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遠い昔、この世界は青い石で覆われていた・・・。
遠い昔、世界は青い石で覆われていた。
草木はわずかに残された青い石の隙間に根をはり、動物たちはその草木から少ないエネルギーを享受し、その短い命を次の世代へと託して朽ちることを繰り返していた。
青い星は、決して生命のあふれる星ではなかった。
しかしある時、大地は裂け、青い石とは対照的に真っ赤なマグマが世界を覆いつくした。
ほどなくしてやまない雨が降り、マグマはやがてその姿を灰色へと変えていった。
小さな生命が、誕生した。
生命は姿を変え、形を変え、数を増やし、栄えていった。
やがて、「人」と呼ばれる動物たちが世界を占めるようになった。
「人」は、青い石の存在を知ることはなかった。
彼らが誕生したとき、その青い石は既にこの星から姿を消していた。
「人」は知能を持っていた。
彼らは自分たちの過ごした日々を、経験を、知恵を、歴史として伝承する術を持っていた。
青い石のことは、人々の「歴史」には残っていなかった。
・・・だから、だれも青い石のことを知る者はいなかった。