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元人間の人食い箱  作者: 水 百十
第1章
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第24話 一件落着

 ――翌日。


 俺はサムとレックス、そしてイザベラととともに、エディの宿で朝食をとっていた。


「昨日は油断してしまったわ……マティスはいつの間にあんなに空間魔法が上手くなっていたの……って聞いても多分特別なことはしてないんでしょう?」


 イザベラが俺に話しかけてくる。


「うん、まあそうだな……」

「はあ……やっぱりデタラメよ……」

「まあ、それでも俺だけじゃどうにもできなかった。エディがあの店にいてくれてよかった」

「エディに感謝ね……」

「エドワードさんって凄い人だったんですか?」


 昨日の店での様子を見たサムが、料理を片付けに来たエディに訊ねた。それについては俺も気になっていた。


「そんな凄いもんじゃあないさ」

「俺が王国軍に入る前の魔王軍との大戦で俺以上の戦果を出しておきながら何を言う」


 エディの答えに対して愚痴をこぼすレックス。エディのことをゼラノスは猛者だと言っていたが、そこまで強かったのか。


「レックス以上ってかなり凄いんですね! 今は冒険者として戦ったりはしないのですか?」


 サムがレックスの言葉に反応する。

 なんだかんだあったがまだレックスが勇者ということは知らないので、エディの凄さが伝わりきって無い感じもするが……

 それはともかく、勇者と同等以上なほど強かったのに、なぜ今は宿屋の店主などをやっているのかは俺も気になった。


「大昔に戦った1匹の魔物せいで魔法が使えなくなっちまったんだ」

「魔法が……使えなくなる?」

「正確に言えば魔力を失っちまった。だから魔法も使えないし、魔力銃も扱えない」

「それで火薬式の銃を隠し持ってたのか」

「護身用に過ぎないけどな」

「それでも、凄い早業でした!」

「あの動きができるなら、今でも結構戦えるんじゃないか?」

「年齢が年齢だから無理があるさ。それに、俺には人のこない宿屋で葉巻をふかすこっちの方が性に合ってるんだよ」


「いや、つい5年前まで銃一丁でドラゴンぶっ倒してただろうが……」


 エディの言葉に対してレックスが小さい声で呟く。サムには聞こえなかったようだが、俺には聞こえた。

 恐らくエディが冒険者をやらない事に特に理由は無く、ただ単に面倒臭いからとかなんだろう。


「まあまあ、俺みたいなおっさんのつまらない昔話を聞いても面白くないだろう。それより、昨日の事件について少し情報が入ってるんだ」


 エディが話題を変えるように切り出す。


「このアクチェスの町から少し離れたタヴォカハの方の山間に、半年ほど前に王国から盗まれて行方の分からなくなっていた魔翔爆撃機が墜落していたらしい」

「げ……」


 レックスの顔が少し青くなる。


「あれ、王国のやつだったのか……」

「あれ? ってどういう事ですか?」

「ああいや、なんでもない……」

「そういえば、昨日マティスさんがレックスに聞いてくれって言ってたんですけど、大きな衝撃のあった時どこにいたんですか?」

「おい、マティス……」


 レックスが目を細めてこちらを見てくる。いやだってあの流れサムにバレる展開だと思ったから……


「なんだレックス、まだ言ってなかったのか。レックスが勇者だよ、サム」


 エディの言葉にその場の全員が凍り付く。




「……え?」


「おいちょっとエディ! それは俺から言おうと……」

「そんなこと言いながらいつまで話を引き延ばしてんだ。話せるうちに話しとけ」

「そんなこと言ったって……」

「まぁいい機会じゃないの? エディのいう事も一理あるわ」

「イザベラ……」


「いや、僕置いてきぼりなんですけど……本当にレックスが勇者なの……なんですか?」

「うん、まあ……そうだな。あ、でも敬語とかしなくてもいいぞ?」


「ええええええ!?」


 その驚きの声は、俺が今まで聞いたサムの声の中で一番大きかった。

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