10
10年前。
私は小学生だった。
私は襲われた。
そう。
三船さんによって。
「誰…?」
「静かにしろ」
あの時のことは今でも鮮明に覚えている。
深夜の寝静まった頃に、私の寝室に人の気配がして起きてしまった。
「え…!?」
「大人しくしろ!」
突然布団を奪われ、知らない男性に馬乗りにされた。
「いや…」
「声を出してもいいが、母親が助けてくれると思うな」
暗闇で見えない相手に体が震える。
声を出したくても声が出せない。
「いや…お母さん…!」
「無駄だよ」
下にいる母に助けを求めるも、母が助けに来てくれる気配はない。
男は私の衣服を強引に奪いとった。
「ゆ、ゆーりくん…!」
「そうだ。俺だよ」
月明りで見えた顔は最上家の次男の悠里くんだった。
なんで…?
なんで悠里くんが?と体が震えて声は出ない。
「静かにしてればすぐに終わる」
「いや…!痛い!助けて!」
「泣き叫んだって無駄だ」
「痛い…っ!や、やめてくださいっ!」
「暴れるな。言うこと聞きやがれ」
「や、やめてっ!」
その後の記憶は酷い曖昧だ。
気づいたらお父さんのいる仙台にいた。
お父さんは「助けれなくてごめん」と泣いていたけど、思い出すだけで体の震えが止まらなかった。
当初は男性であるお父さんも怖くて、お父さんにも拒否反応が出てしまった。
その後、徐々に改善し、お父さんでも、他の男性を見てもなんともならなくなった。
心配したお父さんに女子中学と女子高に通わせてもらってたけど、もう治ったと思っていた。
なんで?
なんで三船さんなの?
なんで三船さんが悠里くんなの?
なんで悠里くんは私に優しくするの?
あのとき乱暴したのは悠里くんだったじゃない…。
なんで今更優しくするの?
ねぇ、なんで…?




