ」
お二人は私をチラチラ見ながら悠里くんのことを話します。
なんなのでしょうか?




