12
「大丈夫帰れる?何かあったら連絡頂戴ね。直ぐに行くからね」
あの後、軽いパニック状態になった私を落ち着かせてくれた陣内さん。
わざわざ自宅まで送ってくださった。
こんな私のために申し訳ないことをした…。
「なんで…」
電気もついていない暗闇の自宅には私の声だけが響き渡る。
なんで三船さんが悠里くんなの…。
なんで悠里くんが三船さんなの…。
なんで…。
ピンポーン
「誰…?」
自宅に来客を知らせるチャイムが鳴った。
こんな時間に誰?
誰にも会いたくないのに…。
「楓、お父さんだ。開けてくれないか?」
「お父さん!?」
突然の来訪者は仙台にいるはずのお父さんだった。
なんで?
仕事じゃないの?
「久しぶりだな」
「うん…」
玄関を開けるとたしかにお父さんだった。
お母さんと離婚し、離れ離れになっちゃったけど、私が傷ついたときに引き取ってくれた。
お父さんがいなかったと思うとぞっとする。
多分お父さんがいなかったら、今私はこの世にいないと思う。
「上がっていいか?」
「うん…」
お父さんを部屋に上げ、マグカップにコーヒーを入れる。
「どうしたの?仕事は?」
「大事な娘が傷ついているから会いに来てくれと言われてな」
誰…?
仙台と東京じゃ、すぐに来れる距離じゃない。
「悠里くんから聞いたか?」
「なんで…」
「悠里くんから楓を助けてほしいと連絡があった」
お父さんはコーヒーを一口飲み、私を真っすぐ見つめる。
なんで悠里くんがお父さんの連絡先を知っているの?
「楓…。悠里くんは嘘をついている」
「え…」
嘘?
どんな嘘を私についているの?
「…どういうことなの?」
「それについては俺の口から何も言えん」
どういうことなの?
お父さんは私を揶揄いに来たの?
「真実を知りたいか?」
「………」
真実って何?
三船さん…悠里くんが語ったことが全てじゃないの?
「…知りたい」
「そうか。落ち着いて聞きたくなったらこの番号に連絡をしなさい。どうするかは楓が決めることだ」
お父さんはポケットから一枚の紙を取り出した。
誰かの電話番号が書いてある。
お父さんはそれだけ言うと帰っていった。
何かあったら連絡しなさい、日曜日まで東京にいるからと。
真実って何?
知りたいけど…。
この番号は…。
悩んでいても始まらない。
もうこれ以上悲しむことなんてないんだ。
私は真実を知りたい。
「………」
『…はい』
「っ!?」
数コールして出た相手は悠里くんだ。
やっぱり…。
『小田桐さんか?』
「…はい」
『そうか…。京一郎さんから渡されたのか』
お父さんと悠里くんはなんで知り合いなの?
聞きたいことだらけだ。
『…聞きたいのか?』
「…はい」
『…わかった』
外を出歩ける状態ではないため、悠里くんが私の家まで来ることに。
過去に襲われた悠里くんを家に上げるのは怖い。
だけど…。
離してくれたときの悲しそうな顔は悠里くんの本心なんじゃないかな…。




