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元人間の人食い箱  作者: 水 百十
第1章
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第18話 宿での朝

「………スさん! ……マティスさん! 起きてください! ……起きてるんですか?」

「ふわぁ~あ」


 目を覚ますとサムが目の前にしゃがみこんでいた。


「今起きた」

「宝箱の見た目だと全然変化が無くて分からないです……」


 確かに今この状況も傍から見たらサムが宝箱に対して話しかけているようなもんだな。


「……ってそうじゃなくて! 朝ごはんが出来てるから呼びに来たんです」


 そうだったのか。昨晩は軽く寝るつもりだったが、結局起きるのが一番遅くなってしまったらしい。夜中に魔法を使ったせいか腹も減っている。


「おー、じゃあすぐ行く」

「僕が部屋を出るまで擬態は待ってくださいね!」


 そう言って早足に部屋を出ていくサム。それを見届けた俺は擬態魔法を使い人の姿になる。

 昨日イザベラに買わされた下着を着け、ジーンズとTシャツを着る。その上から昨晩創ったロングコート……ローブを羽織った。

 食堂へ向かうとテーブルの上には豪華な朝食が用意されていた。席には3人が既に座っていて、その横にはエプロンを付けたエディが立っていた。やっぱ料理うまいんだな。


「マティスさん! また服が違いますね!」

「お前それ……うん、まぁ昨日よりマシか……」

「そうね……」


 サムは好反応だが、レックスとイザベラは微妙だ。

 てかイザベラもそんな反応ってことは昨日の恰好異世界とか関係なくダサかったのか……? いいだろパーカーにジーンズ。……楽で。




 朝食を食べていると、レックスが話を切り出した。


「今日出発の予定だったが、昨日の件を解決するまではこの町に残る。エディ、金は足りるか?」

「昨日ので今月分以上はある」

「そうか。これから俺達は見回りに行くが、サムとマティスはどうする?」

「僕はマティスさんと一緒に行動しますけど……」

「俺は擬態の時間が……」


 と言いかけた所で近くにエディが居たことを思い出す。


「……俺は邪魔そうだな」


 エディがそそくさと食堂から出ていく。恐らく、俺のことについてもなんとなくは気づいているんだろう。


「俺は擬態の出来る時間が限られてるから丸一日外出は出来ない。昼時になったらサムと出掛けることにするさ」

「そうか、じゃあまた後でな」

「おう」

「いってらっしゃい」


 朝食を食べ終わったレックスとイザベラが食べ終わり、席を立つ。サムもレックス達と同時に食べ始めたはずなのだが、皿の減り具合は既に後から来た俺と並んでいる。


「サム、残ってるの食べきれないようなら俺が食べようか?」

「あ、お願いします……」


 朝食にしては量が多かったもんな。俺は基本的にいつでも腹が減ってるから助かるが。


「女性に食べ残しを回してしまうなんて……」


 とサムが呟いていたが、人間の時の俺はこんなに食えなかった気がするから多分大丈夫だと思うぞ……うん。




「そういえば、この町を出発したらマティスさんはレックスのパーティとして行動するんですか?」


 朝食を食べ終わり、部屋に戻ってきた俺にサムが問いかけてくる。


「あー…多分そうなるのかな?」

「それだったら、冒険者の登録をしておいた方がいいかもしれないですね。お昼を食べるまでの間、もう一度ギルドに行きませんか? 冒険者ならお金も稼げますし。」


 冒険者ってのはサム達がやっている職の事か。まあレックスとイザベラは偽装だけど。


「登録って言っても、すぐになれるものなのか?」

「筆記と実技の試験がありますけど、そこまで時間がかからないですよ」


 擬態の時間、持つだろうか……あ、でも昨日はダンジョンからここまで歩いた分があったから、今日は少し位なら大丈夫か。

 活動に限りがあるから稼ぎも大したものではないだろうが、一文無し状態でずっとレックスにおんぶにだっこじゃ忍びないしな。


「じゃあ行ってみようかな。サムも俺のために部屋でずっと待たされるのもつらいだろ?」

「僕への気遣いは大丈夫ですよ?」

「サム、お前は一番頑張ってるんだから、もう少し欲を持ってもいいと思うぞ?」


 そう言いながら俺はサムの頭を撫でる。


「そ、そういうのは……」

「あっすまん、つい」


 サムは子ども扱いされて恥ずかしいのか、少し顔が赤い。


「まぁ、俺が行きたいってことにしとくよ。落ち着いた町の様子も見てみたいしな」

「はい……じ、じゃあ行きましょうか!」




 ロビーに降りていくとエディがまたロッキングチェアで葉巻を吸っていた。昨日から食事時以外ほとんど座っている気がする。

 リリィに人が来ることを疑われるのも納得してしまう……というか、実際生計は成り立っているのか?


「鍵、お願いしますね!」


 サムが部屋の鍵をエディに渡す。


「エディはどっかに出掛けたりしないのか?」

「そうだな……賭博場は一昨日大損したせいで気分が乗らないから……昼時にリリィの店にでも顔出そうか。心配しなくても鍵の管理はちゃんとしておく」

「いいんじゃないか? まー俺が決めることでもないけどな。それじゃ、行ってくる」


 俺達はギルドに向かうために宿を出た。

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