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元人間の人食い箱  作者: 水 百十
第2章
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第39話 寝台上の災難

「ここはど…………あ、知らない天井だ」


 目を覚ますと、どうやら俺は屋内へと運ばれたことが分かった。言い直したのはなんとなく言ってみたかったからだ。深い意味はない。元ネタ前世で見た事無いけど。


「マティスさん!」


 呼びかけに気付き横を向くと、サムが俺の横たわっているベッドのそばの椅子に座っていた。


「良かった……起きたんですね」

「あぁ、そうだ…………あれ?」


 サムの言葉で思い出す。俺はベッドに()()()()()()()のだ。


「久々にベッドで寝たな……」


 そう、俺はミミックになってから魔力を保つために人間に擬態したまま寝ることは一度もしていなかったのだ。

 というか、最後に記憶が残っている時点でもう魔力も付きかけていたので、気絶した後はてっきり自然と擬態が解けたものだと思っていたのだ。


「あの……何が起こったか、覚えていますか?」

「そうだった! サム、ここは何処だ? 先に逃げたんじゃなかったのか?」

「落ち着いてください。まず、ここは昨日までいたタヴォカハ山の山頂の村の宿です。騒動はいったん落ち着いたので避難していた町の皆さん共に魔翔機で戻ってきました。ここまではいいですね?」

「あ、あぁ……」


 昨日までということは、そこまで長く気絶していなかったと見ていいだろう。だが、窓から射す光が傾いていないことから、夜が明けてからはそれなりに時間は経っているようだった。


「その上で、マティスさんがどこまで覚えているのか教えてください」

「教えても何も俺は魔翔機から飛び降りた後、何かが空から飛んできて、そのまま気絶…………ッ!?」


 そこから先を思い出そうとした時、俺の頭が急に痛み始めた。


「マティスさん!? 大丈夫ですか!」

「あぁ……大丈夫だ。さっきまで見ていた夢の内容を急に思い出してな」

「夢……ですか?」

「そうそう。なんでも夢の中で俺は魔王になってて、あの破壊神とか言うのをひれ伏せさせてたんだ。厨二病かよ……って厨二病の意味伝わらないか……ははっ」


 苦笑いしながらサムの顔を見るが、サムの顔色は優れない。


「どうしたんだ? サム」

「あの……」


 ――バァン!


 その時、俺とサムの居た部屋のドアが勢いよく開かれる。


「そこから先は俺が話す」

「レックス……それに皆さんも……」


 サムも知らなかったようで、目を丸くしている。

 レックスの後ろにはイザベラそしてラミの姿があった。


「ラミ! 無事でよかった」

「は、はぃ……」


 気絶する前に安否がわからなかったが、ひとまず無事なようで安心した。


「クリスは? 無事なのか?」

「無事だ。だが、今から話す内容の為に席を外してもらってる」

「それで、レックスが話すって?」

「俺は昨日の一部始終をこの目で見ている。ここにいる全員にはもう既に話した後だが、マティスが覚えていない様なので俺からもう1度話すとしよう」






 ――30分後。


「そんな…………あれが夢じゃなかったなんて……」


「夢だと思っていたということは、一応あの時意識はあったのか?」

「あぁ、ただ俺は自分自身を第三者から見ているような妙な感覚で、夢だからこんなこともあるだろうという感じだったんだ」


 恐らくゼラノスが俺の視界を借りて周りを見ているのに近い感覚だろう。


《確かに、あの時のお前はそんな感じだったな。というかお前、じゃなくて俺の体が魔王様の意識を移す器の様な存在だったのは驚きだったな》


 うわっ! お前起きてたのか!


《"うわっ!"じゃねえよ。むしろ俺はお前が目覚めるのを待ってたってのに。お前の意識が飛んでたんだから、俺もこの体乗っ取ろうと思えば乗っ取れたんだぞ》


 マジで!? でも、結局俺が目覚めるまで何もしなかったじゃん。…………何もしてないよね?


《してねぇよ。それに本当は俺も乗っ取るつもりだったんだぞ。だが、魔王様に頼まれちまったから仕方なくだ》


 何?  魔王が俺の体にいる時もお前は起きていたのか!?


《そうだ。…………まったく。魔王様の言うことに文句を言いたくはないが、何でこんな奴が気に入られてんだか……》


 うるさいな。何か話したこととかあるのか?


《特に。今の件と、そこの勇者が話したことがほとんどだ。……あ。そうだな、そう言えば……》


 なんだ?


 そう思った瞬間、頭にまた痛みが走る。何をした?


《お前の頭に魔王様から聞いた「星喰らい」の呼び出し方をそのまま伝えた。複雑なせいで頭痛が起きていたみたいだが、それはお前の精神の脆さ故だ。前から言っているように訓練はしとけ》


 そう言われてみれば頭の中にさっきまで絶対に知り得なかった様な"何か"がある。


「おい、ずっとボーっとしているみたいだが、大丈夫か?」


 その時、レックスに声を掛けられる。


「あぁ、ゼラノス――――俺の中の魔物本来の魂と話していただけだ。レックスも前に少し話したろ」

「あれを話したと言っていいのかはわからんが、事情は分かった。何か言っていたか?」

「あいつは魔王が俺の体に入っている時、起きていたらしいんだが、その時に聞いたことを伝えられた」

「伝えられた?」

「説明が難しいんだが……使ってみるか」


 俺は右手の掌を前に突き出す。


「え? おい、まさか……」




「――来い」


 そう口にした瞬間、空気が凍ったように感じた。レックスが出そうとしていた声を引っ込ませるように息をのむ。


 部屋中にある影が蠢き、俺の手元に集まる。

 それは意志を持ったように剣の形へと変わり、その柄は右手の中へと納まる。


 その瞬間、俺の意識は真っ黒に塗り潰され………………なかった。


【え? ちょっ……出れないんだけどっ!?】


 ん? 頭の中にゼラノスとは違う声が響いているような……


《ええぇぇぇ!? 魔王様!?》


 何!? 俺の頭の中で何が起きてんの!?


【あの、私が魔王です……】


 …………さっきと全然口調違うじゃねぇかっ!






「…………で、お前の中で一体何が起きてる?」


「だーかーらー何故か魔王より何故か俺の精神の方が強靭で、俺が抵抗している限りは俺の体を自由に扱えないらしいんだって!」

「そんな冗談今はいいから、何が起きたか教えてくれ」

「レックス! いや、確かにさっきゼラノスにも注意されたし、自分でも俺の精神が強靭なわけないと思うけど……信じてくれよぉ~!」


【それだけじゃないし! なんで普通に星喰らい持てちゃってるの!? 返してよぉ!】

《あ、あの、魔王様。昨日言えなかったんですけど、俺魔王様の事生まれた時から尊敬してて……》


「あの~そろそろいいッスか? ……ってえぇ――姐さん! その剣どこで買ったんスか!? めっちゃカッコいいッスね!」

「クリス? 待っていてって言ったでしょう?」

「ぁ、あの、皆さん落ち着いて……」


「マティス、正確に情報を伝えてくれ」

「オレ、姐さんに大事な話があるって言うから2時間近く待ってたのに……いつそんなカッコいい剣を買ってたんスか!」

「なんで2時間待ってこのタイミングで入ってくるのよ」


【その剣そんなんじゃないから! 見た目だけじゃなくて性能も凄いから! というか返して!】

《魔王様? あの~俺の話聞こえてますでしょうか、魔王様~?》




「うるせぇええええええ!!」


 俺は問題が山積みになっているが、1つ1つの問題は意外と大したことが無いんじゃないかと思っていた。

 だが、頭の中と外でしゃべりまくられるこの状況で我慢の限界を迎え、悲痛な叫びをあげたのだった。

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