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その後も悠里くんに食事に誘われて、週に1度は悠里くんと食事をするようになった。
私の知らないところばかりで、悠里くんの探してくるお店は全部当たりだった。
私がお金を出そうとすると、頑なに拒むんだから…。
私も子供じゃないんだから、自分の分は自分で出せるのに…。
いつも悠里くんに出してもらって悪いよ…。
悠里くんに真実を打ち明けられてからは何事もなく。
淡々と業務をこなす毎日だった。
たまに資料室で悠里くんと会うことはあったけど…。
無事に年内一杯勤め上げることができたのは陣内さんたちのお陰だと思う。
右も左もわからない私に、色々と教えていただいたし。
派遣会社からの来年の1月からの契約も更新されたと聞いたときは、自分の働きが評価されたんだと嬉しかった。
来年かも引き続き頑張らなきゃ。
年末はお父さんに会いに仙台に帰省した。
お父さんは、私を見て安心した様子だった。
しきりに悠里くんとの仲を聞かれたけど、悠里くんと私には何もないよ。
クリスマスも悠里くんが食事に誘ってくれたけど、悠里くん彼女いないのかな?
私と食事ばっかり行ってると怒られちゃうよ。
正月まで仙台の実家でのんびりし、今日は東京に戻る日。
戻ってすぐに悠里くんと会う約束をしている。
悠里くんから誘いがあり、私もお土産を渡したかったからちょうどいいよね。
「明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう」
新幹線から東京駅につくと、悠里くんが待っていてくれた。
私服の悠里くんもカッコイイね。
「これ…お土産です」
「ありがと」
私はお土産を悠里くんに渡す。
今日はどうするんだろ?
何も聞いてないけど…。
「行くか」
「え…、どこにいくの!?」
悠里くんに手を繋がれ、引っ張られていく。
どこにいくの!?
悠里くーん!
「眼科?」
「もう三が日も過ぎたから、普通にやってるしな」
「悠里くん眼が痛いの?」
「俺じゃない。楓のコンタクトを作るためだ」
えっ!?どういうこと?
コンタクトって…。
私眼鏡あるよ…。
悠里くんに強引に勧められ、コンタクトを作った私。
お金は悠里くん…。
私のコンタクトなんだから私が払うのに…。
「次はここ」
「美容院?」
「綺麗にしちゃってください」
「えっ!?」
こんなオシャレな美容院初めて入った…。
店員さんにされるがままにカットされてカラーも…。
鏡を見た私は別人のようだった。
店員さんに化粧の仕方も教えてもらい、メイクした私は別人。
戻ってきた悠里くんは何も言わずに無言で私を引っ張っていく。
ここも悠里くんが払ってくれた…。
「ここ」
「服屋さん…?」
「見繕っちゃってください」
「承知しました」
ええー…。
店員さんに着せ替え人形にさせられ、真新しい服に。
ここでも悠里くんが…。
私は仙台から戻ってきた格好とは別になっていた。
頭からつま先まで別。
髪の毛はカットされ、カラーで明るめに。
いつもの眼鏡は鞄の中に入っており、今はコンタクトを付けている。
服も上から下まで着せ変えられている。
悠里くんのお金なのに…。
「綺麗になったな」
「…なんなの」
悠里くんとレストランで食事中。
テーブルマナーなんてわからないよ…。
「昔みたいに可愛い楓だ」
「悠里くんのお金なのに…」
「これくらい安いもんだ」
化粧用品や靴なども悠里くんが出してくれた。
悠里くん、散財はよくないよ。
「楓は元がいいから。ちょっと弄れば美少女だ」
「…可愛くなんてないよ」
「そんなことない」
私は可愛くなんてないよ…。
仙台の田舎娘だし…。
東京のオシャレな女性には遠く及ばない。
「…なんなの」
悠里くんの考えがわからない。
その後、悠里くんと夕食を食べ、悠里くんに家まで送ってもらった。
自宅には悠里くんにプレゼントされた物が…。
片付けなきゃ…。




