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 悠里くんが真実を教えてくれた夜。


 私は悠里くんの胸の中で泣いた。

 今までのうっ憤を晴らすように泣いた。

 そんな私を、悠里くんは昔のように私の頭を優しく撫でてくれた。

 

 「あの…。すみませんでした…」


 「楓が謝ることじゃない」


 「うう…」


 今悠里くんに抱きしめられています。

 資料室のときは体が震えてしまったけど、今は震えていません。

 真実を知って、今までのことをぶちまけたからかな?

 

 「大丈夫?」


 「大丈夫です。子供の頃みたいに安心します」


 悠里くんの体温や匂いで心が落ち着きます。

 昔の優しかった悠里くんです。


 「あ…」


 「ん?」


 「悠里くん!頬っぺた冷やさないと!何があったんですか」


 私は悠里くんから離脱し、冷蔵庫からアイスノン枕を出します。

 タオルで包んで悠里くんの頬っぺたに当ててあげます。


 「…大輔に殴られた」


 「兵藤さんにですか?」


 「あいつ見た目はあんなんだけど、格闘技やってたからパンチやべーんだよ…」


 悠里くんは思い出したように苦い顔をします。

 兵藤さんも見かけによらないんですね。


 「そのままはツラくないですか?」


 「ちょっと腕が疲れるかも」


 腕が疲れてきた悠里くんのためにベッドに寝ることを提案しました。

 悠里くんは戸惑っていましたが、今は悠里くんの頬っぺたを冷やすことが優先です。


 「おい!?」


 「悠里くんの匂い…」


 私はベッドで横になっている悠里くんに抱き着きます。

 変わらない悠里くんの匂いが安心するんです。

 ちょっと香水の匂いがしますが、嫌な匂いではありません。


 「色々吹っ切れすぎじゃないか?ついさっきまでは怯えてたくせに」


 「10年分の悠里くんを補充しているんです…」


 10年の空白期間を悠里くんで埋めている最中です。

 10年間も私を放置した罰です。


 「なんか…男慣れしてね?」


 「失礼な。今までお二人としか付き合ってません」


 「へぇ…。二人もね」


 悠里くんだって遊び人で有名なくせに。

 私に文句を言うのは間違ってると思います。


 「怖くなかったのか?」


 「高校の時と社会人になってからです。大丈夫かと思っていたのですが、いざ手でも触られるとなると無理でした。なので、実質恋人なんていなかったです」


 高校生のときに友達の紹介で他校の男子生徒と付き合った。

 性に貪欲になった高校生らしく、隙あらばボディタッチしてくるような男性でしたが…。

 トラウマを乗り越えたつもりでしたが、やっぱり無理でしたので即日別れました。


 社会人のときは派遣先の社員さんでした。

 言い寄られて、食事だけと思ったら連れ込まれそうになりました。

 すぐに逃げました。


 なので私の恋愛経験なんて1週間でお釣りがくるレベルです。

 高校生のが恋愛経験知は高いと思います。


 「悠里くんはたくさんの女性と遊んでたようですし…」


 「別にいいだろ…」

 

 「そうですね。悠里くんの過去をどうこう言うつもりはありませんし、私の過去もどうこう言われるたくはありませんから」


 過去は変えれない。

 変えれるのは嘘が本当になったときだけ。


 「悠里くん…。今度はどこにも行かないでくださいね…」


 「ああ…」


 ごめんなさい…。

 もう限界です…。

 おやすみなさい…。


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