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少年撃破

一応過去回ですが、ほぼ冒頭に戻ってきたので普通のタイトルに戻ります。

あと、若干主人公詐欺まがいのことしてるので苦手な人はブラバ推奨。

 それから簡単に“レギオン”の説明をしてもらった。

“レギオン”というのが遊びの名前で、その選手権が開かれてるのがここらしい。

 その“レギオン”という遊び。

 どうやら日本で行われていた《ヒストリアン・マッチ》に酷似しているらしい。

 この世界(・・・・)の偉人をカード化させたものを使い、一対一で互いのカードに上回る戦力をもつか、戦略を立てたものが勝ち。しかも、あることに気づいてしまった。

 相変わらずルーカスは目ざとい。

 明日香とこれ、そうだよね?やっぱり?と目配せしてただけなのに、大丈夫みたいだねと言われてしまった。

 細かい違いとか、わかってないよ??


「大丈夫、大丈夫」


 心配をよそにルーカスがひらひらと手を振る。

 なにをもって大丈夫だと言い張るんだろう。

 明日香と顔を見あわせたけど、わからないようだった。

 まあ、いっか。


「じゃあ、行っておいでシキ、アスカ」


 ルーカスに見送られ、会場の中へ向かっていった。



『さぁて、第七十五回レギオンチャンピオンシップ二次予選をはじめる。第一次予選を勝ち上がった諸君、全員自分の席についたか? ついてないと失格になるぞ?』


 どういう原理かわからないけど、どこからか、先ほどと同じ野太い男のアナウンスが会場全体に広がる。それに対して、観客席からそれぞれの意中のプレーヤーに対して声援が送られていた。

 建物自体は日本のサッカー場やラグビー場のような感じなのに、試合を行う配置はあのゲーム会場のような配置になっていた。


「なんでこんなきれいなんだろう?」


 地面も土なのにもかかわらず、砂埃が立っていたない。興味津々でどんな原理なんだろうかと探ろうとしたけど、今それどころじゃないでしょと明日香に頭突きをくらわされた。

 しょうがない。

 カードで決闘を申しこまれちゃ血が騒いでいる。ルーカスに融通してもらった通行証とカード(・・・)を持って席につく。


「兄ちゃん、逃げんかったんだ」


 そう言ってきたのは、先ほどぶつかってきた少年。さっきはいきなりすぎてあまり記憶に残ってなかったんだけど、はちみつ色の髪の毛か。

 いい色だねぇ。


「そこ、集中(しゅーちゅ)ぅぅ――――」


 僕の思考に気づいたらしい明日香に再び頭突きを食らってしまった。

 たしかにこうグダグダしても仕方ないから、カードを並べる。その中にルール違反にならないような、正確にいえばルールの穴をついたようなしかけをしこんでおいたが、気づかれないだろう。

 それにもし気づかれたとしても、言い逃れはできるようにはしてある。


「じゃあ、勝負はじめようか」

「望むところだ!!」


 僕の声に勢いよく向かってくる少年。いいねぇ。あのときのエイジ君みたいだ。





「え、嘘だろ!?」


 試合終盤、少年は僕の手札と自分の手札を交互に凝視している。

 うん。どうやらしかけが功を奏しはじめたようだね。


 ちなみにしこんだものは実はかなり簡単で単純(・・・・・)。でも、相手に"本当"の意味での種明かしはできない。


「なんでお前、こんな強いものを?? でも、ただの見習いのはずなのに!!」


 ますますヒートアップしていく少年だけど、彼から視線を外さなかった。

 僕が最後の手札を出した瞬間にくずれ落ちてしまった。


 そう、何度も言うようだけど、僕がしかけたのは単純なもの。


 それは日本から飛ばされてきたとき《ヒストリアン・マッチ》で使うカードがたまたま(・・・・)ウエストポーチに入っていたのだ。

 で、少し他の参加者から融通してもらったんだけど、それが残念なことにカス札ばっかりだった。

 いや、もちろん、それ自体は仕方ないことだし、それで戦略を立てようと思えば立てれるんだけど、頭に叩きこむ時間がなかったのと、この少年が少し手ごわそうな気がしたから諦めた。

 そのかわり、せっかく絵柄までほぼ同じのカードなんだから、持っていたカードを使わない手はない。


「僕は遠い島国育ちって言ったよね?」


 そう言って()の身の上話を始めた。もちろん信用させるためには最初が肝心。


「これとかこれは見たことがあるだろ?」


 そう言いながら数枚、横にずらす。この世界にありそうな名前の偉人のカードもどさくさ紛れに動かしておく。例えば"レオナルド"とか。


「ここらへんのカードは君が持っているカードと性能は違わないはずだ。このカードは見たことないよね?」


 前半部分に少年が頷いたのを見た僕は、そのまま横に手を動かして数枚のカードを指す。

 そこには漢字で人物名が書かれたカードが数枚あった。


「このカードはね、僕の育った島国でしか売られてないんだ」

「まさか、それは限定(プレーデル)カード!!」


 少年はすごい、そこまで集めてなかったやと興奮していた……うん、まさかこんなに興奮されると思わなかったから心が痛い。

 けど、ついてしまったものは仕方がない。説明を続ける。


「古くからあったから汚いだろ?」


 そう言ってひらひらと掲げる。

 今度彼がほかの島国出身の人に聞いたところでバレないように廃盤カードということにしておくことにした。


「このカードに描かれている偉人は婦好(ふこう)&サクと読むのかな?……ねぇ、どんな人物なの?」


 少年はそのカードの一枚に興味を示した。そこに描かれてるのは、茶髪の貴人と黒髪の小柄な少女。

 島国(にほん)ではなく大陸(ちゅうごく)の最古の王朝、(いん)の時代の王妃兼武人の女性(ふこう)とその策士の少女(サク)

 日本では長らくスポットライトを当ててなかったが、二〇二〇年二月にある書籍が出てからは彼女、婦好にも目を向けられるようになったから、その軍師とともに《ヒストリアン・マッチ》のラインナップに加えられたのだ。

 この世界がどんなものかがわからなかったけど、適当にかいつまんで話すと、少年は目を輝かして性能(スキル)を読みだした。


「属性は赤。それでもって性能は『青と緑以外の相手デッキから二枚のカードを処刑。なおかつ相手陣地に毒付与した上、相手デッキ全体に自身の攻撃力の一・一倍で攻撃』……だからか! 僕のカードが次々とやられていったのは!!」

「うん、それとこのカードだよ」


 切り札を見せると、ようやく納得してくれた。

 ついでにともう一枚のカードを差しだす。それを見た少年は嘘だろ!?と再び興奮していたが、彼の言葉に僕たちは固まってしまった。


「アレクサンダーってあの(・・)帝国に謀反を翻した大悪党だよな!! それが兄さんの故郷じゃ英雄なんて、もしかしてアイツはそっちの出身なのか!?」


 鼻息荒くして話す彼に僕たちはある可能性に気づいてしまった、

作中のカードは……はい、そうです。

佳穂一二三さまの作品『婦好戦記』の主人公である婦好&サクさんです。

(※作者許可済みです)

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