表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

過去 ①

 そもそも、なんで僕たちここにいるのか。

 それはほんの偶然、僕が日本でハマっていたカードゲーム《ヒストリアン・マッチ》の地区決勝大会でのできごとだった。




「なんでお前までいるんだ」


 その日の朝、たまたま会場で見かけた僕は明日香に声をかけた。


「いやぁ、だって今日の試合、志貴だけじゃなんか負けそうな気がしてねぇ」


 彼女の言葉においおいと僕は苦笑いをしてしまう。

 このカードゲーム《ヒストリアン・マッチ》の重要要素である歴史が一切ダメなのだ。

 昔から歴史科目、高校学習指導要領的には世界史と日本史が好きだった僕に対して、明日香はからっきしだった。

 そのかわりに僕が苦手な数学が得意だから、相殺されている。中学のときから何度もお世話になっているんだよね。


 そんな彼女がここに来た。


 歴史オタクの巣窟といってもいい場所に来てる彼女に、僕は安心していた。

 彼女が来ると《ヒストリアン・マッチ》での勝率が百パーセントになる。僕にとって、明日香は勝利の女神なんだよね。

 それにたいていの場合、彼女が心配してわざわざ来てくれるときはなにかしら本当に問題が起こるんだよ。


 例えばこんなことがあったっけ。


 地区開催での予選会で運営スタッフが足りずに参加者である僕が駆り出されたとき、なぜかセッティング用の会場の図面が紛失するという事件が起こった。

 明日香は実行委員から聞いた対戦の組み合わせと、テーブルの台数だけで一瞬で会場設営図を描いたのさ。

 しかも、それが後から出てきた本部が指示した図と同じだったんだよね。

 あのときはこういったイベントを主催するような会社の回し者なんじゃないかって、試合の運営本部の人も驚いていたっけ。


 全国大会にもアイツが来たことがあった。

 そんときは、たまたま彼女の家族と旅行に来ていた先での大会だったからとか言ってたけど、また会場まで押しかけてきたんだよね。

 さすがにこんなところで事件なんか起きないだろうと思ったけど、起こってしまったんだよね。

 そのときは電車の事故によって参加人数が大幅に少なくなったんだけど、対戦者の組み合わせパターンや賞金の配分などを明日香一人で組み直した。

 いや、大会本部がやれよという話だが、どうやら彼らの中にそちらの方面に強い人がいなくて、電車や飛行機内で急病者が出たときに聞かれるようなお医者さんはいませんかというようなノリで尋ねられたのだ。

 そのときはさすがの僕でもあ然としちゃったのに、明日香は難なく組み直したのだ。


 そんな過去を思い出してると、明日香は僕の肩を叩いていた。

 振り向くと二段構えだったようで、僕の左頬にぎゅーっと彼女の指が食い込んだ。


 地味に痛い。


「なんだ?」


 彼女の指を外しながらそう聞くと、彼女はジーッと前を見ながら質問してきた。


「ねぇ、志貴。今日ってあんたの引退試合になるんだよね?」


 どうして知ってるんだ。

 ま、コイツのことだから、言わなくても気づいていたんだろうけど。

 僕はだれにも話したことがなかったが、高校一年生の今、《ヒストリアン・マッチ》から引退することを決めていた。

 高校が進学校だからという理由もあるけど、それ以外にも理由はある。


 それはこの《ヒストリアン・マッチ》で、すでに殿堂入りしてしまっているから。


 そこそこ多くのプレイヤーが参戦するこのTRGトレーディング・カード・ゲーム

 すでに僕たちの世代はお年寄り扱いされはじめてる。

 けども、殿堂入りした僕には同年代からは嫉妬よりも期待の視線が多く集まっている。

 僕はたんに"勝つ"ではなく、"勝ち続けなければならない"を目標とさせられてしまっている。もうプレッシャーをかけられたくない僕は《ヒストリアン・マッチ》から引退させてもらいたかったんだよね。


 ちょうど今日は全国大会。


 小学校から仲のいい後輩くんが一緒に地区予選を勝ち抜いている。彼は去年もこの大会に初出場で準優勝していて、今年は優勝するのではないかと言われていたのだ。

 まあ、明日香が来てくれた以上、勝たないわけにはいかなくなったけどね。


「ああ、そうだよ」


 素直に認めた。

 僕の答えに明日香はそうなんだと落ち込むこともなく、嬉しそうでもなく、ただ淡々と言った。


「これから何すんの?」


 明日香はズケズケと聞いてきた。

 これが幼馴染み、いや腐れ縁の特権というやつか。もしくは体育系女子の遠慮しない性格なのか。


「うーん、どうだろうね」


 そう答えざるをえなかった。

 まだ受験生じゃないからって遊びすぎててもアレだしなぁ。

 でも、元から体育は苦手だから、スポーツをするというのもなぁ。

 答えに詰まっているのを見た彼女は苦笑いして私と一緒にテニスする?って聞いてきたけど、それは拒否すると真顔で断らせてもらった。






「じゃあ、頑張ってね、志貴」


 試合間際、そう言って観客席の方に去っていく明日香。

 試合モードに切り替えた僕はケースの中にしまってある手持ちのカードを確認した。試合ごとに異なるデッキの使用が可能だから、いつも通りのデッキでいくか、それとも先日、新たに考えだしたデッキでいくか迷った。

 いつもならば、迷わず新しいデッキで戦うところだけど、今日は大事な引退試合。

 明日香も来ていることだし、無様に負ける気にはならなかった。


「よし、こっちで行こう」


 悩んだ末に僕が選んだのは新しいデッキ。

 必要なもの以外は殿堂入り(VIP)選手に与えられた控え室に置いて、試合会場(アリーナ)に向かった。

※作者はカードゲーム(ヴァ○ガードやヴァイスシュ○ルツ、ポ○モンなど)を一切、しておりませんので、あくまでも想像で大会を書いてます。


そして、ヒロインの本名は出せたけど、ヒーローの本名は……orz

次回、必ず出します(手元の原稿にはすでに書いてある

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ